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タイトルに「〜」や「―」の大盤振る舞い! なぜ日本のドラマはカッコ付けたがるのか!?

集英社オンライン / 2023年4月10日 17時1分

テレビの一大コンテンツであるドラマ。視聴者を引きつける大事なタイトルには、その後ろに「〜」や「ー」で副題を付けるスタイルがなぜか目立つ。1990年代に増え始め、2000年代には当たり前となったこの習慣。そのきっかけはどこにあったのか? テレビ番組に関する記事を多数執筆するライターの前川ヤスタカが、ドラマ史を辿り、付けたがる心理と回避する昨今の動きを考察する。

ドラマの本タイトルに「〜副題〜」が付いた作品って気になりません?

2023年4月期のドラマで注目している作品がいくつかある。

日曜劇場『ラストマン―全盲の捜査官―』(TBS)や金曜22時『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS)。このあたりがとても気になる。



察しのいい方は気づかれたことだろう。本タイトルの後に「―」で副題が付いているドラマタイトルである。今回は「〜」や「―」などがついたドラマタイトルについて歴史を振り返りつつ、色々と考えてみたいと思う。

「〜」だと後でエゴサしにくいいので、本稿ではこの「〜副題〜」が付いているドラマを「ニョロ付きドラマ」あるいは「ニョロ」と呼ぶこととする。今期注目ドラマの「ー副題ー」のように「〜」ではなく「ー」のパターンもあるが、そういったものもひっくるめてここでは「ニョロ」とするので宜しくお願いしたい。

「ニョロ付きドラマ」のその始まりは1976年まで遡る

テレビの連続ドラマのタイトルで最初にニョロが登場したのは、調べた限りでは1976年の『大都会-闘いの日々-』である。『大都会』(日本テレビ)シリーズはPART IIIまで作られたが、PART II以後はニョロが消えている。

逆に80年代はドラマシリーズのPARTⅡ、PARTⅢでニョロが付くケースが増えた。代表例は『金曜日の妻たちへ』(TBS)シリーズでPARTⅡ、PARTⅢにはそれぞれ「男たちよ、元気かい?」「恋に落ちて」という副題が付いている。

このパターンは元々映画などでは歴史があり、有名な例だと『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』や『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』などがある。『北の国から』(フジテレビ)が単発ドラマで「’87初恋」「’89帰郷」とつけていたのもこのパターンの亜種といえるだろう。

とはいえ、80年代ドラマのニョロは『金妻』以外は『スケバン刑事』(フジテレビ)が目立つ程度で、数としては少なかった。

野島作品『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』が与えた影響

ニョロが本格的に増え出すのは90年代。きっかけとなったのは1994年の野島伸司脚本ドラマ『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(TBS)と思われる。

広く知られている話だが、このドラマのタイトルは元々は『人間失格』であった。しかし太宰治の遺族からの抗議もあり「人間」と「失格」の間に中黒が入り、さらにニョロが付くことになったという経緯がある。つまりやむを得ずニョロを付けたというわけだ。

しかし、このニョロ付きタイトルが妙に印象的だったからか、ここからじわじわとニョロが増えていく。『沙粧妙子-最後の事件』(フジテレビ)「いい日旅立ち〜4つの卒業〜」(フジテレビ)『オンリー・ユー〜愛されて〜』(日本テレビ)など、なんかメインタイトルだけだとちょっと足りないかなという時にニョロを付け加えるケースが1クールに1本くらいの頻度で出てきた。

この後も続く流れではあるが、基本かつ王道のニョロを付ける理由は、本題だけではちょっと内容がわかりにくいかな、少し具体的にしようかなという時である。

「いい日旅立ち」だと何のドラマかよくわからないけれど「〜4つの卒業〜」が付くと、卒業をテーマにしたドラマなのかなとわかる。そう考えると正直『オンリー・ユー〜愛されて〜』については、抽象的なタイトルに抽象的な副題を重ねていて、今聞いてもさっぱりドラマの内容の想像がつかないけれども(実際は鈴木京香と大沢たかおのラブストーリー)。

乱用時代の2000年代には大河にも「ニョロ付きドラマ」が進出

そして2000年代になるとニョロの数はさらに増え、1クールに2〜3本はあるのが当たり前になってくる。この頃はNHKの大河ドラマすら『利家とまつ〜加賀百万石物語』『江〜姫たちの戦国〜』などとニョロ付きが登場し、ニョロ乱用期に入る。

