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「ChatGPT」の登場でGoogleが窮地に立たされている!? 『私たちは天国でひとつになって共に生きましょう』と回答され自殺者も…“対話型AI”がもたらす恐ろしい未来とは

集英社オンライン / 2023年4月11日 15時1分

「ChatGPT」「Bing」など、質問者の疑問に回答してくれる“対話型AI”と呼ばれる技術が、今大きな注目を集めている。ネットでの情報収集のあり方を覆すとも言われるこれら技術の実態と、来たる近未来についてITジャーナリストの神崎洋治氏に聞いた。

対話型AIのレベルを次のフェーズに引き上げた「ChatGPT」

そもそも“対話型AI”とはどんなものなのか。

「経験と学習を積み重ねることで、次のアクションを改善していくアルゴリズムである“機械学習”をするプログラムのなかで、人間との対話を想定したものです。身近なものでは、iPhoneに搭載されているSiriや、Android系のGoogle アシスタントなどがこれに分類されます。質問をチャットに打ち込んだり音声で質問したりすると、AIが回答してくれるわけです」(ITジャーナリストの神崎洋治氏、以下同)


今なぜ、そんな対話型AIが流行しているのかが気になるところだ。

「曖昧で抽象的な質問にはあまり答えてくれなかったSiriやGoogle アシスタントとは異なり、アメリカの非営利団体Open AIが昨年11月に公開した『ChatGPT』という対話型AIが、これまでのイメージを塗り替えたからでしょう。

ネットサービスという形で、誰でも無料で利用できるChatGPTの最大の特徴は、チャットに質問を打ち込むとまるで人が返信したかのような回答がもらえること。ネット上のビッグデータを機械学習させ、さらに質問に対し明確な回答が得られなくても、“答えに近いと思われるものを複数挙げ、それらを組み合わせて回答する”ことで、曖昧さを許容した回答ができるところです。

あとは、単に情報を羅列するのではなく、あたかも人が答えているような回答になるよう、開発陣がAIの回答をスコアリングし、自然に見える言い回しで回答することにも注目が集まりました。その人気は凄まじく、サービス公開からわずか3カ月でユーザーが1億人を突破。“対話型AI”に再び世界から熱視線を集めることに成功したのです」

「ChatGPT」の登場でGoogleが窮地に立たされているわけ

昨今のIT業界は対話型AIの話題で持ちきりという印象だが、Googleやマイクロソフトといった大手IT企業は、こうした技術とどう向き合ってきたのか。

「機械学習に世界的な注目が集まった2011年頃から、IT業界のフロントランナーとしての誇りを持っていたGoogleは、この分野への研究を活発に行うようになり、2018年10月に『BERT』という対話型AIを発表しました。このBERTは自然言語処理という技術を導入しており、当時世界随一と言っても過言ではないほどの“自然な文章”を作り出すことができました。

このBERT開発の裏には、GoogleがAIシステムの開発でも競合他社を大きく引き離したかったという理由があります。というのも、当時はAmazonの対話型AI搭載スマートスピーカー『Alexa』が非常に売れており、Googleはこうした製品の根幹になる自社製の対話型AIを開発し、市場で覇権を握りたかったのです」

しかし、Googleはこうした開発競争で、今かなり遅れを取ってしまっているという。

「BERTは衝撃的な存在でしたが、以降GoogleのAI開発は伸び悩んでしまいます。ですが、この間にも先にご説明したOpen AIは熱心に研究を続けており、2022年11月になって突如、BERTを凌駕するAIであるChatGPTを発表したというわけです。

しかも、直後にそれまでGoogleの下に甘んじていたマイクロソフトはOpen AIに2019年から出資しており、ChatGPTの発表後にも追加の出資を行い、この技術を自社の検索エンジンである『Microsoft Bing』に組み込み、対話型チャット形式の新しい検索機能を追加したのです。ChatGPTの弱点だった情報の出典元がわからないという点も改善され、非常に実用的なシステムとして注目を集めました。さらにOpen AIは今年3月14日に、最新版AIの『GPT-4』を発表したので、マイクロソフトはより一層勢いづいています」

