——『花より男子』が「最も多く発行された単一作者による少女漫画のコミックシリーズ」として、ギネス世界記録に認定されたそうですね。日本語版の紙の本だけで5940万9000部発行された、と。すごい数です。
本当に…すごくたくさんの方が読んでくださったり、購入してくださったりした、ということですよね。あらためて大変嬉しく思っています。
——電子版や海外版の発行部数も入れたら、さらにすごい数字になりそうです。世界中に熱狂的なファンの方がいらっしゃることに関しては、どう感じておられますか?
「まさかこんなところで!」と、遠い国で読者の方に会うこともあって。たとえばスペインへサイン会に行ったときも、皆さん熱烈に迎えてくださいました。
恋愛は普遍的なものなので海外の方にも伝わりやすいのかなと思うのですが、たとえば制服を着ていたり着ていなかったりとか、日本の高校らしい部分やディテールもちゃんと伝わっているのがすごく嬉しかったです。
【漫画あり】「最も多く発行された単一作者の少女漫画コミックシリーズ」として『花より男子』がギネス世界記録に。作者・神尾葉子「花男はマーガレットだから描けた」
集英社オンライン / 2023年4月20日 7時1分
累計発行部数6100万部を突破し、日本のみならず、海外の読者からも人気を集める少女漫画の金字塔『花より男子』。このたび、本作が「最も多く発行された単一作者による少女漫画のコミックシリーズ」としてギネス世界記録に認定されることになった。そこで作者である神尾葉子氏に、「マーガレット」・「別冊マーガレット」との出会いを振り返りながら、昨今の制作環境について聞いた。
「別冊マーガレット」に出会って
「こんな世界があったんだ!」と思った
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/03/28072637249443/800/1.png)
制服を着るつくしと、制服を着ないF4たち。日本の高校らしいおもしろさがここにも
——神尾先生は12年間「マーガレット」で『花男』を連載されたあと、『キャットストリート』を「別冊マーガレット」(以下、別マ)で、その後は『まつりスペシャル』を少年誌の「ジャンプスクエア」で、といったようにいろいろな媒体で連載されています。あらためて「マーガレット」および「別冊マーガレット」という媒体を振り返って、どんな雑誌だと思われますか?
やっぱり憧れですよね。私は中学生の頃に初めて「別マ」に出会ったのですが、「こんな世界があったんだ!」と驚きました。それまで少年漫画しか読んでいなかったので、「別マ」の世界に触れて「これはすごい!」と思ったんです。
だって「別マ」の作品に出てくるようなカッコイイ男の子は、リアルな世の中にはいないじゃないですか。でも、「別マ」の中にはいる。普通の女の子に、学校で1番カッコイイ男の子が告白してきてくれる。「ありえないな…」と思いつつ、すごく夢がありました。
——冷静さを持ちつつも、夢があると思いながら読めていたんですね。
はい、そこは切り離して(笑)。漫画を読むときは、もうどっぷりと「なんて素敵な世界!」と思って読んでいました。
——その後ご自身がマーガレットで連載するようになって、どんな雑誌だと感じられましたか?
「マーガレット」と「別マ」では、それぞれ違うイメージを持っていて。少し専門的なことを言ってしまうと、「別マ」は月1回発行で、1回45ページくらい。一方の「マーガレット」は、月2回発行で1回25ページ。なので、話の展開が全然違うんです。
「別マ」は、どちらかというと毎回読み切りを描いているようなイメージです。『花男』は、「マーガレット」だからこそできた作品だと思っています。
——なるほど。たしかに「マーガレット」はエンタメ性の強い『花男』にぴったりです。以前、神尾先生のマンガ像には「プロレスの存在が大きい」とお話しされていたことを覚えています。具体的には「カタルシスのあるお話が好きなのもそうだし、『もうダメだ』と思ったところで『起死回生!』という感じになるお話を描いてしまうのも、プロレスの影響だと思います」とおっしゃっていました。
はい、そうですね(笑)。
——『花男』はもちろん、次の連載『キャットストリート』も主人公の気持ちに寄り添いながらドン底から立ち上がる姿をじっくり描いていて、読んでいても力が湧いてきます。
ドラマチックなものを描くのが好きなんですよね。山があって谷もあるみたいな…平坦でないものが好きで、どうしてもそういう作り方になってしまう。淡々としたおしゃれな作品を描くことに憧れはあるのですが、私には描けなくて。
——エンタメに舵を切って描かれているので、読んでいてずっと楽しいですし、気持ちよく読み終わることができます。
ありがとうございます。そう思っていただけたらいいなと考えながら、描いていました。
やったことのないことを
やってみたくなる
——2015年から始まった『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』はアプリ・Web媒体の「少年ジャンプ+」での連載でした。それまでの紙媒体での連載と、どんな違いを感じましたか。
配信された瞬間に反応が返ってくるのがすごくいいなと思いました。あとは夜12時を過ぎたらその場ですぐに読めたりするので、より気軽というか、漫画が身近なものになりますよね。私もアプリで漫画を読んだりしますが、すごいことだなと思います。
