スーパーマーケットに銃を持った兵士、日々の空襲警報の中、「住民は普通に生活を続けようとしている」 ジャーナリスト佐藤和孝が見たウクライナの“日常”
集英社オンライン / 2023年3月16日 9時1分
40年以上紛争地帯での取材を続けるジャーナリストの佐藤和孝氏は、2022年2月のウクライナ侵攻後、3度にわたり現地入りしている。約3週間の取材を経て3月頭にウクライナから帰国した佐藤氏にインタビュー。後編では、ウクライナの暮らしの現状などを聞いた。
スーパーマーケットに銃を持った兵士
――ウクライナ・キーウ近郊の住民の様子は?
佐藤和孝(以下、同) 今回で侵攻後のウクライナ取材は3度目だが、キーウは通常通りの生活に戻りつつあるという印象を持った。
現地に着いた時間がちょうど朝のラッシュ時で、車も渋滞しているし、地下鉄の出入口も人で溢れていた。住民は普通に生活を続けようとしている。
2度目に行ったのは2022年11月頃だが、当時はオフィス自体がそこまで稼働していなかった。おそらくその後、防空システムがよくなっているのだと思う。
――店などは営業しているのか?
戦線のチャシブヤールだとマーケットは営業しておらず、政府や民間の人道支援団体が食料などを配布している状況。
20〜30キロほど離れると、日本とさしたる変わりなくそれなりに物が手に入る。空襲警報は鳴るが住民は普通に生活しているし、働いている。
レストランなども営業しているが、電力が安定しないため開いている店は侵攻前より少ない。
今回初めて目にしたのが、銃を持ちながらスーパーマーケットで買い物をしている兵士だ。
戦闘地域から約30キロ離れた後方の基地付近で、臨戦態勢になっていたからだと思う。キーウではこのような姿を見ることはない。
「フィクサー」との現地取材
――取材で現地へ行く際はどのようなルートで入るのか?
ポーランドから入る。ルーマニアという手もあるが、他のジャーナリストなどもほとんどがポーランドから入国している。
ワルシャワからキーウまで、バスを使い約20時間かかる。列車もあるが、バスのほうが本数が圧倒的に多く、頻繁に便がある。
キーウからドンバス地方へ行くとなるとさらに7時間ほどかかる。
――現地での取材チームはどのような編成か?
私と(同じくジャパンプレス所属の)藤原亮司、それから現地で雇ったコーディネーター2名の計4名で動いている。
段取り役のコーディネーターは「フィクサー」と呼ばれている。情報収集を含めて、フィクサーの存在は重要だ。
私は英語とダリ語しか外国語が話せないので、住民などに話を聞く際はフィクサーを通じてコミュニケーションを取る。
――取材中、現地ではどんな生活をしているのか?
今回は2月11日から3月1日までの取材だった。ホテルだと宿代がバカにならないので、Airbnb(エアビーアンドビー)で一軒家を手配し、今回は3度滞在先を変えた。
朝は5時に起床し、朝食をとって8時に出発。昼食は大体いつも食べられない。戦闘地域に近づくと食事どころではない。
腹に入れられるときに入れておく。夜戻ってきて、酒を飲みながら翌日以降の打ち合わせをする。夜10時になると眠くなるので寝てしまう。
2022年3月に行ったときは酒の売買が禁止されていた。キーウでは日本酒も見かける。
「ウクライナは戦争後に大きく発展する国」
――これまでの著書では、現地での食生活についても綴っている。
私は必ず現地での食事の写真も残している。今回はフィクサーが料理好きで、いろんなものをつくってくれた。
ポークステーキやサラダ、芋料理など。ヌードルやパスタ、ごはんものまで何でも食べる。
レストランでは、ラーメンもどきの麺料理も食べた。みそ汁のようなものもメニューにあった。
ウクライナでは寿司も人気がある。色とりどりのネタを巻いた巻寿司もよく見かける。彼らは日本食がかなり好きだと思う。
――ウクライナの今後をどう捉えているか?
戦争後に大きく発展する国だと考える。
文化レベルも高く、観光資源も非常に多い。ウクライナのランドスケープはすばらしい。特に、リビウはどこを切り取っても絵になる雰囲気のいい街だ。
政権の中心にいる(ウォロディミル・)ゼレンスキー大統領は40代で周辺閣僚などには30代後半もおり、若い世代が活躍している。
また、IT国家でフリーWi-Fiがそこら中に飛んでいる。かたやロシアは古い国で、若い才能が国外に出ていってしまっている。
ウクライナはその逆で、自国を守るために人々がどんどん戻ってきている。武器を持って前戦に行くだけでなく、自分のスキルを役立てたいと考える人々が各々できることをしている。
今後も状況が変化したときに再訪したい。
終わり
取材・文/高山かおり
写真提供/佐藤和孝(ジャパンプレス)
外部リンク
- 「タタキ(強盗)をやれ」…拒否すると「妻と娘を殺すぞ」「ツイッターで免許証をさらす」 闇バイトから特殊詐欺、強盗へ凶悪化させられてしまう泥沼へのカラクリとは?【新聞記者が解説】
- 「赤ちゃん言葉で哺乳瓶から飲ませてもらい、孫の手で股間を…」エロすぎた大人のテーマパークSOD LANDの社長が逮捕!「警察は以前からガールズバーを摘発したいと」過去には何度も注意・指導も…
- 「高市氏は“官邸のパペット”だとバレるのを恐れたのでは」元経産官僚・古賀茂明氏が語る「ねつ造発言」と「行政文書の虚と真」
- 「自分がここまでこの国を愛しているとは思わなかった」と若い女性が領土防衛隊を志願。戦禍を伝える日本人ジャーナリストがウクライナで感じた国民の意識の変化とは
- 〈あきる野・5歳児死亡で再逮捕〉「子供に罪を被せたのでは?」友人たちが山本伯画容疑者による“窃盗被害”を告白。「京大卒・IT社長・モデルの妹あり」と盛りまくり、母は「あの子は昔から嘘つきで」と泣き出して…
この記事に関連するニュース
-
「ウクライナの勝利を世界に」戦争を乗り越えハンマー投げでパリオリンピックへ
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月26日 18時34分
-
犠牲者ゼロで2.4キロ先のプーチン軍を粉砕する…ウクライナ軍のロボット兵器「死の鎌」の知られざる実力
プレジデントオンライン / 2024年7月23日 16時15分
-
「なぜ日本が支援?」池上彰と考える、侵攻が続くウクライナと私たちのつながり
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月10日 11時0分
-
攻勢を強めるロシア軍がウクライナ東部ドネツク州の要衝を制圧【現地映像】
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月8日 16時7分
-
ロシア軍のミサイルを「機関銃」で撃墜!? “あわや着弾”ギリギリで回避 ウクライナ国防省が写真公開
乗りものニュース / 2024年7月2日 11時42分
ランキング
-
1ペットボトル収集車から遺体で見つかった男性 買い取り業者の47歳社員と判明 積み込み作業中に誤って巻き込まれたか
CBCテレビ / 2024年7月26日 20時14分
-
2小5が校外行事で意識不明 頭蓋骨骨折、2段ベッドから転落か
毎日新聞 / 2024年7月26日 21時57分
-
3大雨警戒続く山形 20代巡査長の死亡確認 高速道路陥没も
毎日新聞 / 2024年7月26日 20時32分
-
4「海自逮捕」防衛相報告資料に記載=次官に口頭で説明―不正受給
時事通信 / 2024年7月26日 22時19分
-
5西山ファーム元代表に有罪判決=「首謀者として主導」認定―名古屋地裁
時事通信 / 2024年7月26日 18時4分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください