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<長澤まさみ×前田哲>「長澤さんの最後の演技に、松山ケンイチさんが『震えた』と言っていた気持ちがわかります」前田監督も震撼したラストシーンの長澤まさみの表情

集英社オンライン / 2023年3月28日 12時1分

松山ケンイチと長澤まさみが初共演を果たし、連続殺人犯として逮捕された介護士と検事の対峙を描いた社会派サスペンス映画「ロストケア」。公開を記念し、長澤まさみさんと前田哲監督が本作、そして映画を語る。

長澤まさみ演じる大友秀美は、原作では男性だった

斯波宗典(しば・むねのり)は訪問介護センターで模範的な職員だった。常に被介護者に寄り添い、不幸があれば家族のように悲しむ献身的な勤務姿勢。介護士の鑑だと、誰もがそう信じていた。

そんな「当たり前」を疑ったのが、検事の大友秀美である。彼女は、斯波が所属するセンターで異常な数の死者が出ていることを突き止めた。事件を調べていくうちに浮上したのが、「善良な介護士」――斯波だった。



大友の取り調べで、斯波は40人以上もの被介護者の命を奪ったことを認め、犯行動機を「救い」と供述した。社会通念上、それは明らかな「殺人」であり、許されることではないと訴える大友は、仮面を剥いだ斯波の言葉に、戦慄を覚える。

「喪失の介護。ロストケア」

大友を演じる長澤まさみと斯波を演じる松山ケンイチが初共演した、3月24日公開の映画『ロストケア』は、葉真中顕原作『ロスト・ケア』(光文社文庫)とは異なる呼吸を持つ物語である。

メガホンを握った監督の前田哲にとって、本作の公開は10年越しの成就だった。2013年に刊行された原作を耽読してから映画化を熱望していた前田は、想いをこう綴る。

「介護だけじゃない、日本が抱えている問題が凝縮されていると感じました。葉真中さんが原作で描いた問題提起を、俳優さんの生の声でみなさんに届けたいと思ったんです」

原作にはない、映画の息吹。それは、大友役が男性から女性に変更されたことである。大胆とも思える決断の意図と、そこに長澤を抜擢した真意を前田が説く。

「例えば医師は男性、看護師は女性みたいな勝手なイメージを打破するために映画を作っているところもありますから。今作は40人以上も殺めた強烈な人物であり、『役が憑依する俳優さん』と評価されている松山さんを受け止め、対抗できうる俳優さんは『長澤さんしかいない』というのが、僕を含めたプロデューサーの想いでした」

そして前田は、本作における映画としての独創性と息づかいを、このように表現した。
映画とは、生き物である――と。

――今作『ロストケア』は、前田監督が10年間、温めてこられての映画化となりました。長澤さんは、撮影現場で監督の熱量をどのように感じましたか。

長澤 でも、ざっくばらんな、本当に優しい監督さんなんです。常に「元気ですか?」みたいなことを言いながら話してくれて。

前田 緊張感を邪魔してたかな?

長澤 すごくシリアスな作品なので、みんな緊張感を壊さないようにしてたんですけど、監督は全然お構いなしに(笑)。

前田 「長澤さんと松山さんの邪魔をしてはいけない」って、普段の現場より言葉少なめに。真面目にやってましたけどね。

長澤 そうなんですね(笑)。大阪の兄ちゃんって感じで、現場を温めてくれてましたよ。

「結果を出していただき、感謝!」

©2023「ロストケア」製作委員会

――緊張感のある現場の雰囲気を、うまく弛緩させようとしたんですね。そんな前田監督から見た、長澤さんの熱量はいかがでしたか。

前田 僕としては、長澤さんたち俳優さんに気を遣わせてはいけないな、と思っていたものですから。大友が原作と大きく変わっているんで、彼女がどんな生活をしてきたのかとか、バックグラウンドを設定するところから始まったんですね。そこから長澤さんに演じてもらった経緯があったので、非常に難しい役どころではあったと思うんです。でも、映画の結果はあくまでも表現です。その結果を出していただき、感謝!