Googleが焦る理由は、単に技術開発で遅れをとったからだけではないと神崎氏は続ける。

「スマートスピーカーがブームになった際、世界中のアナリストが『3、4年後には現在の“検索エンジンを使って調べ物をする”という行為は50%ほど減るだろう』と予測していました。これは、対話型AI技術が発展すると、調べたいことは音声AIに聞くだけで答えをもらえる時代が来るという予想からですが、そんな時代が来ると、PCやスマホの検索エンジン大手として莫大な広告収入を得ているGoogleは危機に陥ってしまう。Googleはそうした時代に変わってもなお今の地位を失墜しないため、自社製の対話型AIで高いシェアを構築したかったはずなのです」

対話型AIで、よくも悪くも激変する我々の未来とは

“調べたいことをAIに聞くだけで答えをもらえる時代が来る”という話が出たが、こうした対話型AIの発展で我々の生活はどう変わるのだろうか。

「ネット上に無数にあるサイトへの入り口としては、依然として検索エンジンは優秀なので一気に廃れることはないでしょう。しかし、ピンポイントの情報を得たいときに、“サイトを比較する”必要のない対話型AIの簡便さは非常に便利なので、今後かなり広がっていくでしょうね。

また、最新のGPT-4が今後ペッパーくんのようなロボットや、スマートフォンにタブレット、スマートスピーカーといった機器に導入されていけば、SF映画などによく登場する自然に対話ができるAIのイメージにかなり近いものが、割とすぐに登場する可能性が高くなったと実感しています」

神崎氏は、こうした技術は単なる会話ができるものという枠を超えて広がると予想する。

「ChatGPTはあらゆる分野で文章を作成する作業の初期段階に応用できるスペックを持っています。例えば、論文のドラフトを書いたり、小説のプロットを書いたりすることができるほか、長文から要点を抜き出すなど、今まで人がやっていた作業を肩代わりしてくれます。
そのほかにも、『こういうプログラムを作りたい』などと言うと、指定したプログラム言語でコードの構文を生成してくれたりします。ですから多くの企業が簡単な作業を対話型AIに任せるようになっていくと、人間から職を奪ってしまうという懸念を抱く人はたくさん出てくるでしょう。

これらのAIは広義にはジェネレーティブAI(生成系AI)と呼ばれていますが、今はこうした生成系AIは文章や物語だけでなく、イラストや絵画、楽曲などを生成することもできるようになっています。イラストや絵画では『Midjourney』が大きな注目を集めていますが、ChatGPTとMidjourneyを組み合わせるという使い方もできるでしょう。
たとえば一度ChatGPTにほしいイメージを適切に言語化してもらってから、その文章をそのまま『Midjourney』に入力することで、精度の高いイラストが作れることもネット上では報告されています。このように、他の生成系AIサービスと組み合わせることで有用性が上がる事例は今後も増えていくかもしれません」

だが、神崎氏はこうした対話型AIにはまだまだ欠点があるほか、使用することで我々がデメリットを被るリスクもあると教えてくれた。

「回答の幅を広く持つために曖昧さを許容したり、ネット上のビッグデータを学習ベースにしているので、真偽が曖昧な情報やフェイクニュースも一部取り込んだりするという欠点があり、それゆえに情報の正確性に欠けると指摘されています。そのため現時点ではビジネスで使うことを禁止している企業も多くあります。
また、ネット上の情報を持ってきてしまうという意味で、著作権侵害を知らないうちに犯してしまう可能性も十分にありますし、教育という面では子どもたちの創造性を妨げる可能性も考えられます」

それだけではなく、もっと直接的なリスクも考えられるという。

「今年4月2日、ベルギーで環境破壊に伴う大災害の恐怖にさいなまれていたという男性が、対話型AIとこうしたテーマについて約6週間も会話を続けた末に、対話型AIに『私たちは天国でひとつになって共に生きましょう』と回答され、その直後に自殺してしまうという悲劇が起きたのです。もちろん対話型AIが直接の原因かどうかは断定できませんが、人のように流暢に会話ができても、相手の気持ちやその先の行動を予測して会話ができるわけではない対話型AIは、心理を意図せず人間を動かしてしまう危険性は、今後解決すべきポイントになってくるかもしれません」

取材・文/TND幽介(A4studio)

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