「スシローペロペロ少年」など過激化するネットリンチにZ李氏は何を思う。「ある意味、新しい監視社会になった」自殺志願者のDMに即反応して電話で相談にのることも
集英社オンライン / 2023年3月22日 18時1分
謎多きインフルエンサー、Z李氏。前編と中編では彼の稼業の実状やポリシーについて語ってもらったが、後編では社会とネットの関係について持論を追求。そして、“人間・Z李”についても迫っていく。
現代は新しい監視社会になっている
昨今、“スシローペロペロ少年炎上騒動”の例のように、インフルエンサーが取り上げた動画がネット上で話題となって大炎上。テレビなどの大手メディアにまで波及して社会問題に発展することも少なくない。
人気インフルエンサーがきっかけとなってネットリンチにまで発展するこの事象について、Z李氏はどう考えているのか。
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謎に包まれるZ李氏
「この流れはもう止められないと思うよ。ネットにあげるやつがバカなだけでその是非を問うても仕方ない。それに影響力のある人間が動画を拾ったから余計なリンチになったって思う人もいるかもしれないけど、俺や(滝沢)ガレソくんがあげなかったとしても初動の伸び方が違うだけ。結局、細かいアカウントから広がって結果は同じだったはず。だってあの動画、面白いもん。ペロペロしてんだよ?」
今年1月には、小田急線で寝ている女性の胸を隣の席のサラリーマン風の男が触っている痴漢動画がネット上で拡散された。
「歌舞伎町だって星の数ほど防犯カメラがついてるのに、それでも置き引きしたり、昏睡レイプまがいのことをしてるやつもいる。駅や電車で痴漢したら“撮られてるかもしれない”なんて時代よりさらに一歩先に進んでて、ネットで拡散されて人生が終わるような、ある意味で新しい監視社会ができてるんだよな」
この件に関しては、Z李氏も「常習犯と見た。拡散だなこれは。」とリツイートしている。どのような意図があるのか。
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「(自分のことは)ただのメディアだって思ってるよ。週刊誌を悪く言うわけじゃないけど、彼らも燃えそうだと思えば大したことじゃなくても記事にしてるし、その意味では同じだろ」
自殺志願者に電話をかけて相談に乗ることも
ネットリンチに加担するネットユーザーに対しても思うところがあるようだ。
「昔から掲示板にネトウヨってのがいるでしょ。鬱屈しちゃってもう何もないやつらな。そういうやつらは誰かを叩くことでしかスッキリできない。だからみんな誰かに石を投げたいんだよ。特にコロナ以降は全体的にネットに触れる機会が増えたからか、陰謀論や根も葉もない噂を都合よく解釈して盛り上がる人が多くなった印象だ。
『確証性バイアス』ってやつでさ、こうだと思い込んだら他の意見が耳に入らなくなってしまう。俺たちを巷で噂の連続強盗団の黒幕だなんて盛り上がってるネット民がいることにも驚くよ。安倍(晋三)さんの襲撃も俺たちが裏で糸引いてるとかさ。そんなわけないだろ。でもやつらはそう思い込んじまってるんだよな」
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話題となった歌舞伎町スリ犯もZ李氏が捕まえ、謝罪ラップを歌わせた後、出頭させた
その一方で、「死にたい」というDMを送ってくる人には積極的に対応する優しい一面も。
「これ言うといたずらが増えそうでイヤなんだけどな。特に『今から死にます』って連絡してくるやつには積極的に電話して、本気で死にそうなやつは30分とか1時間は話聞いてやってるよ。
死にたい理由で多いのは借金。そういうやつには『なんで返す前提で考えてんだよ。バカなのか。返さなきゃいいだろ』とか『俺は同じ歳のころはその3倍以上の借金があったぞ』と言ってる。後日お礼のDMがきて、『今度ご馳走させてください。それができる身分になれるようがんばります』なんて言ってくれるやつもいたな」
間違いなく美談だが、「俺の番号でかけてるわけじゃないから、いたずらで連絡してくるなよ」とドスのきいた声で釘を刺すことも忘れない。
正体は隠してない。公表してないだけ
#2で自らの名前の意味を“最後の駆け込み寺”と話していたが、まさにその通りだろう。Z李氏のTwitterアカウントには1日100件以上のDMが送られてくるという。もちろん、救いを求める連絡だけではなく、タレコミの類も多い。それをうまく発信すれば、自身の影響力が増すことにもつながる。
しかし、本人はTwitterを続けることに特に大きな意味を抱いていないようだ。
「俺はインターネットが決してうまいってわけじゃないからな。それにギャンブルの仕事も忙しい。オンラインサロンの会員を騙す結果にしたくないから、土日は必ず競馬を見てるし、平日も何かしらのギャンブルをしてる。1日3~4時間はその時間にあててるから、年間1500時間だな。私生活も充実してて忙しいんだよ」
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Z李氏が運営する「新宿租界」Webサイト
Z李氏がなぜ正体を隠すのかを聞いてみた。
「俺は別にあくまで素性を公表してないだけで、隠してるつもりもないんだよな。毎週のように、新しい人に会うし。もちろん、俺の正体について噂や推理遊びが楽しい人は勝手にやっててもらっていい。実際、歌舞伎町にいれば声を掛けられることもあるよ。ネットで自分の車とか自慢しちゃうこともあるから、そこから俺を見つけるんだろうな。
ガキが8人くらいで俺の車のまわりにいて、邪魔だから『俺の車を囲むな』って言ったら『Z李さんを待ってたんです』なんて言われたこともあったな。すごんだりなんてしてないよ。むしろ全員に1万円ずつ配ってやったよ」
時にはインフルエンサー、時には詐欺師を追い込むダークヒーロー、時には自殺志願者の良き相談役……様々な顔を持つZ李氏だが、今後何かやってみたいことはあるのか。その問いにZ李氏は、ふと思案顔になり、こう締めくくった。
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「俺の一番好きな本は『止まり木ブルース』(競馬評論家、塩崎利雄のドキュメント小説)。俺は『止まり木ブルース』の現代版の世界観で今、生きてると思う。だから、そうだな。これからは自分が思うかっこいい生き方をして、『止まり木ブルース』みたいに、いつか本にできたらいいな」
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
『飛鳥クリニックは今日も雨』
Z李
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3月22日発売
1650円
192ページ
978-4594094423
週刊SPA! 人気連載、待望の書籍化! 不夜城、眠らない街、東洋一の歓楽街。そんな言葉で表現される歌舞伎町の片隅で看板のない何でも屋を営むリーのもとには、昼夜を問わず厄介なトラブルが舞い込む。ポンジスキームと呼ばれる詐欺で荒稼ぎする詐欺師たち。それらを配下に収める暴力団。闇金業者に未成年売春シンジケート。彼らと激しく衝突し、時に共闘しながら時代を泳ぐリーには、忘れられない過去があった。
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