長澤 はははは。ありがとうございます。

前田 こんな「感謝!」みたいな言い方、現場ではしてません。

長澤 してましたよ。笑顔でした、ずっと(笑)。陽気な監督さんでした。

――「映画は生き物」と表現する前田監督からこのような評価をいただいた長澤さんは、大友という人間を自分のなかでどのように落とし込んで演じられましたか。

長澤 「もうちょっと、こうしたほうがよかったかな?」みたいに、演じていく上で日々悩みはあるんですね。いつも「役に没頭したい」って想っているタイプなので、自分は大友ではないけれども、「彼女だったらどうするのかな?」って考えながら。自分では明確な大友のイメージがあったので、それに少しでも近づけられればと思いながら、演じていましたね。

――大友の「明確なイメージ」を、もう少し具体的に教えてもらえませんか。

長澤 具体的に答えるというのは難しいですが、大友という検事は「頭が切れて有能だ」っていう人物像が大前提にあったじゃないですか。大友の目線は映画を見てくださるお客さんの目線でもあるので「大友を信頼できないと、みなさんも物語に入り込めなかったりするかな?」と思っていました。

前田 大友には秘密にしているバックグラウンドがあるわけで、彼女の考え、悩み、迷いといった感情と、長澤まさみという俳優の想いがシンクロしたと、僕は思いました。

松山ケンイチが「震えた」長澤まさみのラストシーン

©2023「ロストケア」製作委員会

――大友と斯波の琴線が交錯する取り調べのシーンは、今作の重要な見どころです。まさに、前田監督が言う「俳優と役の想いがシンクロした」のではないでしょうか。

長澤 取り調べは、日を追うごとに……なんて言うんですかね、自分と大友の気持ちだったり、松山さんと斯波の想いというものが露呈していって、丸裸になっていくような展開になっているから。そういった意味で難しかったのは、取り調べが終わってから検察事務官と話すシーンで。
斯波という人間と向き合ったあとに、大友がふと素の自分になるというか、価値観が変わってきていると感じる瞬間はすごくリアルで、印象に残っていますね。

前田 事前に映画を見てくれた人からも「あのシーンはすごく印象に残ってます」って言われるんですね。僕自身が思っている「見えるもの」と「見えないもの」を表現するために、あの場面は「ワンカットで長澤さんを撮りたい」っていう意思があって。長澤さんはそこをしっかり形にしてくれました。

――監督として、最もインパクトがあった長澤さんのシーンを挙げるとすれば?

前田 最後です。あの、長澤さんの顔はもう……。ずっと抱えてきたものを解放した大友の表情に、長澤さんがなってたんですね。「アップで撮ろう」と、すぐカメラを構えてその瞬間を捉えたくらいでしたから。
あの演技に松山さんが「震えた」って言っていた気持ちがわかりますね。安っぽい表現ですけど感動したし、本当に「すごい」のひと言では収まらないくらいです。

――おふたりにとって「ロストケア」、もしくは映画とはどんな生き物ですか。

長澤 映画って全部映しちゃうんで、すごいなって思いますね。気持ちまで映るというか、なんかこう、自分では「集中できてなかったんだよな、このシーン」って反省していたとしても、人によってはそれがよかったりするみたいな。自分がよかった、よくないと思っているものが、必ずしもそうじゃなかったりするっていうのが芝居の難しいところであるし、いいところでもあるのかもしれません。

前田「ロストケア」に関して言えば、僕のなかではどんどん変化――成長していったっていう。蝶のように、卵から幼虫、さなぎになって飛び立っていくってイメージでした。繰り返しますけど、大友の最後のあの顔を撮れたこと。あれが、蝶になった瞬間でした。

取材・文/田口元義 写真/村上庄吾 スタイリング/stylist MIYUKI UESUGI (SENSE OF HUMOUR)


衣装/ブラウス¥60,500 トゥモローランド ビー/トゥモローランド 渋谷本店
パンツ¥88,000 バウト

『ロストケア』3月24日(金)全国ロードショー

ある早朝、民家で老人と訪問介護センター所長の死体が発見された。死んだ所長が勤める介護センターの介護士・斯波宗典が犯人として浮上するが、彼は介護家族からも慕われる心優しい青年だった。検事の大友秀美は、斯波が働く介護センターで老人の死亡率が異様に高いことを突き止める。取調室で斯波は多くの老人の命を奪ったことを認めるが、自分がした行為は「殺人」ではなく「救い」であると主張。大友は事件の真相に迫る中で、心を激しく揺さぶられる。

出演:松山ケンイチ 長澤まさみ
鈴鹿央士 坂井真紀 戸田菜穂 峯村リエ 加藤菜津 やす(ずん) 岩谷健司 井上肇
綾戸智恵 梶原善 藤田弓子/柄本 明
原作:「ロスト・ケア」葉真中顕 著/光文社文庫刊
監督:前田哲 脚本:龍居由佳里 前田哲
主題歌:森山直太朗「さもありなん」(ユニバーサル ミュージック)
音楽:原摩利彦
制作プロダクション:日活 ドラゴンフライ
配給:日活 東京テアトル ©2023「ロストケア」製作委員会 公式サイト:lost-care.com

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