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Z世代のファンも急増中。オリジナルグッズも絶好調な「ドムドムハンバーガー」が、“絶滅寸前”から復活できた理由

集英社オンライン / 2023年4月2日 12時1分

日本最古のハンバーガーチェーン「ドムドムハンバーガー」が、快進撃を続けている。一時期は業績不振に陥るも、SNS映えする独自商品や他業種とのコラボグッズを積極的に展開し、見事な復活を遂げた。一体、ドムドムハンバーガーに何が起きたのだろうか。運営会社である株式会社ドムドムフードサービスの代表取締役社長・藤崎忍氏に、復活の舞台裏を聞いた。

国内400店舗以上から30店舗程度に縮小

「ドムドムハンバーガー」は、1970年に日本で創業した老舗ハンバーガーチェーンだ。

もともとダイエーの子会社であるオレンジフードコートが運営していたこともあり、1990年代にはダイエー内を中心に400以上の店舗を展開。しかし、その後はさまざまなファストフードチェーンの台頭や、ダイエー自体の業績悪化に伴い、店舗数は徐々に減っていった。また、同チェーンの事業部は、複数の資本関係のもと、転々と変わっていくことになる。



2017年以降は、レンブラントホールディングスのグループ会社であるドムドムフードサービスが、その運営を担うようになった。当時は全国に36の店舗が展開されていたが、現在はさらに少し数を減らし、28店舗(ドムドムハンバーガー27店舗+ドムドムハンバーガープラス1店舗)が残っている。

2022年7月に東京都中央区銀座にオープンした「ドムドムハンバーガーPLUS」

そんなドムドムハンバーガーがここ数年、勢いを増している。カニを一杯そのままバンズに挟んだ「丸ごと!!カニバーガー」や、厚焼きたまごを挟んだ「厚焼きたまごバーガー」、バンズの代わりにカマンベールチーズでパティを挟んだ「丸ごと!!カマンベールバーガー」など、インパクトのあるメニューを数多く提供し、SNSを沸かせた。

こうした攻めの姿勢が功を制し、2021年3月期決算には黒字化を達成。翌2022年3月期の決算でも黒字を継続した。この業績V字回復の立役者が、2018年に代表取締役社長に就任した藤崎忍氏である。

「私たちは、“美味しいのはお客様との最低限の約束”というコンセプトのもと、それに準ずる商品であれば何でもチャレンジする方針を取っています。ファストフードのオペレーションとしては、誰でも作れるために簡単な工程であることが重要なので、そういった点でハードルはあるのですが、そういう事情を気にするのは辞めましょう、と。

今、“美味しい”はどんな店でも当たり前になっています。コンビニスイーツも本当に美味しいものばかり。なので、我々はそれ以上に価値のある商品を作らなくてはなりません。オペレーションも、価格も、見た目も気にしないでいいから、発想が凝り固まらないようにしようと常に意識しています」(藤崎社長)

株式会社ドムドムフードサービスの代表取締役社長・藤崎忍氏(写真提供/株式会社ドムドムフードサービス)

藤崎氏の就任によって何が変わったのか

2017年7月の事業譲渡の時点において、藤崎氏はまだ社外の商品開発顧問という立場だった。その約2ヶ月後に社員として誘われ、2018年8月に社長に就任。一方、ドムドムフードサービスの2018年3月の決算はマイナス。結果だけを見ればサクセスストーリーに見えるが、厳しいスタートでもあった。

藤崎氏は社長就任後、積極的にイベントに参加し、ドムドムハンバーガーに対して利用者が何を求めているのか、リサーチすることに着手したという。

「大手3社が86%の店舗数シェアを占めるハンバーガー業界で、私たちが消費者からどのように見られていて、何を求められているのかを調べることに注力しました。

たとえば、我々は小さなスーパーマーケットなどにも出店していて、地域のお客様に50年間もブランドを守っていただいておりました。400店舗あったチェーンが30店舗まで減ったら、普通は続けられないですよね。でも、長い間愛してもらったブランドだからこそ、こうした店舗が残っていると改めて理解したのです。

一方で、これは裏を返せば、クーポンや新しい取り組みをしたとしても、限られたお客様にしかアプローチできないということを意味します。となると、外に出てブランディングをしなくてはならないと考えました」(藤崎社長)

「イオン海浜幕張店」2階フードコート内にある「ドムドムハンバーガー イオン海浜幕張店」

ドムドムハンバーガーの復活には、どうやらこの藤崎氏流のブランディング方針が大きな影響を与えたようだ。

「普通のブランディングなら、私たち自身が『ドムドムハンバーガーって、こういうものです。ここを好きになってください』と発信するわけです。しかし、そうではなくて、あくまでお客様やスタッフの人生に寄り添って並走し、共感・共存することでブランドを育む––––––そういったブランドになろうと決めました」(藤崎社長)

