1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

貧血になると氷が欲しくなる? 脂肪肝にならないためには体重の10%を減らす? 健康のため知っておきたい予防医学の知識

集英社オンライン / 2023年4月12日 9時1分

貧血、脂肪肝などよく聞く体の症状には、どんな兆候があるのか? 予防方法は?など、森勇磨医師の『怖いけど面白い予防医学 人生100年、「死ぬまで健康」を目指すには?』(世界文化社)より一部抜粋・再構成してお届けする。

貧血になると氷が欲しくなる?

病気の兆候は、発熱や痛み、苦しさだけではない。ときに思いもよらない、とても意外な形で現れることがある。それらのひとつに、ある病気の症状として、あるものを異様に食べたくなることがある。

それは「氷」だ。
氷を無性に食べたくなる症状、と書いてそのまま“氷食症”と呼ぶ。「氷を食べたくなったから病気ではないか?」と前提知識なしに疑える人はなかなか勘が鋭い。

ちなみに、氷を食べたくなるといっても、夏の暑い時期にかき氷を食べたくなることをいっているのではない。氷食症になると、夏どころか、冬の寒い時期でも冷蔵庫で凍らせた氷をボリボリ食べたくなってしまう。


しかし、これは一体何の病気の兆候なのだろうか?

それは“貧血”だ。
貧血自体が病気というよりは、たとえばがんや、女性であれば子宮の腫瘍などで慢性的な鉄分不足による“鉄欠乏性貧血”という状態になることで、氷食症が引き起こされる場合は多い。なお普通に生理の量が多いだけでも貧血になるため、女性にきわめて多い症状である。

氷が食べたくなる現象と病気がまったく結びつかず、もはや習慣になってしまっている人もいる。

貧血はめずらしいものではない

メカニズムについては正確にわかっているわけではないが、貧血により口腔内に炎症が起こり、その炎症を和らげようとするため、という説がある。

一般の人がよく勘違いするのが、“校長先生の校庭での長話で倒れること”などを貧血と呼びがちなのだが、正確には、アレは神経の調節機能が崩れてしまうことが原因で、貧血云々はまったく関係ない。

貧血、特に女性の貧血は、産業医として社員の健康診断の結果を眺めていてもまったくめずらしいものではない。
身近に氷を異様に好む習慣のある人がいないか、あるいはあなた自身がそうなっていないか注意してみてほしい。

予防方法
軽い貧血の人は、ヘム鉄が多く含まれる食品(レバー、牛もも肉、かつお、マグロなどの赤身魚)や、鉄のサプリメントを定期的に摂取するとよい。
・ただしおおもとの原因があるのなら、その治療が必要。少なくとも健康診断でHb が1桁であれば、放置厳禁!

脂肪肝を放置するとどうなる?

肝臓はかなり多種多様な仕事をしている。アルコールをはじめとした体に不要な「毒素」の解毒や胆汁を生成する「工場」としての役割など。酒を大量に摂取したり、脂っこい食べ物を頻繁に摂取した際、人知れず肝臓は沈黙して仕事をしている。

そしてなんといっても「エネルギーの工場」としての役割も担っている。肝臓に貯められるエネルギーは大きく2種類にわけられる。

ひとつは“グリコーゲン”だ。
グリコーゲンは寝ているときや激しい運動でエネルギーがたりないときなど、比較的すぐ使うためにストックしておくためのエネルギーである。

そして、もうひとつがご存じ“中性脂肪”。中性脂肪はグリコーゲンとは違い、もし今後食事がとれなくなったときや、飢えの状態になってしまったときに使うため、長い目でみて安全策として溜めておくよう人間の遺伝子にプログラムされたものなのだ。

現代では、ほとんどの場合飢餓になることがないので不要といえば不要なのかもしれない。が、何が起こるかわからないし、そもそも人間の遺伝子でそのようにプログラムされているのでどうしようもない。

グリコーゲンは長く溜めておくものではないので、貯蔵庫のスペースはそこまで広くはない。余った分はどんどん中性脂肪として肝臓に溜められていく。

そしてこの中性脂肪がコツコツコツコツ蓄積し、肝臓の細胞の30% 以上溜まり、いわばフォアグラ状態になってしまった状態。この状態になれば“脂肪肝”の完成だ。

症状が出るまで時間がかかる

肝臓に脂肪が溜まること。一見するとこれは地震などの災害に備えて非常食や飲み物を備えておくようなもので、よい側面だけ見れば人間の体のなかでも不測の事態に備えたまっとうな機能に思える。
しかし災害時の非常食と違って、脂肪肝には大きなデメリットが存在する。それは放置しておくとボヤのような“炎症”が引き起こされることだ。この炎症を医学用語で“脂肪肝炎”と呼ぶ。

残念ながら、炎症が起きても特に知覚できる症状は起きない。そして炎症が肝臓の上で何度も引き起こされると、先述したマルチタスクをこなす有能な肝臓の細胞が死滅し、最終的に何度もかきむしったあとに硬化した皮膚のような状態になり、肝細胞としての機能を失う。

これを肝臓の「線維化」と呼ぶ。

ここまできてもまだ知覚できる症状は起きず、このまま肝硬変や肝臓がんの状態に移行し、おなかに水が溜まったり、または吐血をしたりしてはじめて異変を感じるものなのだ。

おなかの超音波の検査で指摘された脂肪肝、酒の飲み過ぎとして一笑してきた肝臓の数値の上昇。軽く考えがちだが、これらは言葉の響き以上に重みを持って受け取ったほうがよいだろう。

予防法
・自分の体重の10% の減量により、ほぼすべての脂肪肝が改善し線維化が改善したという論文(ManuelRomero-Gómez ,et al.Treatment of NAFLD with diet, physical activity and exercise.J Hepatol. 2017 Oct;67(4):829-846.)がある。「10%ダイエット」を目指そう。

・BMI が25以上の人、肝臓の酵素(AST、ALT)が基準値を超えている人は脂肪肝の疑いあり。お腹の超音波検査で確認しておこう。

『怖いけど面白い予防医学 人生100年、「死ぬまで健康」を目指すには?』(世界文化社)

著者 森 勇磨

2023年3月19日

1,870円(税込)

単行本:262ページ

ISBN:

‎4418234004

本書は今最も熱いテーマ、「80歳まで健康寿命を延ばす」ことを目指す方のための本です。
糖尿病やがん、心筋梗塞など、年を重ねるにつれ罹患する慢性疾患を回避するために
必要な知見「予防医学」を超人気YouTube「予防医学Ch」運営する現役医師が解説します。
病気になった後の世界や、人が病気になる仕組み。大病を避ける方法について
イラスト入りでサクッと理解できます。医学教養書ファンにも訴求する一冊です。
健康診断で気になる項目の詳しい解説、病名別インデックス付き。
第1章 病気になった後 五臓六腑を失った後の世界
第2章 病気になる仕組み 人間の体の中で起きていること
第3章 大病を避ける方法
付録 健康診断チェックシート

続きはこちら 怖いけど面白い 予防医学#2(4月13日9時公開予定)
続きはこちら 怖いけど面白い 予防医学#3(4月14日9時公開予定)
続きはこちら 怖いけど面白い 予防医学#4(4月15日10時公開予定)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください