昔の恋人のSNSをチェックする人は人間として成長できない……科学が証明している、やってはいけない習慣とは?
集英社オンライン / 2023年4月5日 17時1分
ストレスを低減し、パフォーマンスをあげるために科学が証明している、やってはいけない習慣がある。『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』(アスコム)より一部抜粋・再構成してお届けする。
人の悪いところに注目してはいけない!
「減点法」で人を見ていると
イライラが止まらなくなる
――― エラスムス・ロッテルダム大学ヴァンディーレンドンクとスタムの研究
人生には人間関係の悩みがつきものですね。その典型的な問題の一つが、上司や部下、嫁と姑、先輩と後輩といった上下の人間関係で起きる問題です。
たとえば、「上司のパワハラに、もう耐えられない!」とか「部下がとにかく人の話を聞いてくれない!」とか、立場が違えば見方は変わるもので、ふとしたことがきっかけで相手のことが嫌いになってしまいます。
そして、気づけば嫌いな部分がたくさん見えてきます。「話し方が嫌い」「食べ方が嫌い」「髪型が嫌い」……そうすると最終的には「顔も見たくない!」とか「同じ空気を吸いたくない!」というように関係はどんどん悪化していきます。そんな事態は、どうにか避けたいものですね。
そこで、まず認識していただきたいのは脳にはネガティブな情報のほうに価値を見出しやすい傾向がある、ということです。
この効果を「ネガティビティ・バイアス」と言います。心理学者のジョナサン・ハイトは自著『しあわせ仮説』でこのように述べています。
「人の心というものは、良い物事に比べて、同程度に悪い物事に対して、よりすばやく、強く、持続的に反応するということが心理学者によって繰り返し見出されている。私たちの心は、脅威や侵害や失敗を発見して反応するように配線されているため、すべての物事を良く見ようとしても、単にできないのである」
要するに、ネガティブな情報が気になるのはあたりまえのことなのです。
カリフォルニア州立大学デイビス校のレジャーウッドらは、実験参加者を2つのグループに分け、「新しい手術法」に対する評価を調査しました。1つ目のグループには「成功率は70%」とポジティブに説明し、もう1つのグループには「失敗率は30%」とネガティブに説明しました。
その結果1つ目のグループはこの新しい手術を良いものであると見なし、2つ目のグループは良くないと考えました。
次に、最初のグループに、「失敗率は30%」と伝えました。すると、彼らはその手術は良くないものだと感じるようになりました。 そして30%の失敗率だと説明を受けていたグループは、「成功率は70%」と伝えても、彼らの意見は変わりませんでした。
つまり、彼らが最初に抱いた手術に対するネガティブな印象は消えなかったのです。このようなメカニズムで、私たちはついネガティブな情報を注目して見てしまう、ということを忘れてはいけません。
人間には承認欲求があり、誰にでもある資質
その上で、解決法を考えてみましょう。人間関係の解決法は、「人を減点評価で見ない」ということに尽きます。つまり、私たちは放っておけば人のイヤなところばかり目についてしまうので、意識的にそこには目をつぶる、「悪いところではなく、良いところだけを見よう」と腹をくくることです。
100点の人間などどこにもいないのですから、減点法で嫌いになっていくのではなく、加点法をしていくことが、人付き合いをラクにする秘訣です。これに関連して、エラスムス・ロッテルダム大学のヴァンディーレンドンクとスタムによるこんな研究結果があります。
この実験では、答えを間違えると報酬が減る、いわゆる減点法で学習をさせた被験者たちと、最初から報酬のない状況で学習させた被験者たちからデータを取り、睡眠後の記憶定着率を比較しました。
すると、後者の成績(最初から報酬がない組)のほうが良かったというのです。また、心理学者のエリザベス・B・ハーロックが行った古典的な研究で、小学4年生と6年生の児童を、同じ教室で①いつも褒められるグループ、②いつも叱られるグループ、③褒められも叱られもしないグループに分けて、5日間にわたって計算問題をやってもらいました。
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結果、①の褒められたグループはだんだん成績が良くなり、②は最初だけ少し成績が上がったものの、だんだん下がり、③のグループは特に変化が見られなかったということが明らかになりました。
人間には承認欲求がありますから、「○○は褒められて伸びる子」というのは、誰にでも共通する資質のようです。そもそも褒められることがイヤな人なんていないでしょう。
ならば、減点法ではなく、良いところを見る、良いところを伸ばす、その方針を徹底することが、教育には必要なのでしょう。
過去を引きずってはいけない!
