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【漫画あり】月額2万千円のこづかいは「デフレ日本の絶望の象徴」なのか? 毎月限られた金額をやりくりする「こづかい超人」たちを描く漫画家・吉本浩二

集英社オンライン / 2023年4月3日 11時1分

漫画家の吉本浩二氏が月額2万千円で過ごす日常を描いたエッセイ漫画『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』。さまざまな工夫で人生を謳歌する“こづかい超人”たちの強烈なエピソードたちはSNSで話題となり、いつしか「デフレ日本の絶望の象徴」と呼ばれるほどに――。その制作の背景を聞いた。(前後編の前編)

限られたこづかいをフル活用する“こづかい超人”たち

――なぜ、「こづかい」をテーマに漫画を描こうと思ったのでしょうか?

「モーニング」(講談社)から自由に読み切りを書きませんかと言われたのがきっかけです。その打ち合わせで、僕が夜中にお菓子をコソコソ買いに行っている話をしたら「その話、面白そうですね!」と、軽い感じで決まりました。



ちょうど、人間ドッグで血糖値が高いと出たばかりで、ただの世間話だったんですけど、その読み切りの反響が割とあったみたいなんです。それで、2019年から連載となったという流れですね。

――もともとは、こづかいではなくお菓子の漫画だったんですね。

そうなんです。僕としては、こづかいの部分はなんとも思ってなかったんですが、“月額2万千円のうち、1万円がお菓子代”みたいな、こづかいの内訳グラフに食いつきがあったみたいで、こづかいにスポットあてた漫画がいいんじゃないかとこの形になりました

『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』

――吉本さん以外にも、限られたこづかいの中で工夫されている「こづかい超人」 の方々がとても魅力的です。

1話、2話と自分のことを描いて、こんな感じで行くのかなと思ってたんですけど、漫画を読んだ妻のママ友が「うちの旦那も2万円だよ」って言うんで、3話でその方の話を書いたんです。そしたら、意外とウチもウチもって身近なところがから広がっていったんですよね。

場所柄か、僕の住んでいる埼玉のご近所さんたちは、家のローンがあって、子供もまだ小さいので、こづかい制の人が多くいみたいで…。ライフスタイルが似ていたのかもしれません。

――逆に、ご自身の話だけではここまでできなかったかもしれないですね

それはありますね。あとは「旦那に2万千円しかこづかいをあげない悪い妻」みたいな感想もあったので、妻のこともしっかり書かないと公平じゃないと思いまして、4話で妻を出しました。それがここまで続いている感じですかね。

こづかいを創意工夫して使うそれぞれの努力

――駅の片隅で行き交う人々を眺めながら晩酌している、“ステーション・バー”の村田克彦さんは、特に強烈なインパクトがありました。

彼は幼馴染がモデルなんですが、僕としては割と地味な回だと思ってたんです。鉄道好きの人から駅で飲む人は結構いると聞いていたし、いわゆるエキナカのちょっとした居酒屋のひとつくらいに考えていたら、予想外の方向に広がっていって。分析がどこまで正しいかわからないけど、意外と同じことをやっている人が多かったんじゃないですかね。駅で飲んでるおじさんたちってそういうことだったんだ、みたいな(笑)

『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』

――ほかに、吉本さんの中で印象に残っている「こづかい超人」はいますか?

重複するんですけど、3話の筒木剛さんですかね。ほとんどの旦那さんは「俺はこれだけでいいから」って、こづかい制にしてるんですけど、おそらくこういうことなんだよなというのが、あの人のおかげで気づけました。おかげさまでこの漫画の骨格が作られたと思っています。ただ、特別に家族想いな方なので、3話目にして行きすぎた人が出てきちゃったかなとも思いますけど(笑)。

『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』

あとは5話でポンタカードについて教えてくれた工藤静男さんの回も反響がすごく大きくて、このおふたりにはすごく助けられましたね。

『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』

――漫画に描かれることは、みなさん好意的にとらえてくれているのでしょうか?

