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【花粉症を劇的に悪化させるもの】「花粉症」と「うつ病」や「アルツハイマー病」は実は同じ炎症が原因。ではその意外な主犯とは…

集英社オンライン / 2023年3月18日 12時1分

今春の花粉飛散量は過去10年で最多ともいわれている。花粉症に悩まされる人々が増える中で、症状を抑えるものと悪化させるものとは。『花粉症は1日で治る!──東大の微生物博士が教える』 (自由国民社)より一部抜粋、再構成してお届けする。

実は花粉症とうつ病は同じ病気

「花粉症とうつ病が同じ病気である」というと、「え そんなことないだろう」と思う人が多いと思います。

ところが、花粉症もうつ病も免疫細胞が起こす炎症が原因となっています。花粉症では、炎症が鼻、目、喉、皮膚などに起こり、うつ病では、炎症は脳に起こります。「花粉症では花粉というアレルギーの原因となるアレルゲンが目や鼻に侵入するから起こるのに、うつ病ではアレルゲンがないではないか」という人もいると思いますが、炎症はアレルゲンだけで起こるものではありません。



炎症とは、体の中で免疫が活発化することで、そのタイプはさまざまです。

うつ病の炎症は、ストレスが加えられ脳の中にダメージ関連分子パターン(DAM Ps)という物質が作られ、これが炎症を起こします。

炎症が続くと脳の免疫細胞が神経細胞のシナプスを破壊し、セロトニンなどの精神を安定化するホルモンが減少します。

ここで、脳内の細胞を紹介しましょう(下図)。

脳細胞の種類

神経細胞は脳の機能の主役ですが、脳全体では1000~2000億個しかありません。その他の細胞はグリア細胞と呼ばれ、神経細胞の10倍も存在します。グリア細胞には機能の違うアストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリアの3種類があります。

アストロサイトの数が最も多く、脳全体を埋め尽くすように存在します。アストロサイトは脳全体に栄養を供給し、不要なゴミを除去する働きをしているのです。

オリゴデンドロサイトは神経細胞のシナプスを囲む髄鞘(ずいしょう)を形成します。

アルツハイマー病も花粉症と同じ病気

ミクログリアは免疫担当です。神経細胞を破壊するのが仕事ですが、実は胎児から幼児の時の脳全体の形と配置を決めるのもミクログリアです。つまり、ミクログリアは脳の発達の司令塔なのです。

脳の機能として重要な〝記憶〟は、シナプスが伸び神経細胞間が網の目のようにつながって作られます。ミクログリアは夜間にこれらのシナプスのつながりを適度に切り、これによって記憶を固定させます。ミクログリアは記憶の形成に関わっているのです。

腸内フローラが悪くなると脳に炎症が起こり、脳内には炎症性サイトカインである IL-1、IL-6、TNFαが増加して、このサイトカインによってミクログリアが神経細胞を攻撃します。

サイトカインはさまざまな細胞が連携をとるための情報伝達物質です。炎症性サイトカインは他の細胞に「炎症を起こせ」という指令を出しています。いずれにせよ、花粉症とうつ病は炎症によって起こる病気です。

実は、良好な腸内フローラはこれらのさまざまな炎症を強力に抑えています。

マスク着用のルールが緩和されてもマスクが手放せない人は多い

アルツハイマー病の増加は高齢者の増加が原因と考える人が多いかもしれません。

そして、アルツハイマー病ではアミロイドβというゴミが脳に蓄積するということ は、多くの方が知っているでしょう。ゴミは高齢になれば蓄積するのは当たり前ですが、実は、アミロイドβが溜まったことと脳細胞が死滅することはまったく違うのです。

多くの製薬企業が、蓄積したアミロイドβを減らしたり、蓄積させないような薬剤を探索してきました。ところが、アミロイドβを減らしたり、蓄積させないようにしても認知機能の低下を防げないことがわかってきたのです。

