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話題の官公庁オークションってどうやるの? 2台の車に入札した、まあまあ面倒な経緯と意外な結果報告!

集英社オンライン / 2023年3月28日 16時1分

国や自治体が保有する不用品や没収品、不動産などを競売で売却する、官公庁オークション。近年はオンライン上でも行われ、掘り出し物も多いと言う。車中泊に目覚めたコラムニスト佐藤氏が、次なるカスタム車を求めて、オークション入札にトライした。

掘り出し物だらけで話題豊富な官公庁オークション

若者のクルマ離れが叫ばれるより前の時代に青春を過ごした“ぎりバブル世代”の僕は、車を人生における三種の神器の一つと信じて疑わない。
学生時代から50を過ぎた現在に至るまで何台も乗り継いできたが、車はやはり高価なものなので、購入する際には吟味を重ね、コレと見定めた一台を末長く乗る決意のもとに迎え入れてきた。

しかし昨年、一台の車を軽く下見しただけで即決購入した。


友人の伝手で紹介してもらった激安の中古軽バンを、普段乗る車とは別の“遊び専用車”としてゲットしたのである。

遊び専用車として入手したスズキ・エブリイ

目的は、50代の自分の新たな趣味にしようと思い立った、車中泊専用車にするため。
その車を手に入れると、僕は自力でさまざまにカスタムを施し、車中泊仕様にしつらえた。
そしてその車で、何度も旅に出た。
その経験があまりにも楽しかったため、僕の車に対する認識はこれまでとは幾分変化した。

カスタム後の僕の車中泊専用車

以来、中古車サイトやオークションサイトに夜な夜なアクセス。
衝動買い可能な範囲の低価格車を検索しては購入シミュレーションをし、入手後のカスタムや遊び方をあれこれと想像するようになった。

苦労して作り上げた現在の車中泊カーに愛着はあるが、早いうちに下取りに出し、また新たに手に入れたカスタムベース車で、次のアイデアを試してみるのも悪くないと思っているのである。

そんな僕がここのところチェックを欠かさないのが、官公庁オークションだ。

官公庁オークションとは、国や自治体が保有する不用品や没収品、不動産などを競売で売却する制度のこと。
かつては所定のオークション会場のみでおこなわれていたが、近年はオンライン上を中心に実施されるようになっている。

車の場合は一般的な商用車両に加え、消防車や救急車などの特殊車両、バスやトラックなどの大型車、そして思わぬ外国車(きっと差し押さえられた車なのだろう)まで、出品の幅は広い。
売れ線車種ではないため、一般の中古市場ではあまり見かけない珍車や、年式の割に走行距離が異様に少ない車などが出ていたりするのも、官公庁オークションの面白いところだ。

ネット上の官公庁オークションは、KSI(紀尾井町戦略研究所株式会社)という会社が委託を受けて運営しているが、政府の公正な競争入札制度に基づいているため、買い手側にとっては信頼性が高く、相場より低価格で商品を入手できる場合もある。
出品物はいずれも国や地方自治体が使用および管理していたものなので、概して状態が良好だし、もし不具合な点などがあっても包み隠さず申告されているので安心感も大きい。

その一方で、入札に参加する際には所定の手続きを経る必要があるため、やや面倒臭かったりもする。

官公庁オークションには2種類の形式があり、出品物ごとにいずれかがあらかじめ指定されている。
一つは、定められた期間中に一度だけ入札することができる “入札形式”。
もう一つは、期間内であれば何度でも入札できる“せり売り形式”である。
ヤフオクをはじめとするオークションサイトの一部やメルカリなどで用いられる、出品者側があらかじめ定めた金額で一発落札できる、“即決形式”は設けられていない。

すぐに参加できる民間オークションとは違い、前述のとおり官公庁オークションはいくつかの手続きを踏まなければならないのでややハードルが高く、僕はまだ入札まで至ったことがなかった。
だが今回、満を持して入札参加してみたので、その手順と顛末を公開してみたいと思う。

長野県の空港で使用されていた
機材運搬用ワンボックス車

2023年2月に入札がおこなわれる回の官公庁オークションをチェックしていて、僕がまず目をつけたのは、長野県庁が出品している日産のワンボックス商用バン、バネットだった。
平成6年式とかなりの低年式だが、走行距離はわずか1万4千km。
どうしてこんなに走行距離が短いのだろうと不思議に思い、車のプロフィールをよく見たら理由はすぐにわかった。

ボディの「長野県」の文字も渋い日産バネット
(『KSI官公庁オークション』のウェブサイトより)

この車が働いていた現場は松本空港。空港構内で、資材などを運搬する役目を担ってきた車だったのだ。
重い機材などを運ぶこともあったのか、後輪は安定性の高いダブルタイヤになっている。
後部の荷室は、座席など何もないフルフラット仕様。
前席はベンチシートになっていて、三人が並んで座れる。
こうした特徴は、車中泊用の車のカスタムベースとしてはうってつけのものと思えた。

