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「10人に1人が胆石持ち」「激痛の尿管結石」…なぜ人間の体に石ができるのか? 予防医学を提唱する医師に聞いてみた!

集英社オンライン / 2023年4月13日 9時1分

胆石、尿管結石など、人間の体の中にできるさまざま石は、苦痛を与える。なぜ石ができるのか?予防方法はあるのか?などを森勇磨医師の『怖いけど面白い予防医学 人生100年、「死ぬまで健康」を目指すには?』(世界文化社)より一部抜粋・再構成してお届けする。

10人に1人は胆石持ち!

人間の体のなかではさまざまな場所に「石」が誕生し、悪さをすることがある。そのなかでも割と一般的に知られている石が「胆石」だ。
現在では日本人の10人に1人が胆石持ちという話もあるくらい、大変なじみ深いものである。

胆石のできるしくみはシンプルで、“胆汁”が凝集する、ただこれだけのことだ。
胆汁とは脂肪を分解するために肝臓で作られる紅茶色の液体のことだ。肝臓で生成されたあと、肝臓の下にぶら下がっている“胆のう”という小さな袋のなかに貯蔵される。


そして人が食事を摂った際、胆汁は胆のうから胆管という管を通過し、十二指腸という胃からの食べ物の通り道に排出され、食べ物のなかの脂肪を分解する手助けをしているのだ。

胆汁は胆のうのなかでスタンバイしていることが多いので、胆のう内で石化することが多い。胆石の約78% が胆のうでできるとされている。
そして、胆石は胆のう内でじっとしているぶんには、特に人間に害をおよぼさない。問題は、ふとした拍子に胆のう内から転げ落ちて、「胆管」と呼ばれる、肝臓と十二指腸の間の通路に詰まった場合だ。

この場合は激烈な腹の痛みとともに、発熱をしたり、腹の内部で重篤な感染症が引き起こされる場合がある。胆石によって通路を塞がれることで、感染症は急激に進行し、命を落とすこともある非常に恐ろしい状態だ。
胆石が詰まった場合の特徴的な所見がある。医師が仰向けで腹痛に喘ぐ患者の右の肋骨の下にスッと医師の手のひらを潜り込ませ、深呼吸を指示する。胆のうに炎症が起きていると、患者は深呼吸の際に激痛が走り叫ぶのだ。
これを「マーフィー徴候」と呼ぶ。

胆石になりやすい食事

また、天ぷらやトンカツなどの脂分の多い食事をとったあとも、胆汁が多量に分泌されるため、胆石が転がり落ちやすい。救急車で腹痛により搬送された患者に最後に食べた食事を聞くことは、この内容を確認する側面もある。

何はともあれ、できるだけこんな痛い思いは避けたいところだ。
我々ができるだけ体内に胆石を生成しないためにできることは明確だ。この胆石のリスクファクターは“4F”と呼ばれている。“F”はFatty(肥満)Forty(40代)Female(女性)Fertile(多産婦)の頭文字をとったものだ。
後半の3F に対しては対策のしようがないので、我々が胆石予防をうながすには“Fatty =肥満”の対策をすることになる。

●予防方法
胆石も脂肪肝と同じように、肥満対策が第一。
・流行りの「ファスティング(プチ断食)」など、夜14時間以上ご飯を食べないのは胆石のリスク。やりすぎは厳禁。
・魚油やナッツにリスクを低下させるという報告もある。地中海食を食生活に取り入れるのもよいだろう。


コレステロールの排泄もうながす
胆汁の役割は脂肪を分解することだと先述したが、もうひとつの役割が“コレステロールの排泄”だ。
肝臓で処理されたコレステロールは胆汁のなかに放り込まれ、そのまま十二指腸に投げ出されたあとは、食事とともに便となり体外へ排出される。

そして特に肥満の方の場合は内臓脂肪=肝臓に脂肪が溜まった脂肪肝の状態になりやすいので、まあ結局ダイエットしましょう、という話になる。

「脂肪肝」といわれるとあまり言葉にインパクトがないのだが、じつは体内では将来の病気を引き起こすためのあらゆる準備を“脂肪”が担っていることは、もう一度意識しておいたほうがよいだろう。

なぜ尿管結石はできるのか?

