VTuber・星街すいせい、医者に“高い声”を封印されていた!? “クールを通り越してサイコパス”と言われる配信者としてのもうひとつの顔とは
集英社オンライン / 2023年4月2日 10時1分
「THE FIRST TAKE」へ出演し、VTuber界屈指のシンガーとして、その名を広めた星街すいせい。シンガーでもある彼女のもう一つの側面、“アイドル”、“配信者”としての活動の魅力を掘り下げていく。〈後編〉
「アイドルを目指していた」わけではなくて
「アイマスに出たい」がきっかけ
――星街さんは「歌手」であり、ホロライブ所属の「アイドル」でもあります。なぜ、アイドルという道を目指されたのでしょうか。
アニソン歌手とか声優さんへの憧れを持っていたのですが、そのきっかけがデビュー前からハマっていたアイドル育成ゲームの『アイドルマスター』シリーズでした。
特に好きだったのが、2011年からサービスが開始されたソーシャルゲームの『アイドルマスター シンデレラガールズ』で、そこに出てくる高垣楓というキャラに惚れ込んでいまして……。
だから、厳密には“アイドルを目指していた”わけではなくて、“アイマスに出たい”と言ったほうがいいかもしれません。私はバーチャルな存在ですが、好きなアニメの登場人物として出られるわけではないので、現実的な方法として、アニソン歌手や声優さんを目指していました。
――星街さんのなかで、歌手とアイドルの魅力の違いは?
う〜ん、歌手というのはひとつの作品を作る職人的な部分が大きな特徴に思えますが、アイドルはひとつの作品を超えて“存在自体”がコンテンツになるお仕事という気がします。
だからこそファンの人はアイドルの一挙手一投足に熱狂してくれます。それってほかの仕事ではなかなか得られない経験ですし、それだけファンと日々多くのコミュニケーションが取れると思うのですよ。
私自身、歌手的な要素の強いお仕事と、アイドル的な要素が強いお仕事の両方をさせてもらっているので、その違いを日々感じます。
近すぎず遠すぎない…
星街すいせいの目指すファンとの距離
――そんな星街さんは、ファンがアイドルに本気で恋をしてしまう、いわゆる“ガチ恋”をさせない徹底したクールな姿勢も印象的。なぜ、この姿勢を貫いているのかも気になるところです。
これはシンプルに私の性格ですね。ファンの人から「愛しているよ……ちゅっ」みたいなコメントをされると「ギャー!」ってなっちゃうんですよ(笑)。
もちろんありがたいのですけど、そうしたコメントに同じテンションで返してあげられないというか、だからファンの人にも「私に過度な期待はせずに生きていてほしい」とよく釘を刺しています。
――「返してあげられない」というところに、星街さんの誠実さが表れているように思えます。
もちろん、そういう愛情表現に同じテンションで返してあげられる人もいますし、そういう人は本当にすごいと思います。でも、私は返してあげられない。返してあげられないのに思わせぶりなことはしたくないな、と。
私が目指したいファンとアイドルの距離感はそんな感じです! おかげさまで、私のファンはそのへんのことをわりと理解してくれているようです。
――星街さんのクールなスタイルをさらに印象付けている要素に、ハスキーな低音ボイスがありますよね。
実は声に関しては、最初は高い声だったんですよ。でも、配信業をやっていると歌手の人以上に、ほぼ毎日長時間喋り倒すことになるので、あるとき喉の調子が悪くなってしまいまして。それでお医者さんに「声の出し方を変えなさい」と言われてやむなく高い声をやめました。
配信で今の低い声を初めて出すときは、内心受け入れてもらえるかすごく緊張したのですが、ファン的にはあまり違和感がなかったみたいで、拍子抜けしたのを覚えています(笑)。
でも、今でもおちゃらけたりするときは高い声も出しますけどね。だから、歌のイメージだけで配信を見ると、びっくりするかもしれません。
愛称は“スイコパス”?
配信で見せる怖すぎる性格もファンを魅了している
――星街さんといえば、他のホロライブメンバーとのやりとりで見せる“性格”も特徴的です。ファンからは、“クールを通り越してサイコパス”とも称されていますが、どう感じていますか。
ファンからは“スイコパス”とか“サイコパすいせい”とか呼ばれているのですが、個人的には気に入っています。
きっかけは、2019年7月にホロライブメンバーが多数参加した『Project Winter』というゲームの大会ですね。このゲームは、閉ざされた雪山からの脱出をはかるサバイバーと、それを妨害するトレイターという役割に分かれた、いわゆる人狼的なゲームだったんですが、そこでトレイターになった私が容赦なくサバイバーを斧で狩っていったんです。
――配信拝見したのですが、逃げ惑うメンバーを笑いながら仕留めていましたもんね(笑)。
ゲームとかで相手を仕留めるときになぜか笑ってしまうんですよね。
でもあの配信で容赦なくなりすぎたのには理由があります。というのも、初めての大型コラボ企画だったので、不手際は見せられないと本番前から裏でめちゃくちゃ練習してから挑んだのですけど、その結果、上手くなりすぎてしまったんですよ!