多様なグッズ販売で新規ファンを獲得

その後、新型コロナウイルスのパンデミックが発生するも、藤崎氏の方針は揺るがなかった。これが結果的に、ドムドムハンバーガーの行く先を、明るい方向へと導く。一つの転機は自社マスクの販売だったという。

「コロナ禍において、まずはブランドとしてスタッフを守らなければいけませんでした。当時はまだマスクが品薄な状況で備蓄も無くなってしまい、それならばと自分たちで作ったわけです。

その後、お客様の中にもマスクがない方がいらっしゃるとわかって、社会貢献のつもりでレジ横にそっと置いて1枚350円で販売しました。すると、SNS等で非常に話題になってしまい、密を避けるため販売中止に。その後、マスクに関する問い合わせが殺到したので、急遽ECサイトを作りました」(藤崎社長)

コロナ禍で爆発的なヒット商品となったマスク

こうして10日ほどで、現在の自社ECサイト「ドムドムオンラインショップ」の原型が出来上がったという。その後は、マスク以外にも、さまざまなグッズが作成され、同サイトで販売されるようになった。サイトを開いてみると、アクセサリー、服、バッグ、レトルトカレー、雑貨など、他業種とコラボした多種多様なグッズが並んでいるのがわかる。

特に、マスコットキャラクターの「どむぞうくん」のぬいぐるみは人気で、ハンバーガーショップとしてのドムドムハンバーガーを知らない世代に対しては、こうしたグッズを入り口として、ブランドを知ってもらえるケースも増えているという。

Z世代にも人気を集めるドムドムハンバーガーのオリジナルグッズ。自社ECサイト「ドムドムオンラインショップ」にて販売中(https://www.domdom1970.com

アパレルコラボは「ブランドの姿勢を変えたかった」

公式オンラインショップの販売以外にも、これまで「BEAMS(ビームス)」や「niko and...(ニコアンド)」「coen(コーエン)」といった数々の有名アパレルブランドが、ドムドムハンバーガーとのコラボアイテムを販売してきた。

一方、こうした取り組みに対して、社内では反対の声もあったという。たとえば、2019年6月に「FRAPBOIS(フラボア)」からドムドムハンバーガーのコラボ商品が発売されたが、藤崎氏はそのときのエピソードを次のように話す。

「最初にFRAPBOISさんからコラボしようとお声がけいただいたとき、実は社内からはすごく反対されたんです。『ハンバーガー屋が洋服作ってどうする!』と。たしかにその通りだと思ったのですが、それでもチャレンジしたい理由が2つありました。

1つは、『お客様を待つ』という従来の姿勢を変えたかったから。もう1つは、マスコットキャラクターである『どむぞうくん』を商品にしたとき、どのようにブランドが認知されていくのか知りたかったからです。また、独自でいきなり商品展開するのは難しいですから、とても良い機会だと判断しました。結果として、これをきっかけにさまざまなブランドとのコラボが広がっていきました」(藤崎社長)

2019年に展開されたアパレルブランド「FRAPBOIS」とのコラボ商品

2022年に展開されたアパレルブランド「coen」とのコラボ商品

「店舗数よりも、オンリーワンであることが大事」

藤崎氏は独自の取り組みに関して「決して特別なことをしてきたわけではない」と強調するが、ドムドムハンバーガーの見事な復活劇の裏には、たしかな理由があることがハッキリと見える。マスク販売のためのオンラインストア開設が事業拡大の一つのきっかけであったとはいえ、もしそれがなかったとしても、同社はおそらく別の成功の糸口を掴んでいたに違いない。

藤崎氏は、ドムドムハンバーガーの今後の展望について、次のように語った。

「やはり、お客様とスタッフが喜んでくれることを続けていきたいですね。たとえば、今では月に1回、他社では見られないユニークなメニューを開発・販売するようにしています。また、コラボや物販に関しても、これまでどおりチャレンジを続けていきたいです。

店舗に関しては、数自体を増やすよりも、オンリーワンであることを目指しています。このハンバーガーが美味しいとか、お店の雰囲気が好きとか、スタッフの接客が好きとか–––––そういった面でお客様に愛されるハンバーガーチェーンとして展開していきたいです」(藤崎社長)

SNS映えすると評判の人気メニュー「丸ごと!!カニバーガー」

2023年4月1日より期間限定で販売されている「レモン香るアボカド海老カツバーガー」

ドムドムハンバーガーの現在のグランドメニュー

文/井上晃
写真提供/株式会社ドムドムフードサービス

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