昔の恋人のSNSをチェックする人は、
人間として成長できない
――― オハイオ州立大学フォックスとハワイ大学トクナガの研究
人生には誰もが通る道がありますが、その一つが恋愛です。特に、「失恋」によるショックは大きく、できることなら味わいたくないですよね。
オハイオ州立大学のフォックスとハワイ大学のトクナガの研究によると、過去1年以内に失恋を経験し、自分も元恋人もFacebook に登録している大学生431人を対象に、どれくらい相手と親密だったか、代わりの相手を求めているか、失恋の痛手の度合いはどうだったか、元恋人の情報を見る頻度、などを質問する調査を行いました。
その結果、Facebook で元恋人のページを見て、近況やその交友関係などを調べている人ほど、元恋人への恨みや未練の気持ちを捨てられず、気持ちを切り替えて新しい趣味を持つなどの人間的な成長が見られないことがわかったというのです。
つまり、失恋で元気が出ない期間が続けば続くだけ、恋愛以外の生活においても新しいステップに一歩踏み出すことができなくなってしまうというわけです。
特に、相手から別れを切り出された(ふられた)場合ほど、その傾向は顕著でした。ふられたほうは、なかなか立ち直ることができず、未練タラタラ。よく見聞きする話ですね。
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/04/03013534524415/0/11.jpg)
実際、そういう身になってしまっている人には酷な話かもしれませんが、「縁がなかったと、さっさと切り替える」こと、「次」を見ることが重要なようです。
実験にあったように、SNSなどで元恋人の様子をチェックしてしまう人は、まずそれをやめることから始めましょう。海外ではそういう行動を「フェイスブック・ストーキング」などと呼んだりするそうです(なんだかその呼ばれ方だけで、そういうことをするのをためらいたくなりますね……)。
恋愛に限らず、執着すればするほど、そのことが頭から離れなくなってしまいますから、別の行動を起こすことで意識をそらすようにしてみましょう。
新しい習いごと、新しい出会い、新しい趣味などなど……その別れは人生に新たな風を呼び込むチャンスだと思って行動してみることです。
恋愛によるときめきは、脳にとても良い刺激を与えてくれ、がんばる力をもらえます。過去を引きずることなく、良い恋愛によって、人生に良い作用を起こしましょう!
『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』
(アスコム)
堀田秀吾
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/04/03011552015244/400/3338_002.jpg)
2022/12/1
1,540円(税込)
240ページ
4776212492
「やる気が出ない」「仕事がしんどい」「集中力がない」
そんな、なんとなく「元気が出ない」状態は、科学の力で解消できます!
本書では、ハーバード、NASA、東大など世界の最先端研究で明らかになった、「科学の力で元気になる方法」を厳選して38個ご紹介します。
・変なダンスを踊ると、落ち込んでいても元気が出る
(サンフランシスコ州立大学ペパーとリンの研究)
・背筋をピン! と伸ばして堂々と歩くとストレスホルモンが減少する
(コロンビア大学カーニーらの研究)
・20~30分のマイクロスリープで能力が睡眠前よりも34%向上する
(NASA (米航空宇宙局)ローズカインドらの研究)
・仲間同士の「愛ある注意」で途切れた集中力がよみがえる
(イェール大学ジューらの研究)
・身近な人が喜んでくれそうなことを1週間に5回行うと幸福度が高まる
(カリフォルニア大学リウボミルスキーらの研究)
などなど、ストレスを減らしてパフォーマンスを上げる、とっておきの方法です。
誰でも、どんな環境でもすぐに実践できることばかりなので、ぜひ「人生を元気に楽しむヒント」を見つけてください。
※本書は、2017年2月に株式会社文響社より刊行された『科学的に元気になる方法集めました』を改題し、加筆・修正したものです。
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