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がんになる人の4人にひとりは感染症が原因。ピロリ菌、肝炎ウイルス、性行為でうつるウイルスも

集英社オンライン / 2023年4月15日 10時1分

日本人の4人にひとりががんで亡くなっているが、感染症が原因ということが多い。どんなウイルスががんを引き起こすのか? 予防方法はあるのか?森勇磨医師の『怖いけど面白い予防医学 人生100年、「死ぬまで健康」を目指すには?』(世界文化社)より一部抜粋・再構成してお届けする。

がんを引き起こすウイルスたち

がんは遺伝や悪しき生活習慣によって引き起こされる。
しかし、がんに“感染症”の側面があることは意外に知られていない事実だ。しかも、がんのなかで4人に1人はこの感染症が原因だとされているのだ。
感染症、という言葉を聞くとなんとなく風邪や胃腸炎、はたまた新型コロナのように「急にかかって、短期間で治っていく」タイプのものが頭に浮かびやすいと思う。


しかし、じつは感染症のなかには、明確な症状として自身の存在を人間にあからさまに伝えず、ひっそりと体内の臓器に対して悪さをしていく類のものが存在する。

胃がんの原因になるピロリ菌

代表的なものがピロリ菌だ。
ピロリ菌は、衛生環境の悪い水を飲んだことなどによって感染する。なんとも厄介なことに、このピロリ菌は食道を通過し胃にたどりついたのち、強力な胃酸を浴びても胃酸を中和、無力化することでケロッとして、そのまま胃のなかで生活をはじめる。

現代は衛生環境の改善により、若者の罹患率は格段に低下しているが、こと明治・大正・昭和の時代などに関しては衛生環境が十分なものではなかったため、井戸水や汚染された水からピロリ菌を体内に取り込んでしまい、そしてそのまま胃の中に住み着いてしまっていた。そして気まぐれに胃の壁に病原性を持ったタンパク質を注入し、胃がんを引き起こすことがある。
だがピロリ菌は絶対悪のような存在ではなく、ピロリ菌を除菌することで逆流性食道炎(胃酸が逆流して食道がただれ、炎症を起こす)になりやすくなったり、アトピー性皮膚炎が悪化したりするケースもある。
住処を与えられている分の恩返しはしてくれているつもりなのだろうか。
もっとも「除菌しても胃を荒らしたあとでは意味がない」という説もあり、エビデンス(根拠)として除菌の有効性が確立されているわけではない。しかしアメリカの退役軍人37万人を対象にした研究では、ピロリ菌除菌によって胃がんのリスク低下が示された論文も存在する。

個人的には、胃がんのリスクを上げるとされている細菌がもし住み着いていたとしたら、そのまま胃の中で飼いならしていこうという気分にはならない。

性行為でうつるウイルス

また性行為を通じて感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)や肝炎ウイルスも、がんを引き起こす代表的な感染症だ。性行為は人間の粘膜と粘膜を接触させる行為であり、当然感染リスクは非常に高いもので、そのため“性感染症”と分類される病気は梅毒、クラミジア、淋菌……と多種多様である。

AIDS(エイズ)と並んでHPVと肝炎ウイルスには要注意だ。HPVは性行為によって生殖器に住み着き、子宮頸がんの原因となることで有名なウイルスだからだ。

●胃がんの予防方法
・ピロリ菌検査は血液検査でも尿検査でも可能。一度確認をして陽性であれば除菌をおススメする。
・うにやいくらなどの「魚卵」をはじめとした食塩の摂りすぎは胃がんのリスクを上げるという約4万人の日本人を対象にした研究がある。食塩の摂りすぎも厳禁。

●子宮頸がんの予防方法
・頸がん検診では3年おきの子宮頸部の細胞診、または5年おきの子宮頸部細胞診+HPV検診が推奨される。
・HPVワクチンは若いうちの接種が望ましいが、打ちそびれた人は45歳まで効果があるとされているので自身の性的接触の度合いに応じて接種を検討しよう。
オーラルセックスによって咽頭に感染したり、陰茎に感染する場合もある。男性の予防接種も推奨される。