――でも他の配信でも同じように“スイコパス”な行動を取っている気がするのは気のせいでしょうか……?
……確かに。シンプルに私の性格かもしれません。2022年7月にやっていた『RUST』という銃を使って相手の物資を奪い合うゲームがあるのですが、そこでホロライブメンバーの博衣こよりちゃんを仕留めて銃を奪ったら、倒れているこよりが「返して! 返して!」って悲痛な声で頼み込んできたことがありました。
なので、一旦助けて銃も返して、油断しているところをまた銃で撃ちました。快感でしたね(笑)。
「みこちと掛け合いしているときは
素が出ていることが多いです」
――星街さんを語るうえで欠かせない相棒として、先日「東京観光大使」にも選ばれた、“みこち”の愛称で知られる同期のさくらみこさんがいらっしゃいます。彼女とのコンビである「miComet(ミコメット)」も大人気ですが、星街さんから見たみこさんはどういう人なんでしょう。
みこちは、ピンク髪で赤ちゃんみたいな声が特徴のホロライブメンバーで、やることなすこと「コロコロコミック」の漫画みたいな人なんですけど、おかげさまでよくコンビでお仕事をいただいています。
そういう存在って、みこちが初めてだったので、配信ではいつもぞんざい気味に扱っていますけど、本当はとても感謝しています。
実は最初は特に仲よくなかったんですよ。というかあまり接点がなくて、お仕事で一緒になったのが始まりでした。今では“すいちゃん”“みこち”と呼び合っていますけど、当時は“すいせいちゃん”“みこちゃん”と呼んでいて、思い返すと笑っちゃいますね。
――お二人の掛け合いは息が合っていて、まさに名コンビという感じですよね。
趣味とかの共通点が少ないので、なぜ仲よくなれたのか不思議だったのですが、あるときみこちと話していたら、彼女が昔学校でギャルと仲がよかったのを知りました。そのギャルは思ったことズバッという人だったらしく、私も似たタイプなので、そういう部分の相性がいいのかもしれません。
あとは、たいしたことじゃなくても「うははは!」って大笑いしてくれるところが好きですね。みこちと掛け合いしているときは素が出ていることが多いです。
ただ彼女、私の持ち歌を自分の配信で舌足らずに歌いまくった結果、“みこちバージョン”ばかり話題になったことがあったので、そこだけ困っています(笑)。
「今度は私が橋渡しになれたら」
星街すいせいがVTuber文化に込める想い
――改めて、今回の「THE FIRST TAKE」への出演で星街さんを知った読者の方に伝えたいメッセージはありますか。
出演後、ありがたいことに多くのメディアの方に“VTuber界1の歌唱力”などと紹介していただけるのですが、私としては全然そうは思っていなくて、私なんかより圧倒的な歌唱力を持ったVTuberはたくさんいます。
それこそ、ホロライブの仲間たちのなかでも、ホロライブインドネシア所属のアユンダ・リスちゃんや、ムーナ・ホシノヴァちゃんなどは、すごい歌唱力を持ったVTuberですし、ホロライブ以外にもゴロゴロいます。そうしたVTuberをもっともっと紹介していきたいですね。
――かつて、歌衣メイカさんに取り上げられたことで注目を集めた星街さんが、今や同じ立場になったような形ですね。
個人勢だった頃の私は、歌衣メイカさんにピックアップしてもらったことで名前が広がりました。今度は私が次の世代のVTuberを知ってもらう橋渡しになれたら、少しはあのときの恩を返せるかな、と思いますね。今、私にとっての一番の目標は、VTuberを多くの人に知ってもらい、文化のひとつとして浸透させることなので。
――星街さんに興味を持ってくれた人に見て欲しいコンテンツはありますか。
「THE FIRST TAKE」から興味を持って“歌をもっと聴きたい!”と思ってくれた人には、私の曲のMVを見てもらいたいです。
そこからもう一歩進んで配信者としての私にも興味を持ってもらったのなら、みこちとのコラボ配信を見てくれると、私の人となりがわかると思います。
スイコパスな部分を知りたいなら、クライムゲームの『グランド・セフト・オートⅤ』とかですかね。
あとは、私『テトリス』が得意で、雑談しながらでも高速プレイができるのですが、そういうのも見てもらいたいです。
取材・文/TND幽介(A4studio) 画像/Ⓒ 2016 COVER Corp.
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