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《さくらももこ展 横浜会場開催スタート》【デビュー漫画公開】当時の担当編集が語る“さくらももこ”の魅力の真髄。受け取って衝撃的だった1枚の絵の正体とは…!?

集英社オンライン / 2023年4月22日 7時1分

『ちびまる子ちゃん』や『COJI-COJI』などを描いた漫画家としてはもちろん、エッセイスト、作詞家、ラジオパーソナリティなどさまざまな才能を発揮した作家・さくらももこ。不世出の作家の魅力を伝えた「さくらももこ展」が本日4月22日より横浜・そごう美術館で開催される。2018年に逝去した後も愛され続ける “さくらももこ”とは、いったいどんな人物だったのか。彼女の身近でその作品づくりを支えてきた担当編集の話から、その素顔をお届けする。

“さくらももこ作品”として真っ先に思い浮かぶ人が多いであろう作品が、漫画『ちびまる子ちゃん』だろう。1990年代にりぼん編集部に所属し、『ちびまる子ちゃん』の担当編集となった集英社第1編集部の今井英(いまい・すぐる)部次長は語る。



――さくら先生の担当編集をされていたのはいつ頃でしょうか?

自分がやっていた仕事メモが残っているのですが、それによると1990年2月号からでした。ただ、担当編集になったといっても当時はもともとずっと担当されていた方と2人体制。ちょうどアニメ『ちびまる子ちゃん』の第1期が始まろうとするタイミングだったので、僕はアニメ情報など『ちびまる子ちゃん』の細々した記事の編集や、完成した原稿を受け取りに行って印刷所に入稿したりしていました。

――1990年というと入社何年目ですか?

入社2年目の終わりのほうでしたね。本当に急に担当することになったんですが、『ちびまる子ちゃん』はアニメ化が決まっているほどの人気作品。何もわからないままアニメ情報を集めて、原稿を受け取って…という感じでした。

――さくら先生から原稿を受け取った際に印象に残っているものはありますか?

アニメが放送されている間は、『りぼん』に掲載される『ちびまる子ちゃん』の扉絵はすべてカラーだったんです。そのカラーイラストがどれもすごく凝られているものばかり。毎月完成度が高くて受け取るのを楽しみにしていました。
特に衝撃的だったのは、その50『まる子 ノストラダムスの予言を気にする』の巻(単行本8巻に収録)のカラーイラストです。このイラストは着色した卵の殻でできたモザイクアートなんです。

『さくらももこ展』ではこの絵の実物が展示されている

――立体物ということでしょうか?

そうです。いつも通り原稿をとりに行ったはずなのに、手渡されたのは分厚い板だったので、“なんだこれは!”ってかなり驚きましたね(笑)。


人気キャラ投票で意外な人気者は?

――毎月の漫画連載をしながら、そのモザイクアートを作られていたということですよね。

はい。かなり多忙だったと思うのですが、1枚のカラーイラストにかけるその熱量が素晴らしかった。ただ、卵の殻を使った繊細な作品ではあったのですが、印刷となるとその繊細さはどうしても再現しきれないんですよね。現物を写真に撮って、印刷所にはそのポジをお渡しするしか方法がないので。

もちろん、色をできる限り再現できるように、色見本として現物を印刷所にお渡しはしますが。でも、さくら先生にとっては“卵の殻でモザイクアートを作る”というのがやりたかったことなので、印刷でどうでるかは二の次だったんですよね。その気持ちは素晴らしいなと思いつつ、あまりの繊細な作品に持って帰るのがかなり怖かったです(笑)。

――お話で印象に残っているものはありますか?


その35と36の『まるちゃん南の島へ行く』の巻(単行本6巻に収録)ですかね。それまでの『ちびまる子ちゃん』は、まる子が静岡県清水市で過ごす日常を描いていた中で、この回で新たな展開をみせてくれたなと思って、ワクワクしました。まる子が南の島で出会う少女・プサディーという新たなキャラクターが登場したり、「こういう展開もやっていくのか!」と意外でしたし、印象深いです。

ホロリと泣かせるさくら先生の演出力

――さくら先生に初めてお会いしたとき、どんな印象を受けましたか?

ふわっとしたやわらかい雰囲気の優しい感じの人だなと思ったのを覚えています。ただ、おしゃべりする内容はさすが『ちびまる子ちゃん』の作者というか、やっぱり面白くて。静岡弁のイントネーションで話す、その内容と穏やかな雰囲気とのギャップも面白い方でした。

――当時の読者からの反響で印象に残っていることはありますか?