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F4 の後輩たち「コレクト5」と江戸川音を描く『花のち晴れ』。同作には、つくしやF4も登場する
——ここ数年で漫画を描く環境も、読む環境もデジタル化が進みましたが、神尾先生は8年も前に「少年ジャンプ+」で連載を開始されています。今お話を聞いていてもそうなのですが、神尾先生は新しいものに対して、軽やかに取り組んでいらっしゃいますよね。
そうですね。Webで描くと言ったとき、実は周りの人たちからはかなり反対されたんですよ。当時はまだ「ジャンプ+って…?」という雰囲気だったので(笑)。
——その頃はまだ立ち上がったばかりでしたよね。
はい。でも私、新しいモノが好きなんです。やったことがないことを、どんどんやってみたくなる。電化製品も、新しいモノが大好きです(笑)。
——(担当編集)デジタル作画に切り替えて、カラーを描き始めたときにも、自分で描き方を調べたとおっしゃっていましたよね。
そうですね。漫画制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオペイント)」を開発している会社の方に、アシスタント全員と一緒に教えていただきました。
——デジタルに移行されたのは、どの作品からですか?
『まつりスペシャル』(2007年~)の途中からです。当時は「CLIP STUDIO PAINT」ではなくて、Adobeの「Photoshop」で描いていました。その後「CLIP STUDIO PAINT」に移行してからも、主線だけアナログのペンで描いて、仕上げはデジタルです。そうされている漫画家さんが多いと思いますが、液晶を使って描くよりも、ペンで描くほうが断然速いんです。線も生き生きとしますし。このやり方は多分、今後も変わらないと思います。
——昨今トレンドになりつつある「縦スクロール」の漫画については、どうお考えですか?
縦スクロールの漫画は描いたことがないのですが、読者としては、読みやすいなと思っています。ただ、漫画とはまた別物のような気もしますね。フィルムを送っていくイメージというか。新しいな、と思います。
——神尾先生の思う漫画は、「コマ割りがあるもの」ということでしょうか。
コマ割りがあって、開いたときに右ページにちょっと驚きがあるとか、そういうものが漫画っぽいなと感じます。私は見開きというフォーマットもすごく好きなので。
でも縦スクロールだと、いろんな言語に対応できるのがいいですよね。英語もそうですが、左側から読む言語だと、日本の右開きフォーマットでは読みにくかったりしますから。
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重要なシーンを1枚でドラマチックに見せてくれるのも、見開きならでは
——たしかに、ほかの言語では混乱しそうです。昔は画像を反転させて左開きにしたものもありましたね。
変則ゴマがあったりすると、特に読み方がわからなくなる方もいると思うんです。でも縦に進んでいくのなら、どんな読者にとってもわかりやすいですよね。
とりあえずやってみるか!と思いながら
新しいことに取り組んでいます
——今後やってみたいことや、決まっていることがあればお教えてください。
いろいろなコラボレーションのお仕事が決まっているのと、文章のお仕事も始めようと思っています。文章と絵を合わせたものを作ったり、原作をやったりしたいですね。実は脚本も書き始めていて…私、お話を考えるのが好きなんですよね。
——文字だけでお話を書いてみて、いかがでしたか? 書きながら、頭の中ではコマが割れたりしているのでしょうか。
たしかに、それはありますね(笑)。でも脚本の場合はセリフだけなので、「これでほかの方たちに伝わるのかな?」と思ったりします。漫画は、脚本も演出も監督も全部自分、みたいなところがありますよね。
漫画ばかり描いてきたので、大きなものの歯車の1つになるというのは、すごく新鮮で楽しいです。
——今でも新しいことにチャレンジし続けているのですね。
そうですね。でもいつも、とりあえずやってみるか!みたいな感じですよ(笑)。
『花より男子』第2話を読む
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![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/03/28073159900389/0/4.jpg)
『花より男子』(集英社)
著者:神尾 葉子
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/03/28065633293419/400/book.jpg)
1992年10月23日発売
484円(税込)
新書判/216ページ
4-08-848028-7
牧野つくしが入ったのは超金持ち名門高校。でも、そこはサイアクな所だった。F4ってチームが牛耳って、ちょっとでも歯向かうと集団イジメ! ぶち切れたつくしはF4の道明寺司にケリを入れてしまい…!?
文・インタビュー/門倉紫麻
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