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日系ブラジル人ギャングが語るコカインの単価、隠し方、送り先、売り方…。「ヤクザは覚醒剤、不良のガキどもは大麻、俺ら日系人が扱うのはコカインって棲み分けができてる」

集英社オンライン / 2023年4月14日 16時1分

近年、在日日系南米人による犯罪が増えている。なかにはギャングを結成して、組織的な犯罪を起こすケースも少なくないという。

日系ギャングの台頭

日本には現在、約30万人の日系人が暮らしている。その中には地球の裏側にある南米からの移民も多く、出身国はブラジルを筆頭に、ペルーやボリビアなどの出身者がいる。

メディアでしばしば日系人が犯罪を起こしているニュースを見ることがある。2023年3月にも、ブラジル国籍の人間が違法ドラッグで逮捕されたり、住居に侵入して100万円相当の品を盗んだり、ホテル代を踏み倒して従業員を車ではねて逃亡したりしている。その前の月には警察からパトカーを盗んだ者もいた。

もちろん、大半の日系人は法律を守り、きちんと生活をしている。ただし、ごく一部の人たちは、日本での生活に困窮する、差別を受けて考え方がゆがむ、あるいは最初から犯罪目的で入国するなどして事件を起こしている。


写真はイメージです

事実、東海地区の少年院では在院する少年の1割前後が日系人をはじめとした外国人で、刑務所の受刑者の中でも一定数を占めている。

私はこれまでこうした在日外国人の犯罪を度々取材してきたが、ギャングの構成員に話を聞くと、主なシノギは違法薬物である。しかも、そこには日本人を中心とした反社会的勢力との絶妙な棲み分けがなされているという。そこで、日本に20年ほど暮らすギャングの中心人物に話を聞いた。

「日本の暴走族はイキがっているだけ」

東海地方に暮らすカルロス(仮名)が日本に来たのは、9歳の時。祖国ブラジルで職を失った父が、先に日本に出稼ぎに来ていた。カルロスは母ときょうだいとともに、1年遅れて来日した。

ブラジルではスポーツに打ち込む少年だったが、日本に来てからは言葉が通じず、いじめに遭った。学校の先生もほとんど助けてくれなかった。カルロスはやる気を失い、非行の道に走る。

カルロスは中学の時に暴走族に入るものの、日系人であるがゆえにトップに就くことができないという壁にぶつかる。そのため、同じような日系人や東南アジアにルーツを持つ少年らを集めてギャングを結成した。当時のことをカルロスは振り返る。

「ギャングは15人くらいいたな。みんな子供時代に日本に来ているので、日本語が共通言語になっていたよ。最初は日本人を目の敵にして、暴走族つぶしとかをやった。暴走族の集会に乗り込んでボコボコにしてバイクを奪ったり、金を取ったりするんだ。日本の暴走族はイキがっているだけで、実際に根性ある奴なんていなかったから、ケンカで負けたことはなかったよ」

写真はイメージです

15歳~17歳くらいは、すべてこうした恐喝や強盗で生活が成り立っていたそうだ。それだけ悪の限りを尽くしていたのだろう。やがて18歳から1年ほど、カルロスは少年院に入れられることになる。この間にギャングは解散同然になった。

出院したカルロスは、建設系の仕事をやりながら、以前の仲間を集めてギャングを再結成する。日中は建設系の仕事をし、夜はメンバーで集まって悪事を働くということをしたのだ。

この時、彼らが手を染めたのが、コカインの密輸入と売買だった。カルロスは言う。

「日本には『家系』と呼ばれるドラッグの元締めがいる。母国にコカインの工場を持っていて、世界中に散らばる親族にそれを送って密売しているんだ。

たとえば、ペルーにAというボスがいてコカインの工場を持っていたとするだろ。Aはきょうだいや親戚をアメリカ、日本、台湾、イタリア、フランス、UAEなどに移民として住まわせる。

各国に散らばった奴らは、表向きはその国でレストランやリサイクル店なんかをやっている。けど、裏では、Aからコカインを送ってもらって密売している。このネットワークのことを『家系』って呼ぶんだ」

「コカインを売りさばくのは、クラブ」

カルロスは9歳で来日しているので母国にツテがほとんどなかった。そのため、日本にいる「家系」のBと仲良くなった。そして何年間かBの密売を手伝ったり、別のシノギを一緒にしたりする中で信頼関係を築き、祖国のAと取り引きすることを認めてもらった。

写真はイメージです

具体的には、カルロスが「家系」の元締めのAに連絡をして先払いで現金を渡す。すると、Aがコカインを日本に送ってくる。カルロスはそれを日本国内でさばく。おそらく、Aはカルロスから得た金を仲介料としていくらかBにも渡しているだろう。カルロスは言う。

「コカインはぼろ儲けだよ。1グラム2500円くらいで買って、それを2万円から3万円で売る。約10倍の儲けだ。『家系』の奴らは、世界中にコカインを流しているので、どこの国ではどうやればいいってことがわかっている。
送る時の最新の隠し方も把握している。日本の場合は100グラム以内なら荷物の中にうまく紛らして送れば問題ないと考えていたみたいだ。送り先も民泊予約サイトをうまく使ってやる」

問題は、コカインが送られてきても、どこに隠されているかは教えられていないということだ。荷物を受け取ったカルロスは、自分で荷物の中からコカインのありかを探さなければならない。

一番困ったのはシャツが送られてきた時だった。どこを切り刻んでも白い粉は出てこない。そこで「家系」に相談し、ある加工をして電子レンジで温めてみたところ、白い粉を手に入れることができたという。

「コカインを売りさばくのは、クラブだな。日本人はシャブや大麻が好きだけど、クラブに出入りする連中はよくコカインをやるんだ。あとは、日本にいる日系人もよく買いに来る。
裏の世界では、ヤクザが扱うのは覚醒剤。不良のガキどもが扱うのは大麻、そして俺らが日系人が扱うのはコカインってきちんと住み分けができている。お互いが他の領分を侵さなければ衝突することもない。
むしろ、俺らがコカインを売っている時に覚醒剤がないかと尋ねられてヤクザを紹介するとか、逆にヤクザが俺らを紹介するってこともあるくらいだ。ガキの時は日本人とぶつかっていたけど、今は仲良しだな」

ブラジル人よりも注意したいのが…

日系人の犯罪者全体の中では、圧倒的にブラジル人が多い。だが、ペルーなど少数派の人たちの方が「何が何でも稼ぐ」という気持ちで来日していることが多いため、道を外れる率、あるいは初めから悪事を働く目的で日本にきている率は高いそうだ。

「日系人でガキの時から日本にいる人間は、ずっと日本に住むつもりなので、いつかどこかで足を洗おうと考えている。みんなこっちで日本人の女と結婚しているしね。

けど、中年くらいで日本に来ていてワルをやっている人たちは、母国にネットワークがあるので、適当に稼いで帰ろうとか、逮捕されたら帰ろうと思っている人が多いと思う。それぞれの立場によって、日本でどう過ごすかが違うんだ」

写真はイメージです

日本では多文化共生の大切さが説かれて久しい。今後、日本に暮らす日系人はより増えていくだろう。こうしたギャングが生まれる背景には、日本の受け入れ制度や環境が未整備であることがある。そこを改善しない限り、カルロスのような人間は生まれるし、日本人の在日日系人に対する偏見もなくならない。

悪いことをした人間を逮捕し、強制送還したところで、もぐら叩きのような対症療法にしかならない。この多文化共生の時代に必要なのは、どうすれば在日外国人が非行に走らずに済むのかを考え、国として、社会として実行することなのである。

取材・文/石井光太

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