肝炎ウイルス

肝炎ウイルスも同様に性行為によって感染するウイルスだ。こちらは肝臓に入り込み、本人に気づかれないように、肝臓で炎症を起こす。炎症の跡地はまるでかさぶたや焼け跡のようになり、肝臓としての機能を失い、がんが発生する土壌が形成される(慢性肝炎)。結果として荒れ果てた肝臓にはがんが発生しやすくなってしまう。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるだけあってなかなか症状が出にくい。そして10年、20年かけて静かに、肝臓でボヤ騒ぎを起こし続けるのだ。

●肝炎ウイルス検診で早期発見

“肝炎ウイルス検診”が推奨される。「感染しているかどうかを中年の段階で確認しておきましょう」という趣旨の検査で早期発見に役立つ。ほぼ肝臓がん検診といってよいだろう。
多くの場合、がんの原因は遺伝、運動習慣、生活習慣などが複雑に絡みあっており、1対1対応でとらえるのは難しい。しかし、これらの感染症は非常に明瞭で、検査ではっきりと姿形を確認することができる。

なぜ人はがんになるのか?

日本においては、死ぬまでに2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんで死亡するといわれており、中高年になるとまわりの知人や同年代の芸能人ががんになったという話が少しずつ出てくることが多い。
人間の体内では、毎日新たな細胞が作られ、古い細胞は死滅し、この本を読んでいる今も現在進行形で新陳代謝を繰り返している。

そして細胞が分裂するときにはDNAを複製しているのだが、細胞も人間と同様にコピーに失敗することがある。
このような原理でがん細胞が誕生することがある。

こういったがん細胞に対して、体内では免疫細胞が監視していて、がん細胞を発見したら処分していく。しかし、加齢にともなってこの免疫細胞の力も衰えていく。これが中高年になってくるとがんになる人が現れだす大きな誘因だ。

がんになる理由

そして「なぜがんになるのか」と一口にいっても、がんのできる部位によって影響する要素は異なる。

皮膚がんなら過剰な紫外線の刺激でリスクが上がる。呼吸に関係している肺がんならたばこの煙を吸うことだ。食事が通過する大腸のがんなら赤身肉など欧米化しすぎた食生活をすることなど、それぞれの臓器が関わっている因子につながる生活の悪習慣が、それぞれのがんのリスクを上げる。

なかでもたばこは本当に多くのがんのリスクを上げる。
たばこに含まれる有害物質は、肺だけではなく血液に乗って全身をめぐり、DNAを損傷させ、さまざまながんのリスクを上昇させるといわれている。

遺伝によるがんは?
「がん家系」と呼ばれるように、がんには遺伝の要素もあるのだが、じつは遺伝による“家族性腫瘍”はがん全体の5~ 10% と多いわけではない。
遺伝のハンディキャップがある場合もあるが、我々にできることは日々の生活習慣を改め、“がんになりにくい”体作りをすることと、有用ながん検診を選択して“がんを早期発見する”段取りをしておくことだ。

なお、がん予防に対する心構えとしてあえてまとめるならば、それぞれの臓器が普段からしている仕事を認識し、そのうえで労ってあげることだ。

●予防方法

普段意識することは少ないが、我々の体内では臓器たちが日々絶え間なく活動している。暴飲暴食をしては、インスリンを放出しているすい臓や大腸に負担がかかる。熱いものや塩辛いものを食べすぎれば、通過する食道や胃がダメージを受ける。喫煙をすれば煙が通過するのどや肺が痛めつけられる。

「物言わぬ自分の内臓を大事に大事にする」
この考え方を再認識することが、普段から病気の予防を意識しにくい人がまずやるべきことかもしれない。

『怖いけど面白い予防医学 人生100年、「死ぬまで健康」を目指すには?』(世界文化社)

著者 森 勇磨

2023年3月19日

1,870円(税込)

単行本:262ページ

ISBN:

‎4418234004

本書は今最も熱いテーマ、「80歳まで健康寿命を延ばす」ことを目指す方のための本です。
糖尿病やがん、心筋梗塞など、年を重ねるにつれ罹患する慢性疾患を回避するために
必要な知見「予防医学」を超人気YouTube「予防医学Ch」運営する現役医師が解説します。
病気になった後の世界や、人が病気になる仕組み。大病を避ける方法について
イラスト入りでサクッと理解できます。医学教養書ファンにも訴求する一冊です。
健康診断で気になる項目の詳しい解説、病名別インデックス付き。
第1章 病気になった後 五臓六腑を失った後の世界
第2章 病気になる仕組み 人間の体の中で起きていること
第3章 大病を避ける方法
付録 健康診断チェックシート

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