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〈トー横・少年少女一斉補導〉「親が株で失敗すると風呂に沈められ…」施設を抜け、生きる気力を失った16歳と13歳カップルの夢は「17歳までに…」トー横キッズ“しんどい子どもたち”の現実

集英社オンライン / 2023年3月27日 10時46分

新学期を前をにした3月25日の夜、警視庁は若者のたまり場となっている東京・歌舞伎町の「トー横」周辺で一斉補導を行い、少年少女30人を補導した。生きづらさを抱え、寂しさを埋めるべくトー横に集う少年少女たち。パパ活、違法ドラッグ、特殊詐欺の手伝い……。10代向けの食事提供のアウトリーチ活動会場で出会った少年少女の素顔に迫った集英社オンラインの記事を再公開する(初出:2022年12月29日)。

「ご飯」は子どもたちと繋がれる場所、
だから支援活動には欠かせない

12月10日新宿歌舞伎町のビル内にて、生活困窮世帯の子どもを中心に支援する団体CPAO(しーぱお)が主催した「ごはんとお医者さん〜出張医療相談会」。当日は、食事提供の始まった17時過ぎからひっきりなしに子どもたちが会場へと訪れていた。


22時を過ぎ、片付けに入ろうかという頃、3人の子どもたちが食事提供の会場を訪ねてきた。Eくん(16)とFちゃん(13)Gくん(16)だ。EくんとFちゃんは1日のうちに3度も会場へとやってきていた。聞くと仲間のGくんが腹を空かせているという。

このアウトリーチ活動を主催したCPAOの代表・徳丸ゆき子さんは『食事の提供や炊き出しは必須』だと話す。

ごはんが子どもたちと繋がるツールだと話す徳丸さん

「うちでは『まずは、ごはん』を活動ポリシーに掲げています。ごはんは子どもたちと繋がるツールなんです。炊き出しに来てくれた子たちが、何かあった時に私たちのことが頭に浮かび、SNSで助けを求めてくれる。困ったときに私たちを思い出してくれるような関係性を築きたいと思って活動しています。大切なのは、彼らの人生に大なり小なり関与すること。だから、ずっと関わり続ける覚悟が必要だと思っています」

他人に対して、何故、そこまで時間も労力もかけて支援し続けることができるのか――。記者の問いかけに徳丸さんは自らに問いかけるように、言葉を選びながら話した。

「そうですね……。私自身、学校に馴染めない子どもでしんどさを抱えて生きて来たし、シングルマザーとして一人親が子どもを育てるしんどさも味わってきました。だから、目の前にいるしんどい子どもに出会ってしまったら、関わらざるを得ないですよね。

でも、私自身、この活動をしていなければちゃんと子育てできていたかわからない、そんな気持ちもあります。救いながら救われているのかもしれません。大変でしんどいし、人間が嫌いにもなることもあるけれど、それを上回るほど嬉しいこともあるんです。困ったときに連絡してくれたり、関わった子が何とか自立できたり、活動に協力してくれるようになったり。そんな時にはこれまでの苦労が吹っ飛びますね」

炊き出しのフルーツ

徳丸さんから食事を受け取り笑顔をみせたGくん。会場の外で待つEくんとFちゃんは、二人してたわむれ合っていた。聞くと2か月前にトー横で出会い、現在“交際中”だという

施設の脱走を繰り返すホームレスのEくん

Eくんは、自立援助ホームに住む少年だ。自立援助ホームとは、なんらかの理由で家庭にいられなくなった15歳から20歳まで(状況によっては22歳まで)の子どもたちに暮らしの場を与える施設で、出所後は経済的にも精神的にも自立して暮らせるようになることを目的としている。現在、全国に240以上の施設があるとされている。
Eくんは夏頃からトー横に通うようになったという。

「実家を追い出された後、施設の脱走を繰り返しながらトー横に通っていた時期がありました。その時に万引きがバレて鑑別所に1か月いって、やっとトー横に帰ってきたんです」

現在も施設で暮らすが帰らないことも多く、半ばホームレス状態だという。

トー横に集まる子どもたち

Eくんは父と弟、そして祖父母と暮らしていたが、父と言い争いになった後、「家を追い出された」「その後は捜索願いも出されていない」と話す。父親は現在37歳。21歳の時にEくんが生まれたことになる。

「自分の父親ですか? 小さいころから株で失敗してたな。そうなると風呂に沈められたり、木に縛り付けられたり、蹴られたり。そんな記憶ばかり。いい思い出はないですね」

中学ではイジメを受け、今は学校も通っていない。トー横に来て彼女もでき、友達もできた。Eくんにとっては、家庭よりも施設よりも“幸せな場所”だという。だが、犯罪とも隣り合わせの場所でもある。

「大麻は7月ぐらいに初めて吸った。歌舞伎町でできた友達が、仲間だからとタダでくれた。僕はやったことないけど、特殊詐欺の受け子とか頼む大人もいるよ。5万円で頼まれて仕事したのに、結局その5万円をもらえなかった友達もいた。危ないことをさせておいて稼げないのはやばいよね。
あとはツテがないと出来ないけど、大麻の売買……プッシャーとか。ひとつのパケ運んで1万円、そういうのをやってる人もいる。捕まった人も見てきた。僕は身分証もスマホも持ってない。身分証あると、いろいろ悪い人になにかやらされたり、警察に補導されるし……」

