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お金も環境も豊かなのに暗い表情の日本人…「楽に生きる」マレーシア人が教えてくれた、堅苦しい日本で楽しく働くコツは「期待値を“60%”下げること」

集英社オンライン / 2023年3月23日 10時1分

「こうしなければ」「みんなと同じようにしなくては」そんな堅苦しさを感じる日本から離れ、マレーシアに11年在住する文筆家・野本響子さんに、マレーシアの人々から学んだ「楽しく生きるコツ」について教えてもらった。

お金も環境も豊かなはずなのに、暗い表情の日本人

——日本では生きづらさを訴えている人が増えている気がします。

日本で暮らしていた頃は、私も「こうしなくちゃ」と、緊張と不安感を持ってました。お金も「稼がなくちゃ」といつも思っていましたね。そんな中、オンラインチャットを通じてマレーシア人と出会ったことをきっかけに、休暇のたびにマレーシアへ訪れるように。明るい表情で過ごしている彼らにどんどん惹かれていきました。



不思議ですよね。日本の方が経済的にも環境的にも恵まれているはずなのに、日本人の方が表情はなぜか暗いのです。対照的なマレーシア人の軽やかさに希望を抱き、家族でマレーシアへ移住することになりました。

著者の野本響子さん

——実際に住んでみて、日本との価値観の違いはどんな点がありましたか?

マレーシア人はいい意味で「テキトー」に生きている人が多いと感じます。子育てをしている友人は、「学校が嫌なら転校すればいいだけ」と軽やかで、驚きました。

友人の家では、家事はお手伝いさんがやっており、なかにはキッチンすらない家もあり、毎日外食している家族も少なくないのです。マレーシアの町中には朝食専門のレストランもあるんですよ。

役所や公共機関で何か間違えがあったとしても、「まあ、間違いはお互いにあるものだよね」などと寛容なムードです。

私は移住前にその姿を見て、心底驚きました。これに対して日本では、マレーシアの人々よりも「ちゃんとしなくては」と思っては苦しんでる人が多すぎると思います。

与えられすぎる環境は、結果的に自らを縛りつけてしまう

——なぜ日本では息苦しさを感じるのでしょうか。野本さんの考えを教えてください。

ひとつの要因として、日本には「与えられすぎている環境」があると思います。社会保障制度が整っていて治安もよく、医療や公共交通機関も整備されています。今は物価が高騰気味とはいえ、世界的に見たら生活しやすい国です。

そしてこれらの制度や設備は、自分が働きかけなくても勝手に動いていきます。毎日時間通りに営業する店や、きちんと動くエレベーター、マニュアル通りにサービス提供されるレストランやホテルなど…挙げたらキリがありません。

すると「予定通りは当たり前なんだ」「保証があるのが当然だろう」と思うようになります。それどころか、不測の事態が起きると「ちゃんと予定通りに動いて!」と要求をぶつけるようになってしまうことも。

つまり、人は多くを与えられすぎると外にばかり目を向けてしまい、「なんで自分の常識とは違うのだ」と、他と比較して苦しむようになってしまう。それが今の日本人が感じる息苦しさの正体だと考えています。

——マレーシアは与えられすぎてない、ということでしょうか。

マレーシアには日本のような国民健康保険もないし、乳児の集団検診のようなこともしていません。ここまで与えられるものがないと、予測不能な人生について常に考え、選び、行動していかなくてはなりません。

パッケージツアーのような『おまかせ状態』で生きることが難しいため、むしろ、不慮の事態が起きた時に対応する力がついていきます。突然、翌日が国民の休日になることもあります。

——マレーシアの人々は、ビジネスの世界でも息苦しさが少なく、ラクに働いているのでしょうか。

実は、最近の調査では、日本と変わらず長時間労働しているマレーシア人もいることがわかっています。しかし、一緒に仕事をしてみると、コミュニケーションや物事の決定などが、非常にスムーズで驚きます。

マレーシアのビジネスシーンを見て何度も感じたのは、ひとつひとつの業務に完璧さを求めないんだな、ということです。日本ならではの完璧で計画通り、かつ敷かれたレール通りに手順を踏むというやり方と比較すると、だいぶ楽に感じますね。

もっと世界を知れば、ラクに生きられる

——日本にいてももっとラクに楽しく生きるためには、どんな視点があるとよいのでしょうか。

日本にいる時はつい「日本がスタンダードだ」と無意識のうちに思ってしまっていました。でも外に出てみて初めて「日本のほうがちょっとユニークで変わっているかも?」と感じられたので「日本がスタンダードではないかも」という意識を持つと、どこか心がラクになると思います。

それに「こうするとよくなるかも」という、普段とは違うアイデアも浮かんでくるかもしれません。だから、日本から一歩外へ出て、広い視点を身につけることをおすすめします。

また、マレーシア人はよい意味でプライドがないと思います。自国をスタンダードだと思わず、異国の人々から多くを学んで成長していく柔軟性があるんです。

仮にマレーシア人を「スタートアップ」に例えるなら、日本人は「大企業」かもしれません。大企業はどこか、過去の成功ばかりを気にして、失敗しないように業務を進めているところがありませんか?