2000年代にニョロが増えた理由は複数あるが、一つは漫画や小説が原作の作品が増えたということが挙げられる。漫画や小説のタイトル作法とテレビドラマのそれは微妙に違っており、ドラマならこういうタイトルつけるのになあ、でも原作ファンも取り込みたいから原作タイトルも残さなくちゃなあ、の妥協点としてニョロ付きができる。『絶対彼氏〜完全無欠の恋人ロボット〜』(フジテレビ)『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス』(フジテレビ)『不信のとき〜ウーマン・ウォーズ〜』(フジテレビ)などが代表例といえよう。

原作アリのドラマ化にもたらした「別物感」という絶妙な効果

また、原作からドラマにするにあたり設定改変はつきものだが、その辺りの「別物ですよ」感を暗に匂わせるという効果もあるかもしれない。たとえば『アンティーク〜西洋骨董洋菓子店』(フジテレビ)『ロング・ラブレター〜漂流教室』(フジテレビ)『FIRE BOYS〜め組の大吾〜』(フジテレビ)などがその例だ。

ここで使われた聞こえのいい横文字+原作並記パターンはその後映画『ALWAYS三丁目の夕日』『STAND BY MEドラえもん』などに引き継がれていく。

もう一つパターンとして、同じ言葉をそのまま英語にしたり、時にはただローマ字にしたりするニョロもある。1999年にHysteric Blueの「春〜spring〜」という曲がヒットしたが、それに触発されてか『交渉人〜THE NEGOTIATOR〜』(テレビ朝日)『月の恋人〜Moon Lovers〜』(フジテレビ)などがドラマタイトルの世界でも生まれた。

この辺りになってくるとそもそも原作からしてニョロが付いてくるケースも出てくる。代表例は『JIN-仁-』(TBS)などで、ニョロがテレビドラマタイトルの枠を超えていろんなところに浸透していくのがわかる。

2010年代以降の全盛期。無駄でも止められないテレビ業界の悩み

2010年代以後はヘタをすると1クールのドラマの半分がニョロ付きというニョロ当たり前期に入る。

考察するに、テレビは老若男女わかりやすくあるべきという圧力が徐々に強まり、抽象的なドラマタイトルが付けにくくなっているという観点もあろう。その結果、無駄に具体的なニョロが付けられてしまうことが増えた。『弱くても勝てます〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜』(日本テレビ)の場合、気持ちはわからんでもないが、ニョロ以後が長すぎである。見なくとも内容がわかってしまう。

『デート〜恋とはどんなものかしら〜』(フジテレビ)『キャリア〜掟破りの警察署長〜』(フジテレビ)など、むしろその本題の方、いります?というケースもかなり増えた。もう日本のドラマ界はニョロなしでは生きていけない身体になっている。

ブームの反動でニョロ離れ?その意図を読み解くと…

そんなニョロ当たり前の現代。ほんの少しではあるが、徐々にニョロを回避するような動きも出ているように思う。

おそらくだが、ニョロが付いているとどうしてもイメージが分散してぼやけてしまうし、妥協の産物感も出るため、避けられるなら避けたいと思っている製作者もいるのではないだろうか。

たとえば、野木亜紀子脚本のドラマは『重版出来!』(TBS)『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)『アンナチュラル』(TBS)『獣になれない私たち』(日本テレビ)『MIU404』(TBS)など、ほとんどニョロが付かない。

坂元裕二脚本作なども、昔はともかく近年の話題作は『Mother』(日本テレビ)『Woman』(日本テレビ)『カルテット』(TBS)などついニョロを付けたくなりそうなタイトルが複数あるが、ニョロは付けていない。

これらが脚本家の意図なのか、組んでいる製作者側の意図なのかはわからないが、むしろ具体的すぎるイメージをタイトル段階で見せてしまうことをよしとしない流れはあるような気がする。2022年10月期最大のヒットドラマ『silent』(フジテレビ)なんかもその一つの例だろう。

大河ドラマと違ってなぜ朝ドラには付かないのか?

ちなみに大河ドラマが複数回ニョロに手を染める中、朝ドラのタイトルには未だに一つもニョロがついていない。もちろんニョロを付けないことについての公式な理由発表などないが、元々簡潔なタイトルを付けるのが慣習になっているのと、半年の長丁場で様々な展開を組み込む必要がある中、具体的なニョロ副題をつけるのはかえって足かせになるというのもあるのではないかと思う。

2023年4月期ドラマには、冒頭であげた2作以外にも『風間公親-教場0-』(フジテレビ)『合理的にあり得ない〜探偵・上水流涼子の解明〜』(フジテレビ)『自由な女神-バックステージ・イン・ニューヨーク-』(フジテレビ)といったニョロ作品がある。

まだまだ日本のドラマはニョロ頼みという状況は続いているが、今後も動向を注視していきたいと思う。いつか、この連載のタイトルにもニョロが付く日が来るかもしれない。

文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太

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