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〈壱岐市・男子高校生死亡〉里親の激白150分「遺体を見たんですけど、骨一本折れてなかった。自殺は信じられない…事故だと思う」里子たちは継続して同じ里親に。地元住民・教育長がこの里親に信頼を寄せる理由

集英社オンライン / 2023年3月31日 19時51分

離島留学制度を利用して長崎県・壱岐島で里親の元で生活していた壱岐高校2年、椎名隼都さん(17)が失踪の末に遺体で見つかった“事件”。里親による「虐待疑惑」が報じられるなど、騒動の余波が広がっている。渦中の里親が集英社オンラインに胸中を激白した前半に続いて、後編でさらに掘り下げて検証していく。

椎名さんの里親は「人当たりは良くて社交的」

椎名さんを含めて7人の「里子」を預かっていた里親のAさんとはどんな人なのか。同じ地域に住む男性はこう語る。

「基本的には壱岐の広報活動に関連する仕事をしていて、いろんな人の講演会をサポートしたり、市議会や県議会の応援団長みたいなのもしていたし、地域の公民団長もしてました。


いろんな人と関わるだけあって人当たりは良くて社交的です。少年野球の応援にきたときは、預かっている留学生たちも連れてきて、みんなで一緒に声援を送っていましたよ。

留学生とも仲良さそうで、上手に育てているんだと思ってました。あの関係を見る限りでは、里親はぜひ続けたほうがいいと思います。言い方は悪いですけど、里親を頼りに留学してくる子は本当の家族との関係がうまくいってない子や、心の病気を患っている子もいて、島の生活でよくなれば、と預けられる子も多いと聞いています」

他の住民男性も好意的な意見を寄せる。

「お金のために里親をしてるとかネットで批判されてますけど、服装や車にお金をかけてるようにも見えないし、暮らしぶりが贅沢とは思えませんね。
むしろ留学生の子供たちがアウトドアを楽しめるように色んなとこに連れて行ってあげてたみたいですから。島での評判もいいですから、ネットでの書き込みには負けないで里親を続けて欲しいですね」

仕事で関わったことがあるという男性もこう証言した。

壱岐島

「以前、留学生たちの話を聞いた時に、海で一緒に楽しそうに遊んでいる写真を見せてもらいましたよ。海で獲った魚やタコをみんなで食べたり、自宅の庭でさくらんぼや桃を育てていて、子供たちもそれを喜んで食べてたみたいです。
亡くなった少年が内向的な子だったのなら、社交的で男らしいAさんとソリが合わなかったことも考えられなくもないけれど、だからと言ってAさんがぞんざいに扱うことは決してなかったと思います」

アウトドア活動は、Aさんと留学生たちをつなぐ大切なツールだったようだ。ここで再び、Aさんとの一問一答に戻ろう。

「本当はもっと一緒に遊びに行きたかった」

——隼都くんもアウトドア好きだった?

いつもは海にも隼都を連れて行ってたんですけど、同室になった子が海に行くくらいならずっとゲームしてたいってどこにもついて来ないから、来たばかりの子を一人にするわけにもいかなくて、隼都も一緒に留守番してもらってたんですよ。だから去年の4月からの写真には全然、隼都が写ってなくて寂しいです。
本当はもっと一緒に遊びに行きたかったですよ、4年も一緒にいますから。

それに小学生や中学生の子も隼都と仲いいから遊びたいわけですよ。それが急に留守番役になって、隼都が失踪してなんでこうなってしまったんだろうって家族みんなで考えていた時に、子どもたちは隼都ともっと遊びに行きたかったんだよねって。

――留学生に「お父さん」「お母さん」と呼ばせていたのは本当ですか?

そんなルールないし、自由ですよ。隼都のように「お父さん」と呼ぶ子もいれば、僕のニックネームに「パパ」をくっつけて呼ぶ子や「父」と呼ぶ子もいたり。最初は声をかけづらかったら「ねぇ」って呼ぶだけでいいよと言っているので、みんな自然と自分なりの呼び方をするようになるみたいです。

――朝の挨拶で声が小さいと叩くことがあったのですか?

そんなことで叩くとか怒るとかありえませんよ。ただみんなに「凡事徹底」の言葉と意味はよく聞かせてましたね。
おはようの挨拶を言えない子もいるじゃないですか。だから学校の行き帰りとか、島で人に会ったら挨拶しましょうって。壱岐では横断歩道はみんな手を上げて渡るし、高校生でも挨拶して歩いてるんですよ。
そういうのをちゃんとできるようにということです。これって何しに留学に来てるのかという話につながるんですよ。親元離れて自立するとか、そういう気持ちでしょと。

――やっぱり留学に来る子どもたちは、複雑な生い立ちだったり、心が不安定な子が多いんですか?

「いきっ子留学制度」HPより

色々いますよね、不登校だったとか、周りに馴染めないとか。うちにはまだいないけど、心の面で危うい子も増えてきてるそうで、そういう子たちの舵取りはすごく考えさせられますね。
実は中学生から留学していて高校生になってもそのまま壱岐に残ったのは隼都が第1号なんですよ。

――湯船に浸からせてもらえず、許されていたのは5分間のシャワーだけだったというのは事実ですか?

