1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

《中学受験》渋谷教育学園渋谷、広尾、三田国際、サイフロ…親世代が知らない中学・高校はいかにして難関校になったのか。カリキュラムや進学実績だけでない人気の理由

集英社オンライン / 2023年3月23日 8時1分

昨年の国内出生数が80万人を割り込むなど、日本では急速な少子化が進む一方で、今年2月に行われた私立・国立中学の受験者数は、過去最高の65,000人(受験率22.6%・コアネット教育総合研究所)を記録するなど、お受験熱は年々勢いを増している。

新設人気校に見られる改称変更と共学化

子供の受験を考えている保護者が、実際に偏差値表に目を落としてみると、親世代にはあまり馴染みのない難関校も散見される。これらの“見知らぬ難関校”が支持されている理由や、昨今の受験校選びの傾向を、国語の講師として40年近くに渡って中学受験生の指導にあたってきた「龍馬進学研究会」(千葉県船橋市)の安本満氏に話を聞いた。

「龍馬進学研究会」の安本氏


■新設された難関校(カッコ内は偏差値)
・渋谷教育学園渋谷中学(男子73〜75、女子75〜77)
→ 渋谷女子高校を1996年に共学の中高一貫校に改変

・広尾学園中学(男子70〜73、女子70〜75)
→ 順心女子学園中学・高校を2007年に共学の中高一貫校に改変

・広尾学園小石川中学(男子67〜71、女子67〜71)
→村田女子中学・高校を2021年に共学の中高一貫校に改変

・三田国際中学(男子65〜71、女子66〜71)
→戸板女子中学・高校を2015年に共学の中高一貫校に改変

・開智日本橋(男子62〜70、女子63〜71)
→日本橋女学館中学・高校を2018年に共学の中高一貫校に改変

・横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校附属中学(男子69、女子72)
→鶴見工業高校を解体し、2008年に共学高校として新設。2017年に附属中学を設置

(※偏差値は、首都圏模試センターの2023年向けの数値を引用)

平成以降に躍進を遂げた難関校は、名称変更と共学化のプロセスを辿っているケースが多く見受けられる。その口火を切ったのが、1996年に新設された渋谷教育学園渋谷(以下:渋谷渋谷)だ。渋谷教育学園幕張(以下:渋谷幕張)を全国屈指の進学校に育てあげた田村哲夫氏が、渋谷女子中学校を共学・中高一貫校に改変した。

同校は、渋谷幕張で残した輝かしい実績や、当時はまだ少なかった共学の進学校という希少性。さらには、田村氏の母校で、御三家の一つに数えられる麻布学園の教育理念でもある『自調自考』を取り入れた自由な校風も人気を博し、東大合格者40名(2023年)を輩出する難関校に成長した。

優秀な生徒の確保を実現した受験日程

桜蔭や開成などの“御三家”と呼ばれる難関校は、年に1回の試験で合格者を決めているが、新設進学校には、午後入試をはじめとする複数の試験日程や、さまざまな試験方式が設定されており、優秀な受験生の併願校として選ばれやすい体制を整えている点も特徴だ。

実際に新設校の日程を見ると、4〜5回の試験日程が組まれており、まずは、優秀な受験生の併願校に選んでもらうための工夫が垣間見える。

そして、実際に入学した一部の生徒が、6年後の進学実績を築き上げ、それらが下の世代の優秀な学生を呼び込む。このサイクルを繰り返すことによって、難関校としての地位を築いていくことが可能になる仕組みだ。

■主な新設進学校の試験実施日程と試験実施回数
・広尾学園:4日程・5回
・広尾学園小石川:5日程・5回
・三田国際:4日程・5回
・開智日本橋:4日程・6回
(※2023年の募集要項より抜粋・帰国子女入試含まず)

現在の加熱する首都圏の中学入試と、似たような傾向が見られたエリアがある。それが、今から10年ほど前までの千葉エリアの中学入試だ。

「首都圏に先駆けて行われる千葉県の中学入試は、長年に渡って東京の受験生の“試し受験”の場として使われてきましたが、近年は大幅に難易度が上昇し、都内の難関中学に合格した生徒が、千葉の中学を選ぶケースが増えてきました」

実際に、優秀な学生が集まりやすくなった千葉県の進学校は、東大合格者74名を輩出した渋谷幕張や15名の市川、早慶などに抜群の実績を残す東邦大東邦といった人気校を筆頭に、首都圏エリアの難関校と遜色のない数字を残すようになった。

安本氏は、人気を集める進学校についても、次のような見解を述べる。

「どんなに難易度の高い学校でも、学校の本当の評価が定まるまでには、10年くらいの時間を要すると僕は思っています。近年の首都圏エリアで新設された人気進学校の真価も、徐々に学校の文化が醸成され、卒業生が活躍を始めた頃に、より深く浮き彫りになっていくのではないでしょうか」

英語をはじめとする国際色豊かな教育

そして、近年のグローバル化も反映して、「英語を軸にした国際色豊かなプログラムや、新たな教育内容を展開している」ことも、この新設難関校の特徴と言えるだろう。

廃校寸前だった女子校を共学化して人気校に成長した広尾学園や、2年前に募集を開始した系列校の広尾学園小石川(旧村田女子)、2015年に共学校に改称した三田国際(旧戸板女子)と開智日本橋(旧日本橋女学館)や、理系教育に力を注ぐ横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校附属などが、その代表例だ。

これらの新設校が掲げる、高い語学力を養い、論理的思考を培うプログラムは、海外への留学を視野に入れている層や「自分とは異なる教育を受けさせたい」という親世代中心からも、高い支持を集めているという。

中学受験生を持つ親が気を付けるべきこと

急激に偏差値が伸びた新設校は、素晴らしい教育理念やプログラムを持ち、それらの魅力を伝える手法に優れていることが多い。しかし、安本氏は「学校からのメッセージを受け取る保護者サイドには、ある種の“危うさ”も垣間見えることがある」という。

「『名前が変わる共学校の説明会に行った』というある保護者が、『とても素晴らしかった』と僕に言うので、その理由を尋ねてみると、『6年後、東大に〇名合格させると言ってくれたんです』と返ってきました」

学校の良し悪しは偏差値だけでは計れない

まだ、誰も入学者のいない学校の“進学目標”に胸を躍らせたり、特別選抜入試に合格しただけで、あたかも難関大学に合格したような気分に浸ってしまう夢見る保護者の多さを安本氏は指摘する。そして、中学受験における学校選びのポイントについても言及する。

「名門校が名門である本質は、そこに集う人々の素晴らしさにあると思います。『母校のどこが好きか?』と尋ねられて、『進学実績』と答える人はいないでしょ。確かに、子供が難関大学に合格し、良い職に就き、安定した生活を手にすることも中学受験をする大きな目的でしょう。
ですが、親が果たすべき1番の役割は、『自分の子供を、カッコ良い大人に育てること』にあるわけです。子供を一人前の大人にするために、人間として最も成長する6年間を、どのような環境で過ごさせるべきなのか、それ以外に学校を選ぶ理由はないと思います。
学校を選ぶという中学受験の本質を考えながら、本当の未来予想図を描くのが、親の努めだと思います」


取材・文・撮影/白鳥純一

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください