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【休刊まであと2年】日本俳優初の単独表紙を飾ったのは、木村拓哉。邦画の隆盛とハリウッド映画の失速、新スターの不在など厳しい条件下で、「ロードショー」は“洋画雑誌”の看板を下ろす決意を!?

集英社オンライン / 2023年3月22日 12時1分

1972年の創刊以来ブレたことのなかった、洋画中心という「ロードショー」の軸がついに揺らぐ。ジョニー・デップ人気に頼らざるをえないなか、誌面や企画で起死回生を狙うが…

2007年「ロードショー」の表の顔・裏の顔

「2007年の顔は、誰だ!?」1月号の見出しは挑発的に呼びかける。「正月映画注目50本、全部見せます!」という特集につけられたタイトルであることから、新作映画のなかから次のスターが出てくることを期待していたのだろう。

その号の表紙にオーランド・ブルームを起用しているところをみると、編集部はオーリーに賭けていたようだ。実際、彼は『キングダム・オブ・ヘブン』(2005/リドリー・スコット監督)や『エリザベスタウン』(2005/キャメロン・クロウ監督)といった人気監督の最新作に抜擢。『ロード・オブ・ザ・リング』(2001~)と『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003)の2大ヒットシリーズでバイプレイヤーとしてブレイクした次のステップに、最高の舞台をお膳立てされていた。



しかし、いずれのチャンスもみすみす逃してしまう。たとえばリドリー・スコット監督は『グラディエーター』でラッセル・クロウをトップスターに押し上げ、キャメロン・クロウ監督は『ザ・エージェント』でトム・クルーズの新たな魅力を引き出している。しかし、ふたりの名匠をもってしても、オーリーからは主演スターの輝きを引き出すことができなかった。

3月号のジョシュ・ハートネットにしても同様で、ブライアン・デ・パルマ監督のクライム・ドラマ『ブラック・ダリア』(2006)で主演を務めたものの、興行・批評ともに芳しくなかった。本人も音楽とアートが好きで内省的な性格であり、ハリウッド・スターの座にはそぐわなかったようだ。

結果的に、ジョニー・デップが4度も表紙を飾っている。つまり、2007年の顔もジョニーだったのだ。

だが、登場こそ1回だが「ロードショー」の歴史に残った俳優がひとりいる。10月号の表紙を飾った木村拓哉である。1972年の創刊以来、「ロードショー」の表紙を飾った日本人としてはフィービー・ケイツとツーショットで映った薬師丸ひろ子(1985年6月号)に続いてふたりめ、単独では初の快挙だ。

『HERO』の大ヒットを受けてカバーを飾った木村拓也
©ロードショー2007年10月号/集英社

(ちなみに、アジア俳優ではノラ・ミャオ/1975年4月号、ジャッキー・チェン/1982年8月号、ハリソン・フォードとのツーショットで登場した子役時代のキー・ホイ・クァン/1984年9月号がいる。)

2007年の興行収入ランキングでは『HERO』が3位、『武士の一分』が9位であることから、日本を代表するスターであることは間違いない。

だが、いまからみれば、10月号は存在意義を失いつつある「ロードショー」を象徴していたように思う。

邦画の台頭が読者との亀裂に?

実は2007年の誌面には日本の俳優の割合がぐっと増えている。1月号には木村拓哉、松本潤、二宮和也のインタビューがアン・ハサウェイと並んでおり、3月号では、松本潤、妻夫木聡&柴咲コウ、松田龍平、加瀬亮などが登場している。つまり、10月号の木村拓哉の表紙起用は決して突飛なことではなかったのだ。

インタビュー記事の半分以上を日本の俳優が占め、「セレブログ」なるゴシップコーナーが新設されるなど、新機軸の努力がうかがえる
©ロードショー2007年1月号/集英社

創刊以来「ロードショー」は洋画を中心に扱ってきた。日本のアニメや邦画を紹介することもあったが、軸がブレることは決してなかった。

方針が急変した背景には、販売部数の下落があったに違いない。インターネットの普及が引き起こした出版不況の最中であり、おまけにテレビ局主導の邦画が人気を博し「洋高邦低」時代が終わっていた。2001年のニューヨーク同時多発テロ以来、アメリカ社会には喪失・悲しみの陰がさしており、ハリウッド映画もかつての陽気さと市場での牽引力を失っていた。かくして「ロードショー」も洋画雑誌の老舗というプライドを捨てて、邦画を取り入れることになったのだ。

変化は表紙やインタビューの題材だけでない。「特別審査委員長は品川庄司! ハリウッド筋肉王選手権」(8月号)、「ルー大柴がジャッジメント!ハリウッドウザキャラ選手権」(10月号)など、海外セレブや映画のキャラクターを紹介する記事に、日本のタレントを絡めてもいる。

読者を少しでも楽しませようという編集部の努力の表れだが、裏を返すと、馴染みのタレントを介さなければならないほどに、海外タレントや洋画が縁遠い存在になっていた証拠である。

急速に内向きになっていく映画観客とそれに合わせて作られる誌面。アイデンティティを失っていく「ロードショー」に見切りをつけた旧来の読者も少なくないはずだ。そしてついに2008年を迎える。

◆表紙リスト◆
1月号/オーランド・ブルーム 2月号/レオナルド・ディカプリオ 3月号/ジョシュ・ハートネット 4月号/ブラッド・ピット&アンジェリーナ・ジョリー 5月号/レオナルド・ディカプリオ&ジェニファー・コネリー&ジャイモン・フンスー※フンスーのみ初登場 6月号/ジョニー・デップ 7月号/ジョニー・デップ 8月号/ダニエル・ラドクリフ 9月号/エマ・ワトソン 10月号/木村拓哉※初登場 11月号/ジョニー・デップ 12月号/ジョニー・デップ
表紙クレジット ©ロードショー2007年/集英社

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