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「高市氏は“官邸のパペット”だとバレるのを恐れたのでは」元経産官僚・古賀茂明氏が語る「ねつ造発言」と「行政文書の虚と真」

集英社オンライン / 2023年3月16日 16時1分

放送法の「政治的公平」の解釈変更をめぐる総務省の行政文書、いわゆる“小西文書”を巡り国会が紛糾している。「ねつ造だ」「本物なら議員辞職する」と啖呵を切って注目を集める高市大臣だが、背景には彼女ならではの焦りがあったのではないか、と元経産官僚の古賀茂明氏は語る。

「高市さんは自ら墓穴を掘った」

――高市大臣がねつ造だと主張していた“小西文書”。総務省はこれを行政文書と認めたばかりか、高市大臣がその存在を否定する大臣レクについても「あった可能性が高い」と言い出しました。

古賀茂明氏(以下同) 高市さん、かなり苦しいですね。立憲・小西参院議員の追及に冷静に答弁していれば逃げ道はいくらでもあったはずなのに、感情的になったのか、「文書をねつ造だ」と言い出し、自分が間違っていたら大臣も議員も辞職をすると啖呵を切って騒ぎを大きくしてしまった。



小西文書には高市大臣と安倍首相の電話会談結果のペーパーが2種類あります。15年3月9日に総務大臣室の平川参事官が安藤情報流通行政局長に連絡したものと、その5日後の3月14日に総務省から官邸に出向していた山田総理秘書官が同じく安藤局長に連絡したものです。

それを見ると、前者は高市大臣が安倍首相に電話した日付について「不明」、後者は「高市大臣から総理か今井総理秘書官かに電話があったようだ」と、どちらも内容にあいまいな点があります。だから、高市さんは小西議員の追及に対して「放送法の件で総理に電話をした記憶はないし、平川参事官に通話の内容を話したこともない」とだけ答えていれば、あとは水掛け論になって追及をかわせていたはずなんです。

なのに、高市大臣は議員辞職まで言い出してしまった。こうなると、安倍政権が総務省に圧力をかけて放送法の解釈を変えさせたという疑惑を追及するつもりだった野党側も高市辞任に的を絞って追及することになる。事実、メディアや世論の関心もそちらに集中し、高市さんは自ら墓穴を掘ってしまったという印象です。

高市大臣は放送法の解釈変更には慎重だった?

――高市大臣はなぜ、「文書はねつ造だ」などという主張をしたと考えますか?

それは高市さんにしかわからないけど、想像はできます。高市さんが登場するのは全78ページある文書中わずか4ページほど。しかもよく読むと、大臣レクで高市さんは「本当にやるの?」、「放送局と全面戦争になる」など反応しており、どちらかというと放送法の解釈変更に慎重な発言をしているんです。

だから、「そこに書かれていることは私の記憶と違っており、不正確」と否定するだけでよかったのに、むきになって「文書はねつ造だ」と言ってしまった。おそらく、高市さんは自分が登場する4ページの内容だけでなく、小西文書のストーリー全体を否定したかったのではないでしょうか?

小西文書には高市大臣が知らないところで礒崎洋輔首相補佐官(当時)が「オレと総理が二人で決める話。首が飛ぶぞ」などと、パワハラまがいの恫喝で総務省に介入し、放送法の解釈変更を迫るやりとりが生々しく記されています。

これが事実なら、高市大臣は放送法の解釈変更にまつわる一連の重大な発言を自らの政治判断でなく、礒崎補佐官の振り付けに従ってしていたことになります。

総理官邸

――つまり、高市大臣は官邸のパペットにすぎなかったとバレてしまうと。

そうです。しかし、それはプライドが高い高市さんにすれば、絶対に受け入れることのできないストーリーなんです。高市さんの強みは右派岩盤票に支持されていること。だからこそ、高市さんは安倍さんばりに強い『右派の星・サナエ』を演じ続ける必要がある。

しかし他人の振り付けに従っていたことがわかってしまえば、リーダーシップに欠ける政治家は応援できないと、頼みの右派岩盤層にもそっぽを向かれかねません。その危機感が自分の登場する4ページの否定だけでなく、文書全体のストーリーを否定させてしまったのではないでしょうか。

行政文書の「虚」と「真」

立憲民主党の小西洋之参院議員が安倍政権当時の総務省作成として公表した、放送法の「政治的公平」に関する内部文書

――そもそも、行政文書はどこまで正確なのでしょうか?

経産官僚だった私の経験から言えば、すべての行政文書が必ずしも正確というわけではありません。大臣や局長に報告するとき、役所や当の官僚にとって都合の悪いことは書きませんから。

行政文書管理のガイドラインが改正され、課室長級の文書管理者による確認などが徹底された2017年以降は正確になったという声もありますが、それもウソ。役所にとって都合の悪い文書は担当課長が承認せず、行政文書に登録しないこともしばしばです。

作成したり、保存したりすることが微妙な内容の文書は役所内では「ノンペーパー」と呼ばれ、個人のメモ扱いとされるんです。また、行政文書に登録するにしても読まれたくない部分を書き直したり、わざと落としたりすることもあります。だから、文書にある高市さんに関する記述も不正確な部分があってもおかしくありません。

――では、「小西文書は不正確」という高市大臣の主張は正しい?

私も官僚時代、通産大臣室で働いたことがあるからわかるんですが、例えば外部からの電話はまず大臣室の秘書官などが対応し、相手とつながっていることを確認してから『誰々さんから電話です』と、ボスである大臣につなぐ。

だから、官邸でも高市さんからの電話はまず今井直哉筆頭秘書官らが対応しているはずです。つまり、高市さんはまずは首相でなく、今井秘書官らと話しているんです。

その時、今井秘書官が何らかの理由で首相につなぎたくないと考えたとしたら、安倍さんの意向を高市大臣に説明しただけで電話を切ってしまったのかもしれない。まして、当時は通常国会の審議中で、安倍総理も高市総務大臣も分刻みのスケジュールに追われている時です。高市さんも長電話できず、今井秘書官の説明を聞いただけで納得して電話を終えた可能性は小さくない。

その意味では、高市さんの言うとおり「放送法の解釈変更をめぐって、安倍総理と電話でやりとりしたことはない」というのは、あるいは本当なのかもしれません。その一方で、『首相と総務大臣の電話会談の結果』というペーパーが2種類も行政文書として残っている以上、本当に電話でやりとりした可能性も否定できません。

「大臣レクはなかった」は無理がある

――それでは大臣レクそのものがなかったという高市発言にも信ぴょう性はある?

その発言はちょっと無理があるでしょう。官僚というものは行政文書に不都合なことは書かないということはあっても、全体としてはウソのない、整合性のある文書を作るものです。それが職務ですから。

なので、存在していない大臣レクをさもあったかのように見せかけるウソの文書はさすがに作りません。大臣スケジュールの保存期間は行政文書管理のガイドラインでは1年未満ですが、多くの省庁は当日ないし非常に短期間で廃棄という扱いにしています。

もちろん、対外的な公務などの記録はさすがに残りますが、日々の大臣レクといった内輪の細かなスケジュールについては確認のしようがない。そのことを高市さんはよくわかっていたから、「レクそのものがなかった」と答弁したのでしょうが、さすがに無理がある。今となっては発言を悔やんでいるのかもしれません。

写真/共同通信社

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