車中泊車としてカスタムしてくれと言わんばかりのバネットの内装
(『KSI官公庁オークション』のウェブサイトより)

長野県庁側が定めた予定価格は、1万円とされていた。
この“予定価格”という用語は、官公庁オークション独特のものだ。
SNSなどではよく、この価格だけを見て「官公庁オークション、めっちゃ安いやんけ!」と誤解している人を見かける。
でもこれは普通のオークションの“最低落札価格”に相当するものであり、実際の落札額は予定価格の数倍から数十倍となることもある。

長野県庁が出品するバネットの気になる点は、マニュアル車であることだ。
僕はマニュアル車でも運転できるので問題ないのだが、僕の妻はかつて免許をうっかり失効して以来、オートマ限定免許しか持っていない。
妻が運転できないと何かと不便なので、もしこの車を我が家に迎え入れることになったら、妻にはもう一度教習所通いのうえ、免許の限定解除をしてもらわなければならないだろう。

車に過剰な装備は不要と思っているが、それにしてもこの車はかなりシンプルで、オプションはAMラジオしかついていない。
つまり購入後にはカーナビやカーオーディオ、ETC車載器、それにドライブレコーダーなどを新たに付け足していく必要がある。
僕はワンボックスバンの運転には慣れていないから、バック時にぶつけないよう、リアカメラもつけなければならないかもしれない。
さらに、車検は切れているので、整備と再登録の費用として10万円くらいは見とかなければならないだろう。

それら購入後の諸費用を勘案、そしていくら低走行車だとしても、すでに30年近く経過する車だし……ということも踏まえ、僕はこの車に入札する額を決めた。

25万円!

まあ、妥当なところではないだろうか。

やや面倒くさい、官公庁オークション独特の申し込み方法

官公庁オークションは、サイト上の「申し込みボタン」をポチッとしても、それだけでは申し込み完了にならない。
まずはクレジットカードなどの情報を入力し、予定価格の10分の1と定められている入札保証金を支払わなければならないのだ。
これはデポジットで、落札が叶わなかった際にはそのまま返金されるシステムだ。

申し込みボタンを押して入札保証金の支払いが済むと“仮申し込み”という状態になる。
その後は出品側の各官公庁が規定する方法で、指定の期日までに“本申し込み”をしなければならない。
ここが、官公庁オークションの面倒なところだ。

長野県庁の場合、HPから申込書と誓約書をダウンロードして必要事項を記入。
さらに、個人での申し込みの場合は以下のうち一通の写し(住民票、印鑑登録証明書、免許証、住民基本台帳カード、パスポート、マイナンバーカード)、法人申し込みの場合は、商業登記簿謄本の写しと役員等一覧表を用意し、まとめて県庁の係宛に郵送しなければならない。

僕は法人登録している個人事務所名で申し込んだので、法人用一式を長野県庁に送り届け、本申し込み完了となった。

ちなみに官公庁オークションに出品されている物はほとんどの場合、出品者が一方的に決めた“下見日”に実物を検分することができる。
だが、長野県庁が指定した日産バネットの下見日に、僕は都合を合わすことはできなかったので、ここは長野県庁さんを信用し、下見なしで申し込むことにした。

どうしても気になって仕方がなくなってしまった“移動図書館車”

本来であれば、入札するのはこの1台だけでよかったのだが、出品されている車を一通りチェックしていたら、どうしても気になる車をもう一台発見してしまった。
それは、東京都の東大和市役所が出品していた“図書館車”。
市内を巡回する移動図書館として、長年活躍をしていた車だった。

いい車みっけ!
(『KSI官公庁オークション』のウェブサイトより)

ベース車は三菱ローザというマイクロバス。
長野県のバネットよりもさらに古い、平成元年式というかなりの年代物だが、市内を巡回していただけなので、走行距離はわずか17,299kmだ。
図書館車なので車体は大きく改造されており、両側面と内部に二面、大きな本棚が設置されている。

図書館車の車内。なぜか写真が90度傾いているが、2列の本棚が確認できる
(『KSI官公庁オークション』のウェブサイトより)

いかにも官公庁オークションらしい特殊車両だが、これを見つけた瞬間、僕の心は大きくときめき、頭の中に妄想が広がった。

長年、本に関わる仕事をしてきたし、個人的にも読書が大好きなので、我が家には本当に唸るほどの量の本があって、いつも置き場に難儀している。
そのうち専用の書庫でも作るしかないなと思っているのだが、この図書館車を買ったら、プライベートな移動式書庫にできるではないか!

いや、待てよ。
これまで莫大な金額を投じて集めてきた本なのだから、この際、図書館車を使って何か面白い事業を始めるのもいいかもしれない。

かの松浦弥太郎氏が、東京の中目黒でおしゃれ書店のカウブックスを開く前、カスタムしたバスを使って移動書店をやっていたことを、知る人は知っていることだろう。
それを真似て、移動古書店をやるか。
いや待て待て待て。
“移動ブックカフェ”にして、日本各地のイベントなどに出没し、コーヒーやオリジナルグッズを販売したりするのも楽しいかも……。

我が家の場合、僕もアホだが妻も大概アホなので、そんな構想とともにオークションの図書館車のことを話したら、諸手を挙げて賛成してきたばかりか、早くも我が家の移動ブックカフェの名前やロゴマークなどを考え始めた。

よし、オークション参戦だ!

しかし、予定価格8万円とされているこの車の、落札相場がさっぱり見当つかない。
異色で魅力的な車だが用途は限られているし、マイクロバスを置ける場所がある人はそう多くないのではないだろうか?
とすると、これは意外な安値で落札できるかも……。
こういうときの妄想は、自分に都合がいい方向に進みがちなものである。

東大和市の図書館車は、長野県のバネットの一発入札とは違い、せり売り形式となっている。
だから入札が開始されてから、ライバルの様子を見ながら金額を決めることができる。
でも頭の中で、だいたいの予算を決めていた。
まずは50万円。
そしてもし、ぎりぎりで競り合うようなことになったら、プラス10〜15万円までが許容範囲かな……。

この車も落とした後に、相当の整備費や装備品の追加費がかかることが見込める。
それに大型車なので車検代や保険代、税金なども高くつくことを考えると、そこらへんが限界と考えた。

東大和市役所の申し込み方法も長野県庁とほぼ同じで、先方の書式による申込書と誓約書、そして商業登記簿謄本の原本を送り、本申し込みは完了した。

いざ、入札開始! 果たして落札できたのかどうかと言えば……

官公庁オークションは、仮申し込みから本申し込みに進んでも、その後に長い待ち期間がある。
定められた“入札期間”まで、数週間ほども待たされるのだ。
僕は頭の中に、広くて素敵な“ニュー車中泊車”と、おしゃれな“ブックカフェバス”の妄想を展開させながら、ヤキモキしながら入札開始日を待った。

入札開始後から締め切りまでの期間は物件によりマチマチだ。
僕が申し込んだ2件は、入札開始日こそ同じだったが、東大和市役所の図書館車の方が4日も早く終了する予定だったので、まずはこちらに片を付けなければならない。

とはいえ、せり売り形式なので焦っても仕方がない。
まずは様子見しつつ、締め切りのギリギリで勝負しよう。
そう思って、入札開始直後にオークションのページを開いてみたら、愕然としてしまった。

開始直後からバンバンと入札が入り、10分後には30万円越え。
そして入札開始2時間後には、僕が想定していた金額である50万円を超えてしまったのだ。

入札額はあっという間に50万円越えになった
(『KSI官公庁オークション』のウェブサイトより)

……チーン。
おしゃれブックカフェバスの構想は、あっという間に霧散消失した。

結局、4日後の落札額は131万2000円。
こりゃ無理だ……。

1,312,000円で落札された図書館車。きっとどこかでまた活躍するのだろう
(『KSI官公庁オークション』のウェブサイトより)

しかしこんなにマニアックで入手後の処理も大変そうな車に、ここまでの金額を注ぎ込める人はどんな金持ちなのだろう?と疑問に思ったが、相手は個人ではないなという感じもした。
きっと、駐車場所もふんだんに備えた地方の法人、あるいは移動図書館としてそのまま活用しようと考えている団体などなのではないだろうか。

それに、この図書館車は高値になる兆しもあった。
みずうみ号”という名前で、長年の間、東大和市民に親しまれた末に引退したことが、動画のニュースで伝えられていたのだ。(https://www.youtube.com/watch?v=PJH8xpnNo3g)。
また、官公庁オークションに出品された際にも、「書斎に使えそう?」というタイトルで、ニュースになっていた。(https://news.yahoo.co.jp/articles/167464ea1597044f2eb39d964f00d2c97233c2ba

つまりオークションが始まる前からちょっとした有名車になり注目されていたわけだが、それにしても、30年落ちの特殊車両に131万円の値がつくのか……。

まあ気を取り直し、長野県庁の日産バネットの落札に集中しよう。
そうはいってもこちらは、一度きりの入札方式なので、25万円で入札してしまった以上、静かに祈りながら入札締切日を待つしかない。

250,000円で入札。追加入札や訂正は効かない
(『KSI官公庁オークション』のウェブサイトより)

そして入札開始から8日後、入札終了直後にサイトを確認してみると、やはり僕の落札は叶わなかった。

落札金額は36万9000円。
く〜、惜しかった。

落札額は369,000円! 残念!!
(『KSI官公庁オークション』のウェブサイトより)

入札してしまった後、僕は10万円程度プラスしておけばよかったかと後悔していたのだ。
それでもまだ落札金額に届いてはいないのだが、いい線はいっていた。

今回の官公庁オークションの勝負は、いろいろと学ぶところが多かった。
落札金額の相場感や、高値がつきやすい物件についてもなんとなく学習できたので、次回こそは決めたいと思っている。

その際はまた本コラムで報告するので、乞うご期待!



写真・文/佐藤誠二朗

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