広場で話を聞いたDくんも受け子で知り合いが逮捕されたと話していた。パパ活で稼げる女の子と違い、男の子が稼ぐ手段を見つけようとすると犯罪にグッと近くなる。
にもかかわらず、Eくんが広場に通う理由は「Fと会えるから」。

EくんとFちゃん

「いい将来見えないし、落ちぶれてくだけだよね。だから、自分と友達主催で過去に自殺サークル募ったこともあった。7人集まったけど喧嘩して失敗に終わったな。ねえ、F、将来は結婚して心中しよ‼」


Eくんが彼女のFちゃんに話しかける。
「うん、17歳までに死にたい。一緒にクスリしたあとTikTokして飛び降りようよ」
Fちゃんは笑顔でそう答えた。

「17歳までに死にたい」と話す13歳の少女Fちゃん

Fちゃんは10月頃からトー横に来るようになったが、まだ弱冠中学1年生だ。
学校はいじめられるため、ほとんど通っていない。茶道部での部活の際に、1人だけ道具が用意されていなかったり、物を捨てられたりしたが、先生たちも無関心だったため、学校から足が遠のいたという。

「母子家庭でネグレクトなんで。母親は今日も彼氏と会ってるから、うちには帰ってこない。なのに、門限20時とか言って干渉してくるし、捜索願出されたこともある。今日は門限に間に合わないから、もう帰らない」

母は現在31歳。Fちゃんは18歳の時に生まれた子だ。35歳になる父はフリーターでDV癖があり、Fちゃんも風呂に沈められるなど虐待を受けた。そのため両親は4年前に離婚している。見ると、Fちゃんの手が小刻みに震えていた。

「さっき広場でM(キッズの間で流行っている風邪薬)を1シート(10錠)飲んだ。ちょっと気持ち悪い」

このような市販薬に手を出したり、電車で新宿まで出たりするのにもお金がかかる。それはどのように準備しているのだろうか。

「案件(お金をもらって男性とデートをしたり、時に体の関係を持つこと)でお金もらったりしてる。話を聞くだけでお金くれる人もいて、それだけで1000〜2000円とかくれる。多いと5千円くれる人も。大体が話を聞いてほしいおじさんですね」

広場に集まるキッズたち

他には万引きをして欲しいものを手に入れることもあるようだ。もう少し年上になると大久保公園の周辺で“立ちんぼ”をして稼ぐ女の子もいるという。一時期、1回で5000円と相場が値下がりしたこともあったが、最近は持ち直しているそうで、公園周辺には多くの人が集まっている。
また、アプリを使ってこの場所で待ち合わせてパパ活を行うケースもある。だが、Fちゃんは立ちんぼやパパ活には手を出したくないようだ。

「コンカフェで働ける年齢になったら働いてみたいけど、そんなに生きるの無理かも」

コンカフェとはコンセプトカフェのことで、メイドや制服などのコスプレ姿で接客をするカフェバーである。接客を伴わない飲食店のため未成年者も働ける。
女性だけでなく、男性が働く店もあり、それは「メンズコンカフェ」略して「メンコン」と呼ばれている。
そのメンコンで働く男に襲われたのがGちゃんの“初体験”だった。立ちんぼやパパ活をしたくない理由は、初体験のトラウマにあるのかもしれない。

「ソイツはもともと『推し』だったんだけど、カスタマ(漫画喫茶)にさそわれて、そのまま打たれた(レイプされた)んですよ」

ひょうひょうと話すFちゃんにEくんも「襲われたけど、仲良いよな」と、笑顔で会話にはいる。少女たちの話では、レイプは珍しくないことだという。
だが、性行為があれば当然、望まない妊娠や性感染症の心配も出てくる。そして何より、心に深い傷を負う。もともと心に傷を負っている子が、さらに深い傷を負い、生きる希望を失っていく――。

炊き出し会場でくつろぐ子どもたち

「なんか最近毎日『死んでもいいや』って思ってる。Eと会えたから幸せだけど生きてるのがつらい。こうやってEと抱き合っているときだけ幸せ。愛を感じるよ」

Gくんが会場から出てくると、Eくん、Fちゃんは「寒いし、この後どうする? 友達の家にでもいこうか」とぼやきながら、夜の街へと消えていった。

同日深夜、警視庁が“トー横”周辺を一斉補導

この日の深夜、警視庁は“トー横”周辺の子どもたちに対して一斉補導を行い、中高生20人が補導された。毎年のように子どもが長期休みに入る前には、大規模な補導があり、それが報道される。だが、こうした補導に対して徳丸さんは次のように話す。
「補導されて、地元に移送されても、すぐにここに帰ってきてしまうんですよね。家の環境とかが変わっていかないと……」

補導された子どもたちFNNより

とはいえ、家庭環境を変えるのは非常に難しい。そのため、児童養護施設に保護されるケースもあるのだが、そのような管理型の施設だと居心地の悪さを感じてしまう子どももいる。

「搾取する大人がいない安全な場所、そして衣食住に困らない場所……。そんな居場所が必要なんです。そこで、中長期的に子どもたちと関わっていけるといいのですが」
対象が未成年であるために、徳丸さんらの支援の前には制度や法律が立ちはだかる。政治や行政と手を携え、“支援が必要な子どもにとって、本当に必要な支援とは?”を考えていかなければならないのだろう。


取材・文 集英社オンラインニュース班

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