逆にこっちからその子にもちゃんと風呂入れよって言ってましたよ。多分ゲームがしたいからでしょうけど、ほんとすぐ出てくるんで。高校生にもなったら汗臭くなるんだからちゃんと入らないとモテないぞって言って。男子にはみんなちゃんと入れって言ってましたね。

「帰ってきたかったんじゃないかと…」

――失踪の数日前に、スマホを取りに寝室に侵入して、それが奥様にバレて「キモい」「怖い」と言われて叩かれたという報道がありました。

22日の「死にたい」(とスマホに残していた日)の前ですね。嫁さんが混乱しちゃってて、その日にそんなことあったのかちゃんと聞けてない部分もあります。
そのあたりからピークだったんですかね。警察からLINEだけ解除したとかで、スマホの他の機能の部分は知らされてないんですよ。

――「あれくらいでやめておけと言っただろう」と奥さんに伝えており、虐待を認識していたとの報道がありますが、この言葉はどういう意味ですか?

それは3月1日の件ですね。行かないと約束していた2階で隼都を見つけた嫁さんに呼ばれて、家に戻って話し合いをして。その時はもう怒るでもなく「あと1年で島出るんだからいい気持ちで出ていくようにちゃんとしようよ」って。
嫁さんにも、これ以上責めるんじゃないよというつもりで「もうこの話はせんでいいよ」と言い残して私は仕事に戻りました。

18時半に仕事が終わって嫁さんに連絡したら「隼都がいない」と言われて、方々探しても見つからない。それで「ちょっと待てよ、もしかしてもう話はせんでいいよって言ったのに隼都にあの後も言ったんじゃないか?』って嫁さんに聞いたら「そんな話はしてないよ、見送りの準備もあって忙しかったし」って言われたんですけど。
でも余裕がなくて僕は頭ごなしに怒ってしまいました。そのセリフが「何か言ったんだろう! あれくらいでやめておけと言っただろう」で。それは文春さんにもお話ししました。僕の伝え方が悪かったのかもしれませんが、記者さんなりのストーリーになってしまったのでしょう。

亡くなった椎名隼都さん(17)

――失踪中の目撃情報や捜索状況について教えてください。

失踪翌日の3月2日にうちの近くを歩いたという目撃情報があって、やっぱり帰ってきたかったんじゃないかと思いました。でも、1日の夜20時以降にはうちに警察が来ていて物々しい雰囲気で戻るに戻れなかったのかなと。
3日には一斉放送が流れて消防団数百人体制で捜索が始まった。

すごく記憶に残っているのは4日です。目撃情報があったのに、警察の取り調べで自分たちは捜索に参加できなかったんですよ。雷雨が鳴り響く嵐の日で、その日にもしかしたら命を失ってしまったんじゃないかと思うと悔しくて。

「隼都が自殺を選ぶわけがない」

——事故の可能性もあると。

実のお父さんと遺体を見たんですけど、骨一本折れてなかった。洋服は着たまま、片方のスニーカーだけ脱げていて、ふくらはぎに打撲の痕があったと警察に聞いた時に、海岸に逃げて隠れて滑って岩とかに足を打ったりしたのかなと思いました。
隼都は泳げないんです。海に遊びに行っても浮き輪がないと泳げないぐらいで。だから僕らの中では自ら死を選んだのではなく、逃げてる最中に滑ってしまったのかなって。だからこうやって話せるんですよ。実親さんも同意見でしたけど、僕も事故としか思えないんですよ。

――Aさんから見て隼都くんはどんな子でしたか?

不器用ですね、本当は自分の意思があるのに、まわりの目を気にしてそれを伝えられない、とにかく人を気にする子でしたね。
外では大人しいけど、家では意外と盛り上げてくれる一面もあって、誕生日会で仮装することもありました。留学したてのころに比べて地声が大きくなってることに気づいて、それを褒めたら喜んでくれたこともありました。

高校1年の時にダブルスのソフトテニスの試合で負けて、「負けたのは自分のせいだ」って、嫁さんの膝で泣いてたこともありました。感情を内に溜め過ぎてたまに爆発したりするけど、普段は自然に消化できる子でした。
でも今年の1月に同室の子が出てしまってからは、感情が消化されなくて抑えられなくなってしまったようでした。

ラケットを持つ椎名隼都さん

あとは褒められるのが好きだから、僕と隼都で交代制でやってた洗濯物の当番だけじゃなく、皿洗いもよく手伝ったり、みんなにも片付けしようと声かけもしてくれた。それが部活動でも表れていて、コート整備やボール拾いも一番熱心にやっていたみたいです。
中学2年の秋にこっちに来て、長い期間一緒に暮らしてきたんで、島内も島外も色々と一緒に遊びに行きましたし、僕の好きな釣りにも一緒に来てくれました。あとは上海に行きたいとかで中国語も勉強していて、ちゃんと目的を持って行動してたんですよね。

自殺を信じられないのはそういうところなんです。隼都がそれを選ぶわけがないというか。他の子たちも同じで自殺とは思ってないですね。21日にうちで通夜をして、23日まで隼都の部屋に安置して、24日の朝に実親さんと一緒に茨城に行って親族に挨拶とお詫びしてきました。



離島留学制度を担当している壱岐市役所教育総務課によると、Aさんがこれまで里親として預かってきた留学生は椎名さんを含めて18人。同課は聞き取り調査などをした結果としてこう答えた。

「異常はなかったと判断しています。実親さんや他の留学生からも体罰といった話は聞いたことがありません。実親さんから里親さんに対して『信頼している』や『安心して預けられる』という言葉をいただき、みなさんが同じ里親さんの継続を望んでいると、教育長からも報告を受けています」

※「集英社オンライン」では、今回の“事件”や里親にまつわるトラブルについて取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

Twitter
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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