もし日本で息苦しさを感じているのなら、スタートアップのように、ゼロから突き進んでいくような勢いを身につけてもよいかもしれません。

——忙しいビジネスパーソンでも、広い視点を身につけられる方法はありますか?

取り組みやすいのは、外国人のいるサードプレイスに身を置いてみることです。

日々を忙しく過ごしていると、どうしても思考がせまくなってしまいます。そこで、オンライン・オフライン問わず、外国人と触れあう環境を作ってみてください。英会話教室でも、友人の紹介でも何でもかまいません。きっと視野が広がります。

また、同じ日本人同士でも、世代が異なる人たちとコミュニケーションをとってみると、思わぬ新しい価値観や考え方と出会えるかもしれません。

ちなみに、子どもにグローバルな視点を身につけさせたい方も、同じように外国人の知人や友人を作るのがおすすめです。また、留学生のホームステイを迎え入れるのもよいでしょう。

身近に外国人がいる環境を作っておくと、いざ大人になったときに「日本が当たり前」とは考えにくいと思いますよ。

——日本では共働きで忙しい家庭も多い気がします。どうしたら毎日がラクになるのでしょうか?

我が家も共働きなので共感しますが、とにかく積極的に手を抜くことをおすすめします!

日本は男性と女性の役割分担が明確な国なので、どうしても「役割を全うしよう」という意識が強くなりがちだと思います。共働き世帯の増えたことで役割の境目はあいまいになりつつありますが、それでも「完璧」を求められる点だけは、根強く残っている気がします。

だからこそ、意識して罪悪感を持たず、役割へのこだわりを捨ててみましょう。おすすめは、お互いの家事や育児への期待値を「60%」に下げることです。60%です。ぜひやってみてください。

それに、夫婦それぞれの役割よりも大切なのは、大切な子どもたちが楽しそうにいること、そして自分たちも楽しむことではないでしょうか。家が多少汚くても、学校の持ちものを忘れても、親子で笑い合えていればハッピーです。

結局「楽に生きる」ということは、他者の違いを認識しながらも、互いの価値観やルールを尊重して認め合えることだと思います。そんな関係性を、会社や家庭で作っていけたら、日本にいても楽しく生きられるのではないでしょうか。

取材・文/永見 薫

『東南アジア式「まあいっか」で楽に生きる本』

野本 響子

2023/2/6

¥1,540

184ページ

ISBN:

978-4163916583

この本は、日本がなんだか辛いな、苦しいなと思っている方のための本です。
野本さんはマレーシアに家族で移住して10年。いまは海外教育や海外移住について書いたコラムやラジオ、講演会で大人気です。

一見不便で給与水準も低いのに、楽しそうな人が多いマレーシアという東南アジアの国。この国で学んだ人生を楽しく暮らす方法を紹介します。

野本さんは子どもを産む前、「こうすべき」が多い人間でした。
ー子どもが引きこもりになったらどうしよう
ー不登校になったらどうしよう
ーいじめられたらどうしよう

と不安でいっぱいでした。「子育ては親の自己責任で」とか「子どもをちゃんと育てられないのなら産むな」と言う人もいて、「そんなの産んでみないとわからないよ。きっついな」と思っていたそうです。そんな中で「嫌なら転校すればいいだけ」というマレーシア人や「子育てはテキトーでいい」とする日本人たちの存在は光明に見えたそうです。マレーシアに住んでみて気づいたのは、世界は自分が思ってるよりさらに広くて多様だということ。日本はかなりユニークで変わった文化だということでした。マレーシアに来て数えきれないほど様ざまな失敗をし、

―ほとんどのことには正解がない
―他人に期待しないと怒らなくて済む
―他人はコントロールできない
―精神のコントロールは自分でする
―白黒つけるのをやめる
―80%くらいの完成度で世の中に出す
―スピードの方が大事
―他人を助けると自分に返ってくる

といったことを現地の人々から教えてもらい、ずいぶん生きやすくなったそうです。
日本人は圧倒的に「ちゃんとしなくては」で苦しんでる人が多すぎる。しかし世界を見ると、そこまで厳しく緻密さや正確さは求められていないのです。海外進出する企業や学校教育の現場において、感情をコントロールすることの大切さをユニークな視点で書いたエッセイ。

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