「もう本当に家族が殺されると思って……。やりたくなかった。でも、もうやるしかないかと……」
当時29歳の男は、横浜地裁の法廷で言葉を詰まらせ泣きじゃくった。
男は横浜市や川崎市で連続発生した緊縛強盗事件で逮捕されたが、凶悪犯から飛び出した発言とはまるで思えない。追い詰められていた様相がありありと浮かんでくるようだ。
全国で被害が相次いでいる強盗事件。近年、逮捕者で目立つのが、彼らが特殊詐欺の末端である「受け子」(被害者宅で現金などを受け取る役割)や「出し子」(だまし取ったキャッシュカードで現金を引き出す役割)を担っていたという背景だ。
「彼らへの取材を続けていると、次第に指示役の組織に逃げ道をなくされて、やむにやまれず犯行におよんでしまうという実態が見えてきました」
神奈川新聞報道部デスクの田崎基さんはそう話す。