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「確定申告をしたことがない」なぜヤクザは無申告でもバレないのか? ヤクザは基本、無職扱い。“親族のETCカード利用で770円詐取”で暴力団会長が逮捕される事件も

集英社オンライン / 2023年3月23日 11時1分

ヤクザの納税や確定申告事情はどうなっているのか。そもそも、基本的に無職扱いの彼らは納税以前に様々な社会的制約があるという。暴力団幹部や会長の嘆きから、ヤクザの金銭まわりの実態に迫る。

暴力団員のほとんどは無職扱い

3月15日をもって、今年も確定申告の期限が終了。
税金を払うのは国民の義務。しかし、この義務を果たさないのか、果たせないのか、そういう者たちがいる。反社会的勢力と呼ばれる暴力団やその構成員である“ヤクザ”たちだ。

とある暴力団幹部に確定申告をするかどうかを尋ねると、「そんなもん、しませんよ」と呆れた声で返された。「過去に(確定申告を)したこと? あるわけないじゃないですか。どうやって申告するんですか。オレ、無職ですよ」そう言って笑うのである。



確かに職業区分に「ヤクザ」はなく、彼らは一般的に無職といわれる。どこかの組の幹部が逮捕されれば、メディアでは「○○組幹部、無職」と報じられる。
暴力団組織は任意団体であり、法的に認められた法人格のある企業ではない。そのため組員は社員でも職員でもない。組織の構成員だが、自分たちが組織に上納金を支払う側であり、当然、属していても給料は払われない。
相続でも発生すれば別だが、無職である彼らは確定申告をしない。

国税庁

「稼いでいることが表に見えている者は、きっちり確定申告して納税している。ヤクザの中にも高額納税者はいる」という幹部の話を聞いて、2022年10月に岡山市北区の理髪店で六代目山口組系の暴力団幹部に襲われた池田組組長のことを思い出した。

池田組組長は山口組分裂の際、神戸山口組をその資金力で支えたと言われており、岡山県警などの推定によると資産の総額は300億円ともいわれている。それら資産は岡山県を中心とした不動産業等の、いわゆる“正業”で合法的に稼いだものだ。

「でも、そんな人間はほんの一部。暴力団組員のほとんどは無職だ。とはいえ、稼がなければ生きていない。みんな次は何が仕事になるのか、毎日探している。それくらいヤクザは金に苦しい」(前出、暴力団幹部)

ETCカードを使い770円を詐取したとして暴力団会長を逮捕

三代目山口組の田岡一雄組長は、組員に対して「正業を持て」と繰り返し言っていたといわれ、建設業や土建業で働いている者や飲食業などを営んでいる者もいる。
しかし暴対法や暴排条例により、どこも反社会的勢力と関わりをもったり取引を行わなくなった。おのずとヤクザは裏に回り、彼らの収入源も見えなくなった。

「正業を持っていれば、給料から源泉徴収されている者もいるだろうが、ヤクザは銀行口座がないという建前なんでね。どこかで働いていても、バイト代も給料も現金手渡しが基本。給料明細や振込みが記帳された通帳もない。だったら、わざわざ確定申告なんてしないだろう」(同)

組が何らかのシノギで儲け、その金を組員に分配したとしても現金手渡しだ。ヤクザが自らの収入を証明するようなものはなく、結果、確定申告をすることもない。

「銀行口座も持てない、カードも作れない、電話も契約できない。経済活動をやめろと言われているヤクザに『納税しろ』はないだろう。それどころかヤクザには人権もない。国民扱いされていないんだ。
ヤクザがお上に逆らってもロクなことはないのはわかっているが、さすがにそれはないだろうと思うこともある」と話すのは、ある暴力団組織の会長だ。

その会長が例に出したのは、大阪府警が今年2月、ETCカードの不正使用で六代目山口組傘下、秋良連合会の金東力会長、極粋会の山下昇会長、二代目章友会の新井錠士会長らを逮捕した事件。

「家族や親族名義のETCカードを使い、阪神高速道路を利用するため割引を受け、通常料金との差額をだまし取ったというんだが、その金額がたったの770円。一般人ならありえない」と、会長は声を大にする。
暴力団組員はETCカードを作れない。利用するには他の者のカードを使うしかないが、「ヤクザはそのうち高速道路も走れなくなる」(前出、会長)という。

「PayPayポイントを使った俺も捕まるのかな…」

3月には愛知県警が、六代目山口組傘下の司興業、町永拓彌副組長を逮捕した。某スーパーのポイントカードを作ったのが、詐欺容疑にあたるとして詐欺容疑で逮捕されたのだ。会員カードの約款に反社会的勢力の排除条項があったため、ヤクザと隠して入会したからということらしい。

「ヤクザはポイントカードも使えない。だったら今まで溜めていたポイントとかはどうなるんだ。この前、PayPayのポイントを使っちゃったよ。オレ捕まるのかな」と、会長は声を落として続ける。

「マイナポイントはどうなるんだろう? あれは国の施策だろう。国民全員にマイナンバーカードを持て、保険証と紐づけろ、そうしたら2万円分ポイントを付与すると言った。
だが、それが暴力団組員だったら国はどうするんだ。ポイントを付与したら、国が暴力団組員に利益供与することになるのか。
施策だからともらったとして、俺たちがそれを使ったら逮捕されるのか。それは国がおかしいだろう?」

会長の不満は止まらない。

「暴力団というだけで警察には狙い打ちされ、普段から人間扱いされない。犬畜生以下だと言われる俺たちが、唯一、人間扱いされるところがある。どこだと思う? 裁判所だよ」

前出の暴力団幹部も皮肉たっぷりに言う。

「逮捕されれば、警察でも検察でも犬畜生以下の扱いを受けるのに、裁判でだけはきっちり人間として扱われるんだ。しっかりと裁かれるためにな。ここでようやく人権回復さ。どうせだったら裁判所も犬畜生扱いで判決を出してくれるといいのにな」

“公共の敵”とされる彼らも彼らで、社会に対して言いたいことや不満はあるようだ。しかし、それでも彼らの肩を持ってくれる一般市民は少ないだろう。

取材・文/島田拓
集英社オンライン編集部ニュース班

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