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「こんな人は一般の社会で仕事できない。でも、そんなのが議員に普通にいます」普通の人が、もっと普通に選挙に出られるようにするためにできることは? 地方議会で空気を読まずに暴れまわるふたりの政治家の提言

集英社オンライン / 2023年4月6日 11時1分

若い世代のなり手がおらず、著しい高齢化が進み、女性議員が極端に少ないないなど、問題の多い地方議会。4月9日に統一地方選挙が行われるが、現職の政治家はどう見ているのか。写真家で『おいしい地方議員 ローカルから日本を変える!』(イースト・プレス)が話題となった秦野市議会議員の伊藤大輔氏。2020年より広島県の安芸高田市で当時30代ながら市長となった石丸伸二氏。地方議会で空気を読まずに暴れ回るふたりが遂に邂逅。統一地方選挙を前に、地方議会の現状と未来への提言を語り合った。(前後編の後編)

ブラジルのスラム街での撮影と地方議会の議員の仕事の共通点は!?

――石丸さんも、伊藤さんも、昔から政治家を目指していたわけではなく、身近なふとした問題をきっかけに政治の世界に入られました。そのモチベーションは当選後も維持できているのでしょうか?

秦野市議会議員・伊藤大輔氏(左)、安芸高田市長・石丸伸二氏(右)

伊藤 3年半ぐらいやってきて、あまりにもしょうもないことを他の議員に言われたりするので、正直、疲れてきてはいます(笑)。でも、ここで僕がやる気をなくしたら、つまらない話で終わってしまいますからね。僕は兼業でやっているので、ほかの仕事で東京に行くことがリフレッシュになっていたりしますが、石丸市長は逃げ場がないのでかなりストレスがあるんじゃないですか?

石丸 僕は、割と丈夫にできている気がします。「市長、あんなこと言われてよく嫌にならないですね」って言われるけど、もちろん嫌なんですよ(笑)。罵詈雑言を浴びればそりゃ多少は傷つくけど、傷はすぐ塞がるんで。だから、面倒くさいなと思うことは多々あっても、市長選に出ようと思ったときから一定の熱はずっとありますね。

で、その熱の質というのも議会を重ねるごとに変わっていると思います。例えばなにか課題があったとして、右に行くのか? 左に行くのか? と思ったら、いや上かい!? みたいなことが多い(笑)。だから陳腐なたとえですけど、小学生のときに夢中でテレビゲームをやっていたときの「このハードモードを絶対にクリアしてやる」みたいな思いですね。もちろん遊びだとは思っていないし、市政を軽んじてるわけでもないんですけど、前職でも仕事に対して同じようなスタンスだったので、自分の中ではそれが職業人という感覚なんです。

伊藤 やっぱり向き不向きはあると思うんですよ。僕も正直、そういう刺激はエネルギーになるから、別に嫌いじゃない。だけど、石丸市長や僕みたいな人がいることで、次にやってくる人への風当たりを、もう少し柔らかくしてあげることはできるんじゃないかと思っています。

石丸 『おいしい地方議員』に収録されている(田村)淳さんとの対談で、伊藤さんはご自身のことを野球で言えば1番バッター、サッカーでいえばフォワード、つまり切り込んで突破する役割だということをおっしゃられていたと思うんですけど、今この局面での伊藤さんの役割があって、ほかの多くの人はそれに続くポジションなんですよ。それが全体として役割分担になっているというか。

伊藤 写真家としてブラジルのファベーラ(スラム街)に入って行くときと同じなんですよね。刺激だったり、ファーストペンギンとして新しいことをできることも含めて、その開拓していく感覚は嫌いじゃないですね(笑)

嫌われても言いたいことは、言い続ける!

――現状は、お二方とも孤軍奮闘のような状態なのでしょうか?

伊藤 僕はそんな感じで、完全に嫌われちゃってます。それでも言いたいことは、言い続けてますけどね。

石丸 伊藤さんのような方は孤立した方が燃えるぐらいのところがあるから大丈夫だと思うんですけど、ほとんどの方は自分ひとりだと、やっぱりやめておこうってなっちゃうんですよね。でも、そのファーストペンギン、最初に立ち上がる人がしばらく立ちっぱなしでいてくれたら、必ずそのうちに変わっていくはずなので「その存在がそこにある」というのがすごく大事な気がします。

「地方議会の改革は孤独な戦い」と話す石丸市長

伊藤 あとは今回の対談のように、横につながったりできれば、もう少し多くの人を巻き込んでいけるのかなとも思います。言いたいことを言うとやっぱり孤立しちゃうみたいなことはどこの議会でも聞くので、その孤立した人たちの寂しい気持ちって共有できると思うんです(笑)。