そうなんですよね。もしかしたら怒られるかも…と思う時もありますが、むしろ「ありがとう」とか「嬉しい」と言ってもらえて、出てくれた方の友達がモーニングを10冊ぐらい買ってくれたなんてこともあります。

そのときに、応募される方には、周りに好かれてる人が多いのかなと思ったんです。人に優しくて、友だちを大事にする人だから、小さな幸せを大事にできるんじゃないかなって。

――わかる気がします。「こづかい超人」の取材のとき、必ず聞くようにしていることはありますか?

「どういうときに楽しいですか」ということですね。「こづかい制でつらい」というのは本意ではなくて、こづかい制にして生活が楽しくなった話を描きたいので、そこが一番知りたいところなんです。

吉本先生が選ぶ名作お菓子ベスト3

――取材をした方の考え方に驚かされることはありますか?

いつも驚かされることばかりなんですが、最近だと5巻の最後に出てくる泉聖子さん。お金を使うと罪悪感が生まれるから、逆にこづかい制にしてここまで使うと決めたらすごく気持ちが楽になったという方なんですけど、自分とは真逆なのでお金の考え方にもいろいろあるんだなって思いました。

――作品に対する反響で意外だったものはありますか?

割とお子さんが読んでくれているというのが意外でした。妻の知り合いのお子さんは、お菓子が出てくるとすごく喜ぶみたいで。もしかしたら、子供も小遣い制だから、自分たちの仲間だと思ってるのかもしれないですね。僕のことをコージさんと呼んでるみたいですから(笑)。

――確かに、この漫画はお菓子がすごく美味しそうなんですよ。せっかくなので吉本さんの好きなお菓子3選を聞いてもいいですか?

……しょっぱ味と甘味で分けてもいいですか(笑)? しょっぱ味だとよく買うのは、『チーズあられ』(中村製菓)ですかね。あとは『サッポロポテト バーベQ味』(カルビー)とやっぱり『ポテトチップス コンソメパンチ』(カルビー)は買うよなぁ。 でも、それだとカルビーがふたつになっちゃうか。でも、しょうがないですよね……。

『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』

――甘いのはどうですか?

『黒棒名門』(クロボー製菓)は入りますね。あとはチョコ系でパッと出るのは『スーパーBIGチョコ』(リスカ)とか。あとはよく買うのだと『ルマンド』(ブルボン)とかになっちゃいますかね。『カプリコ』(江崎グリコ)も大好きだし、『クランキーチョコ』(ロッテ)も…。 あ、それでいったらアイスもあるか……いや、すみません(笑)

――いえいえ、どうせならアイスも別立てで3選お願いします!

やっぱり『エッセル スーパーカップ 超バニラ』(明治)が一番だと思います。あとは『チョコモナカジャンボ』(森永製菓)かなぁ。『パルム』(森永乳業)も美味しいですね。でも、全部味が似てますね。結局、チョコとバニラが好きなんだと思います。

『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』

こづかいのやりくりは「デフレ日本の絶望の象徴」なのか?

――ありがとうございます(笑)。その一方で、本作は「ディストピア漫画」や「デフレ日本の絶望の象徴」と呼ばれることもあります。これらの意見について、作者としてはどう感じていますか?

自分ではそういう漫画を描こうと思っていたわけじゃ全然なくて……ただ、確かにデフレだよなとは思いました。まあ、せこい話なのでしょうがないじゃないか、といったら元も子もないんですけど(笑)。でも、嘆いたところで今の時代を生きるしかないので、自分で楽しみを見つけていくしかないと思うんですよね。

あとは、ちょっとかっこいい言い方になりますけど、こうやって家族を養って頑張っている人たちがいるんだということを描きたかったんです。景気がどうこうじゃなくて「こういう幸せってどうですか?」というような。

『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』

――ちなみに、値上げラッシュが続いていますが、こづかい生活に影響はないですか?

もちろん、影響はあると思うんですが、こづかい制の人たちは、それはそれでまた工夫して楽しむんじゃないかと思うんですよね。たとえば、リサイクルショップが逆に充実したりして、こづかい生活的にはプラスの部分もあるような気がします。みなさん別に食費まで削ってるわけではなく、あくまでもこづかいの話ですから。

漫画『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』1~2話を読む(すべての漫画を読むをクリック)

取材・文/森野広明

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