「女の子を四つん這いにさせ犬の首輪をつけて散歩させる社長」「トー横少女を探すために500万振り込んできた男」トラブルシューターZ李が出会った悪いヤツラと“難事件”
集英社オンライン / 2023年3月22日 18時1分
正体不明のネットのニューヒーロー、Z李氏。その素顔に迫るべく集英社オンライン編集部はロングインタビューを敢行。前編では“義賊”の一面を見せたZ李だったが、中編ではこれまでZ李氏が関わってきた危うい“事件”について話を聞いた。
高級ホテルのラウンジバーで響いた怒号
「俺たちは被害額が10億円、20億円の詐欺師ばかりを相手にしてきた。追ってるときは、それを元に小説を書くなんて思ってもみなかった」
これまでZ李氏はトップランカーの詐欺師ばかりを相手にしてきたという。「海千山千の詐欺師であれば言い訳も超一流では?」と記者が尋ねると「まずはスマホを開かせる。LINEやSNSやアルバム、ネットbank、仮想通貨などの取引所もログインして見れば証拠が出てくる」と荒事をさらりと語った。
3月22日に発売する自著『飛鳥クリニックは今日も雨(上)』の一説では、ポンジ・スキーム(「必ず高騰する仮想通貨がある」と投資話を持ちかけて預かった金を騙し取る手法)詐欺師を追い詰める話などが登場するが、これもZ李氏が実際に経験した“事件”だという。
「被害額は約2300万円だった。被害者の一人がキャバ嬢で可愛かったという理由で依頼を受けたけど、騙し取ったやつと対峙する流れで〇〇って外資系ホテルに行った。すると詐欺師は他の債権者も呼んでいて俺たちとバッティングさせようとしたんだ。ホテルの高層階のラウンジバーで揉め事になって、何人もの男の怒号が響いてさ。
さすがにバーの従業員に通報されると思ったから『こいつ(詐欺師)を担いで持ってきますね』と言うと、従業員は『すいません。もう運べます?』ときたもんだ。外資系ホテルは警察が来て騒ぎになるより連れ去ってくれって判断をしたんだ。暴れる詐欺師をなんとか担いでホテルを出て、それから事務所に連れて行って、金も回収し、皆が納得するカタチにおさめたんだ」
500万円振り込まれて動くことになった“東横キッズ”の少女探し
こういった場面を幾度となく、くぐり抜けてきたZ李氏。Z李氏と言えば歌舞伎町を思い浮かべる人も多いと思うが、トー横キッズを相手に人探しを行ったこともある。
「知らないアカウントからある少女を捜して助けてほしいとDMがきた。ちょうど歌舞伎町のビルでカップルが自殺した時期だった。A子とB子がいて、B子はもうどこかに失踪している。このままだと残されたA子は殺されてしまうと。A子の行方はわからないけど、A子の入り浸っていたバーがあって、そこは新宿署の息がかかっていて、そのバーに行くと吸い込まれたように女の子が次々いなくなるとか“龍が如く”みたいなことを言っていた。
俺は『それは骨が折れそうな案件だね、本気で調べるなら着手金が500万円かかるよ』って冗談で言ったんだ。すると振り込むというからどうせ嘘だろうと銀行の口座を教えると本当に500万円が振り込まれてきた」
妙な依頼だとは思いながらも、お金をもらったからには依頼者の思い込んでるストーリー通りに全力で調べてあげようと思ったZ李氏たちは、一晩でのべ50人以上に聞き込みをしたという。
「調べていたら援デリの実態に行きついた。本当にキッズのやつらってひとつの部屋にみんなで住んでいたり、1台のケータイを使いまわしててさ。そのうちA子とかB子の証言も出始めてきた。これは大変だったな。例の新宿署の息がかかってるっていうバーに『乗り込みますよ』って依頼人に言ったら『そんな事したら自分が消されてしまう』とか言い出してさ。これも依頼人が納得する形で話はついた」
普通の人からすれば面倒事にしか思えない案件をなぜ引き受けるのか。Z李氏は「金のため」と言い張るが、偽悪的に振舞っているようにも見える。
そのひとつの例として“SuriBoy”の一件がある。
歌舞伎町一番街で酔い潰れている男性からスリを働いた若い男性がいた。その一部始終が定点カメラに捉えられ、その動画が公開されて話題になっていたことから、Z李氏が犯人を捜索。実際に見つけ出して犯人に謝罪の思いを込めたラップを歌わせ、その音源と、警察に出頭する男の動画をTwitterに投稿した。話題にはなったが、これに収益が発生しているとは思えない。
「ネット上に自分の画像があんだけ出回って、こすられたら気が気じゃないでしょ。盗人の立つ瀬を残して、かつちゃんと悔い改めさせる超法規的な措置をすれば世の中がベターな方向になると思ってて、それが謝罪ラップだったり出頭の様子を公開することだった。
なんてかっこいいこと言っても、はっきり言ってふざけてるだけ。でも、MC漢がやってる『9sariグループ』てとこでRECしたし、出頭していく動画もすごくこだわって撮影したから、これはもう、ひとつのドキュメンタリーだろ」
「(自分は)クリエイターだと思ってる」
彼の能力は情報収集力だけでなく、独特なワードセンスをはじめとする感性だ。「まるでクリエイターですね」と投げかければ、「だと思っている」と返す口調も決して悪ノリではなさそうだ。
「こんなこともあったな。港区の超高級ホテルに一度に何人も女の子を呼ぶ超富豪がいたんだよ。100億円じゃきかない1000億円単位の富豪だ。それで、複数の女の子を四つん這いにさせて犬の首輪をつけて室内を散歩させる。中には薬物を強要するのに近い形でやらせるケースもあると聞いている。水に溶いた覚せい剤を局部に塗りこむ性癖、もう普通じゃいられないんだろうな」
まるで漫画と思えるぐらい一概には信じがたい話だが、確認したところ、この事件は他誌でスクープされており、その超富豪は会長職を辞した。この一連のスキャンダルは、Z李氏が先駆けていたのだ。
驚くべき情報網もさることながら、Z李氏がカリスマ的なインフルエンサーとなったのは独特なワードセンスも理由のひとつだろう。本のタイトル『飛鳥クリニックは今日も雨』にもなっているクリニックは、歌舞伎町の片隅に実在するクリニックをイメージしているという。
「そこのクリニックは“新宿の住人”ご用達のクリニックなんだけどな。普通の病院に行けない事情があるとかそういうやつも差別なくみてくれる」
訳アリサイドのクリニックが今日も雨。物悲しくもどこかユーモラスな不思議な感覚になる。歌舞伎町をサバイブしてきたZ李氏ならではの視点だろう。
後編では「スシローペロペロ事件」を含めたネットの糾弾文化や、Z李氏、滝沢ガレソ氏などの人気インフルエンサーが“第3のメディア”として機能し始めていることについて聞く。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
『飛鳥クリニックは今日も雨』
Z李
3月22日発売
1650円
192ページ
978-4594094423
週刊SPA! 人気連載、待望の書籍化! 不夜城、眠らない街、東洋一の歓楽街。そんな言葉で表現される歌舞伎町の片隅で看板のない何でも屋を営むリーのもとには、昼夜を問わず厄介なトラブルが舞い込む。ポンジスキームと呼ばれる詐欺で荒稼ぎする詐欺師たち。それらを配下に収める暴力団。闇金業者に未成年売春シンジケート。彼らと激しく衝突し、時に共闘しながら時代を泳ぐリーには、忘れられない過去があった。
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