「医者から見て、この世でもっとも痛い病気はなんだと思いますか?」
このように聞かれることがある。「医者から見て」といわれても、医者は病気の“治療の専門家”ではあるが、“病気の経験”においては素人なことが多い(夜勤も多く、喫煙者も別に少ないわけではない職業なので、生活習慣病を複数抱えている不養生タイプの医者も珍しくはないが……)。

医者だからといってさまざまな病気を経験しているわけではないので、少し答えを出すのに時間がかかるのだが、みなさんの痛がり方を見ていると“痛い病気”の二大巨頭は尿管結石と痛風ではないだろうかと思う。

特に尿管結石は、未治療であれば再発率が50% というデータも存在する怖い病気だ。

夜中の救急外来にて
夜の患者さんもいち段落した夜中の救急外来で、ポツりと救急隊からの電話が入る。
「44歳男性、腰背部痛です、受け入れ可能でしょうか?」

救急車の受け入れを許可して10分後、背中を「く」の字に丸めて、大量の冷汗をかきながら救急車から1人の中年男性が運ばれてきた。
これは……と思い背中に超音波の機械を当て、腎臓の様子を確認すると、腎臓の中に水が溜まってふくれている。

この状態を“水腎症”と呼ぶ。尿管結石のときに起きる現象だ。腎臓の下の管に結石がつまっているので、水の流れがせきとめられて腎臓の内部に溜まっているのだ。
会話もままならない患者のため、看護師にお尻の穴から鎮痛剤の挿入を指示した。こんな光景は救急外来では日常茶飯事である。尿管結石では大の大人がベッドの上でのたうち回り、会話もままならない状態になることがある。

なぜ尿管結石ができるのか

基本的な治療法は、ひたすら水を飲むことだ。腎臓の下の尿管という管に詰まった石を水分で押し込み、膀胱に落ちるのをじっと待つしかない。「なぜこんな石に自分ばかり苦しめられなければいけないのか?」
尿管結石の経験者たちは恨み節を語る。「なぜ尿管結石ができるのか」と問われれば、中学の化学の授業の話からしなければならない。

H+ + Clー → HCL
水素イオン 塩化物イオン 塩化水素

あなたはこういう式を覚えているだろうか。陽イオンと陰イオンが結合して、中和反応が起こる式だ。
この現象が人間の体のなかでも起きている。尿管結石は腎臓でカルシウムとリン酸やシュウ酸が結合して、固体化してできたものだ(式は割愛する)。
シュウ酸はホウレンソウなどに多く含まれる。水に溶けるので、ホウレンソウはしっかり茹でてシュウ酸を逃がしてから食べるのがよい。

カルシウムは一定量摂取

そしてこの話をするとお相手のカルシウムも控えたほうがよいかと思われがちだが、じつは逆だ。カルシウムは一定量摂取したほうがよい。
最初は意味がわからないと思うが、理屈としてはこうだ。
カルシウムもシュウ酸も、腸で吸収されて腎臓に運ばれる。そして、カルシウムをしっかり摂取しておけば、先に腸でシュウ酸と化学反応を起こしてくれる。そうなると、腸で吸収されずそのまま便となって排出されるのだ。

現に9万人のデータを対象にしたアメリカの研究でも、食事からカルシウムを多く摂取していた人のほうが、結石ができにくかったという報告もある。

●予防方法
・カルシウムを多く摂ること。1日600-800mg のカルシウム摂取が推奨されている。
・クエン酸は尿の中でカルシウムと結合して、結石ができるのを防いでくれる。梅干し、レモン、カシスなどのクエン酸が入った食べ物も効果的な場合がある。
・尿酸値が高い人はしっかり下げる取り組みを。


大体1日600 ~ 800mg のカルシウム摂取が推奨されているが、これがなかなか意識していないと難しい。日本人のカルシウムの平均摂取量は505mg とかなり少ない。骨粗しょう症などへの影響も含め、「カルシウム摂取」はさまざまな観点から優先順位的にはかなり意識を強めるべきなのだ。

また先ほどの救急車の例のように、尿管結石は夜中に多い。寝ているときは体内の水分が起きているときより不足して、少し脱水気味だからだ。

●予防方法
当然ながら水分摂取になる。1日2リットルの水分摂取をおこなった場合、5年間の再発率が15% 低下したというデータも存在する。

繰り返す尿管結石に苦しめられている人は、ひたすら体内に水を投入することが大事。

『怖いけど面白い予防医学 人生100年、「死ぬまで健康」を目指すには?』(世界文化社)

著者 森 勇磨

2023年3月19日

1,870円(税込)

単行本:262ページ

ISBN:

4418234004

本書は今最も熱いテーマ、「80歳まで健康寿命を延ばす」ことを目指す方のための本です。
糖尿病やがん、心筋梗塞など、年を重ねるにつれ罹患する慢性疾患を回避するために
必要な知見「予防医学」を超人気YouTube「予防医学Ch」運営する現役医師が解説します。
病気になった後の世界や、人が病気になる仕組み。大病を避ける方法について
イラスト入りでサクッと理解できます。医学教養書ファンにも訴求する一冊です。
健康診断で気になる項目の詳しい解説、病名別インデックス付き。
第1章 病気になった後 五臓六腑を失った後の世界
第2章 病気になる仕組み 人間の体の中で起きていること
第3章 大病を避ける方法
付録 健康診断チェックシート

続きはこちら 怖いけど面白い 予防医学#1
続きはこちら 怖いけど面白い 予防医学#3(4月14日9時公開予定)
続きはこちら 怖いけど面白い 予防医学#4(4月15日10時公開予定)

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