その結果、ほとんどの巨大製薬企業は、2019年までにアルツハイマー病治療薬の開発を諦めました。

最終的に認知機能を低下させるのは、脳に存在する免疫細胞(ミクログリア)が神経細胞を破壊することが原因だったのです。

免疫の暴走をコントロールするのは腸内フローラです。腸内フローラが悪くなれば免疫は暴走します。その腸内フローラを悪くする主犯は抗生物質なのです。

アルツハイマー病も抗生物質が増やしている病気なのかもしれません。

驚愕の事実「人は体の炎症を抑える仕組みを持っていない」

「すべての病気は炎症を起こし、炎症が病気を発生させる」とお伝えしてきました。おそらく、「体には炎症を抑える仕組みがあるのだろう」と考える人が多いでしょう。ところが、人は炎症を抑える仕組みを持っていません。

それどころか、すべての哺乳類が持っていないのです。

繰り返しになりますが、炎症は良好な腸内フローラが抑えます。腸内細菌は体内ではなく、体外に生息しています。ですから、人は炎症を抑えることができないのです。

人の外にある良好な腸内フローラを壊せば炎症が抑えられなくなります。

人は、普通分娩では肛門の周りに存在する腸内細菌を母親からもらいます。膣に生息する乳酸菌ももらいます。母乳にはオリゴ糖類が数%入っていて、これがビフィズス菌だけを増殖させます。ビフィズス菌は大腸に酢酸と乳酸を充満させ、大腸を酸性にすることによって、大腸菌などの有害細菌の侵入を防ぎます。

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やがて、離乳すると、大腸では野菜に含まれるオリゴ糖や多糖類をエサにして酪酸菌が優占してきます。

酪酸菌が作る酪酸は大腸細胞のエネルギー源となり、免疫系を発達させて不要な炎
症を抑えるようになります。

実は、すべての哺乳類はこのような仕組みで炎症を抑えているのです。

抗生物質は良薬か悪者か

私は、抗生物質は「悪い物質」だと言ってきましたが、すべてがそうではありません。抗生物質は肺炎、敗血症、結核、性感染症などの病気の治療に不可欠。幼児の死亡
率を大きく低下させ、人の寿命を延ばした良薬です。

下図は1903年~1978年までの死因別の死亡率(人口10万人あたりの死亡人数)の変遷を示しています。

日本の抗生物質使用開始前後の各疾病の死亡率の変化

抗生物質が一般的に使用され始めたのは、1950年代です。これより以前には、 肺炎・気管支炎、胃腸炎、結核、腎炎・ネフローゼで死亡する人が多かったのですが、

これらは細菌感染症です。胃腸炎は腸チフス、コレラなどで、胃が荒れたことではありません。1950年以前は、細菌感染症が子どもの命を奪っていたのです。

この経緯を知ると、抗生物質は間違いなく「良薬」です。

ところが近年、抗生物質に対する耐性を持った日和見感染菌を生んでいます。日和見感染菌は健康な人には病気を起こさず、病気で免疫力が低下した人に感染する細菌です。

病院内ではこの日和見感染菌が抗生物質の効かない耐性菌となっています。薬剤耐性の日和見感染菌は多くの人の命を奪っており、人類の脅威になっています。厚生労働省は薬剤耐性菌の出現を減らすため、抗生物質の使用を減らす努力をしています(薬剤耐性〈AMR〉対策アクションプラン)。

この問題とは別に、私が説明してきたように、抗生物質の使用はアレルギーと自己免疫疾患を増加させています。

抗生物質の歴史にはこのような〝光〟と〝影〟があるのです。

『花粉症は1日で治る!──東大の微生物博士が教える』 (自由国民社)

小柳津 広志

2020年1月31日

1430円

200ページ

ISBN:

978-4426126193

アレルギー研究の世界的権威が、
医者に治せない免疫疾患の
改善にズバリ答えを出す!
その鍵は……「酪酸菌」と「フラクトオリゴ糖」!

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