まあ、いまはとにかくあまり堅苦しく考えずに、もっと普通の人が選挙に出られるような流れが作れたらいいなと思いますね。

石丸 そうなんですよね。普通の人が、もっと普通に選挙に出られるようなるといい。 伊藤さんが本で「こんな人は一般の社会で仕事できない」「でも、そんなのが議員に普通にいます」みたいなことを書かれていたけど、そこも共感しちゃいました(苦笑)。「この人たち、一体今まで何をやってたの?」というのが日本の政治の実態なんですよね。

伊藤 いや、もう本当にその通りです。

石丸 だから、普通に自分の仕事をされてる方が、例えばボランティア精神だったり、人生経験として1期4年だけでも議員をやれるような社会になって、もっと流動性が増すといいなと思います。

伊藤 そうですね。僕らのような人間じゃなくても、政治はできるんですよ。もっと普通の人が来られるようにいま整えているところですね。

石丸 きっと、今くらいからだんだん政治って参加しやすくなっていくと思います。僕らのこの1期目の時代はまだまだ風当たりが強かったり、ものすごく環境が悪かったりするけど、確実に変化してきてるので、時間が解決するんじゃないかと楽観しているところも少しありますね。

普通の人が出馬した時の一番のハードルは!?

――そういった意味でも、今回の統一地方選挙に期待することはありますか?

伊藤 とにかくたくさんの人が選挙に出て、投票率が上がればいいなぐらいです。ただ、書籍を出したあとに全国から50名以上相談の連絡をくれた人たちがいるので、そういったところでなにか力になれるようなことがあったらいいとは思うんですけどね。

「投票率が上がれば、少しは議会も変わる」と話す伊藤氏

――少し先ですが、秦野市議選は今年8月27日が投開票となっています。

伊藤 本を読んで連絡をくれた人が何人か出馬してくれそうですし、とにかく選挙のハードルを低くしてやろうと考えています。供託金の話だとか、前回の選挙で実際にやったことなどの具体的な情報は本に書いているので参考にしてもらえたらと思いますが、実際に自分の選挙活動を振り返ってみて一番のハードルになるのはポスター貼りだと思うんです。

秦野市の人口は16万人で、市内269箇所にポスターの掲示場がありますが、選挙運動期間は一週間しかないので、単独で立候補した人にとってフィジカルな負担がとても大きい。でも、例えばそこを10人の候補者がそれぞれ分担して、27箇所ずつ貼れればすぐに終わるわけです。そこだけは一緒に乗り越えましょうよみたいなことは、具体的に考えていますね。

石丸 いいですね。ポスター貼りを相乗りするのはすごく合理的だと思いますし、それをやることによって間口がかなり広がる気がします。あとはそれぞれのできる範囲で、選挙カーを使いたい人は使えばいいですしね。いまはどの自治体も公費負担の制度が整っているので、派手なことをやらなければ、ほとんど自腹は無いですから。

明石市の泉(房穂)元市長が残した光明

――安芸高田市は広島県議選で現職の無投票当選となりましたね。

石丸 立候補する人が少なく、県全体としては正直盛り上がりを欠いていると思います。有権者に選択肢がないわけですから、私はやっぱり無投票が一番良くないと思っていて、市長や市議の枠を超えてうちの選挙区でもいかに無投票を減らして行けるか何か取り組みたいとは思ってます。実はその反省をすでにはじめているところです。

正直、この2年半、市長の仕事にもてんてこ舞いだったので、いわゆる政治活動がなかなかできていないんですよ。残りの任期、もしくは次があれば、その段においては安芸高田市だけじゃなくて、広島県全体、日本全体でどうしていこうかという政治活動がもっとできたらと思います。いま、明石市の泉(房穂)元市長が、色々と動かれてるじゃないですか。あそこまではできないにしても、ああいう風にちょっとでも輪を広げる努力をやっていきたいですね。

伊藤 僕も本を出してからちょくちょく連絡をもらってるんですが、ピン(一人)でやっているもので、それを政党のようにまとめあげる力があるわけでも無く、いまのところ啓発活動で終わっているんですよね。ただ、相談にのってもらいたいとか、興味はあるけど不安も感じているというような潜在層の方たちはいっぱいいらっしゃるんです。今日の対談はそろそろ時間ですが、実は石丸市長と話したいことがいっぱいあるんですよ。だから、今度は広島に行かせてもらいます(笑)

取材・文/森野広明

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