『りぼん』という雑誌の読者層には小学生が多く、イラストを描くのが好きな子が多くて。イラスト募集をするとたくさんハガキが届いていました。
あと僕が担当編集をしているときに、『ちびまる子ちゃん』のキャラクターやエピソードの人気投票を行なっていたのですが、どれも投票数がすごく多かった印象があります。その結果ページを今みると、まる子のおじいちゃんである友蔵の人気がすごくて面白かったです。

1位はダントツでまるちゃんだが、2位は意外と人気の…

さくらももこ編集長による伝説の雑誌

――投票企画やイラスト募集には小学生の女の子からのものが多かったのでしょうか?

そうですね。でも、『ちびまる子ちゃん』はほかの作品よりも男の子からのものも多かったし、何よりも年齢層の幅がかなり広かったなと思います。それこそ僕がさくら先生の担当編集になったときにも、同年代の同性の知人から「さくらももこの作品、面白いよね」と言われることがあったので、支持層の広さは常に実感していました。

――今井さんはりぼん編集部をはなれた後も、さくら先生とお仕事をご一緒されているんですよね。

はい。1993年にさくら先生の担当編集を変わって以降はお会いする機会はほとんどないままでした。2013年に1編コミック企画編集という部署に僕は異動したのですが、そのときちょうど部署内で立ち上がっていたのが、さくらももこ先生のデビュー30周年を記念した企画。

2000年に新潮社から出ていた、さくら先生が編集長となった雑誌『富士山』に近いものを集英社から出そうということになっていたんです。その企画がちょうど動き出したタイミングで、異動してきて「さくら先生の担当編集もやっていたから」ということで僕が担当することになりました。さくら先生とは10年ぶりの再会。でもご本人は変わらず面白い方でした。

――それがデビュー30周年記念に発売されたムック本『おめでとう』ですね。

そうです。記事の文章やイラストはもちろん、企画も取材もすべてさくら先生が担当されたものです。

さくらももこ編集長『おめでとう』の表紙にある富士山も『さくらももこ展』では展示中

――企画会議みたいなものもされていたんですか?

一応、打ち合わせみたいな場は設けましたけど、きっちりマジメに話すという感じではなく、楽しく食事をしながら作っていく感じでした。さくら先生が「まぁまぁ、いいじゃない」と言いながら食べて呑んでというような和気あいあいとした雰囲気(笑)。中には、いい意味でくだらなすぎる企画もありますが、1冊まるっと雑誌をご自身で作ってしまうんですから、さすがです。

さくらももこ展では必見ならぬ必聴の音源も公開

――さくらさんから出てくるアイデアで印象に残っていることはありますか?

この『おめでとう』の表紙を最初は実際の富士山の写真にしようと打ち合わせしていたんです。でも別の打ち合わせをしている中でさくら先生が「これいいんじゃない」と言って、アトリエにあった小さな富士山の民芸品を手にとったんです。その場で「面白いね」という話になり、それが本当に表紙となりました。さくら先生がふと見つけたアイデアでできた表紙です。

――『ちびまる子ちゃん』での担当編集、そしてムック本『おめでとう』と、10年を経てさくら先生とお仕事をご一緒にされた中で改めてさくらももこ先生のすごさはどこにあると感じますか。

これはもう最初にお会いしたことから一貫しているのですが、さくら先生から発せられる「言葉」にある面白さです。それは漫画やエッセイなどの文章はもちろんですが、おしゃべりが本当に面白くて一緒にいて楽しい方です。知らない方もいると思うのですが、1991〜1992年にはラジオ『さくらももこのオールナイトニッポン』をやっていたくらいですから。

今、開催中の『さくらももこ展』でも、さくら先生のしゃべりの面白さをどうにかして伝えたくて。ラジオ放送を流せないかなと提案したところ、念願が叶って、展示会で当時の音源の一部を聴くことができます。そのラジオへの出演も、漫画やカラーイラスト、エッセイも、ムック本もさくら先生自身が全力で楽しんでいるところもすごく好きなところ。特にムック本『おめでとう』にはその全力で楽しんでいる姿勢があふれていた思い出深い1冊です。

【漫画】さくらももこデビュー作「教えてやるんだ ありがたく思え!」&「ちびまる子ちゃん」連載第1回目を公開(すべての画像を見るをクリック)

『さくらももこ展 公式図録』(3,500円・税込)には会場で展示される原画を多数収録しています Ⓒさくらももこ Ⓒさくらプロダクション

取材・文/上村祐子 Ⓒさくらももこ Ⓒさくらプロダクション

【よりぬき4コマ漫画ちびまる子ちゃん】はこちら

『さくらももこ展』
『ちびまる子ちゃん』の作者で、エッセイスト、作詞家としても幅広く活躍した作家・さくらももこの全仕事を網羅した展示会。2023年4月22日(土)~5月28日(日)に横浜で開催予定。
そのほか割引制度や開館時間など詳細は公式サイトで確認を!

『さくらももこ展』公式

©さくらプロダクション

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