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【漫画あり(1〜3話)】『THE3名様』は「実写化は100%ないって言われてました」「ドラマでこの面白さを出すのは自分でも無謀だと思ってた」《石原まこちん×佐藤隆太》

集英社オンライン / 2023年4月16日 11時1分

フリーターの男子3人組がファミレスでゆるい会話を繰り広げるだけの漫画『THE3名様』。石原まこちんが2000年に連載を開始して以降、実写ドラマ化もされたこの作品が、なぜこれほど根強い人気を誇っているのか。ドラマ版で「ジャンボ」を演じた俳優の佐藤隆太さんと漫画家の石原まこちん先生の対談を前後編にわたってお届けする。(前後編の前編)

実写化を熱望した漫画は『THE3名様』と『ROOKIES』だけ

――ドラマ版がスタートしたのは、もう18年も前のことなんですよね。

石原まこちん(以下、石原) そうなんですよね。こんなに長い間みなさんに作品を愛していただけて嬉しいです。僕自身は18年前と全く変わらずファミレスで、ダラダラやってるだけなのですが(笑)。



――昨年12年ぶりの新作映画『THE3名様~リモートだけじゃ無理じゃね?~』は発表時点で大きな反響を呼びました。

石原 僕はずっとやりたいと思っていたんです。隆太さんたちとも連絡を取り合っていましたし、誰一人、「もういいや」って関係者はいなかった。あとはタイミングだけで、諸々のことが一致したのが去年だったということです。

――佐藤隆太さんにとっても、『THE3名様』は特別な作品だそうですね。

佐藤隆太(以下、佐藤) そもそも僕はまこちん先生の『THE3名様』の大ファンだったんですよ。だから、本作のプロデューサーである森谷さんに、「これがやりたいんです!」と持っていったんですけど、最初は自分でも難しいかもしれないなとは思いました。実写でこの面白さが出せるだろうかって。でも実現してめちゃくちゃ嬉しかったです。

自分が面白いと思った作品が映像化されて、しかも、自分が『ジャンボ』役で出演もしている。望んでもそう叶うことではないですから。そして、12年も経っているのに、新作を「待ってました」と言ってくれる人たちがいる。こんなに幸せなことってないですよ。初めて原作を読んだときの感動が、今もずっと続いている感じです。

――隆太さん自身が実写化を提案されたんですね。

佐藤 はい。それくらい興奮したんです。もう、「見つけた!」っていう。僕にとってそんな作品は『THE3名様』と『ROOKIES』だけですね。

石原 漫画としての熱量が真逆すぎる(笑)。でも、それはうれしいですね。

「山に捨てられるかと」
未だに意味不明なサプライズ

――ただ、まこちん先生は担当編集から、「実写化はないだろう」と言われていたとか。

石原 100%ないって言われてました。

佐藤 先生はどのタイミングで実写化を知ったんですか?

石原 おそらく、編集部に実写化の相談があった頃ですね。デニーズに呼び出されて、担当の編集さんから、「ドラマ化の話があるんだ」と言われたんです。ただ、そのときは「話だけだから。100%ないと思って聞いてくれ」って言われたんですけど。この人は、どうして実現しない企画を僕に言うんだろうって思いました。夢を持たせるようなことをしないでくれよって(笑)。

――しかし、水面下では実現に向けてお話が進んでいたわけですよね。

石原 だから、未だに意味がわかんないんです。しかも後日、その編集者から、「千葉に行くから一緒に来てくれ」と言われて。今度は夜に呼び出されました。拉致されて山に捨てられるんじゃないかと思いましたよ。で、これも謎なんですけど、その夜は千葉に行かず、編集者の家の近所のビジネスホテルに泊めさせられたんです。

――わざわざ?

石原 理由も何も言われずに、とりあえず泊まってくれって。で、次の日に連れて行かれたのが、千葉のビッグボーイだったんです。

――ドラマの撮影場所になった店。

石原 そう。しかも、お店に着いたらロケ車みたいな車がいっぱい停まっていて、店内に隆太さんたちもいて……。

佐藤 え、先生はあそこで初めて知ったんですか? それまで何も言われてなかったんですか?

石原 そうですよ。

佐藤 ハチャメチャじゃないですか(笑)! じゃあ、あの段階で先生はOKを出してなかった?

石原 いや、最初の「あり得ないけど」って話の時点で、もしあるなら喜んでお願いしたいとは言っていたんです。あの当時は一部の男子しか読んでくれないような漫画でしたし、ドラマになったらいろんな人に読んでもらえるんじゃないかと思って。

佐藤 じゃあ、あの日は先生にもサプライズだったんだ。

石原 そうなんですよ。

――要するに編集者のドッキリだったということなんですかね。

石原 まあ実際びっくりしましたよね。僕は最初、隆太さん、岡田(義徳)さん、塚本(高史)さんの3人が座っているのを見たときに、「あ、『木更津キャッツアイ』だ!」って思いました。自分の漫画の実写化じゃなく(笑)。

佐藤 (笑)。でも良かったですよ。「こんなの聞いてないぞ!」とか先生に言われなくて。

石原 ドラマのことは本当うれしかったですから。それからは現場の邪魔にならないように、シリーズ全話の見学もさせていただきました。

――しかし、ドッキリにしても前日の宿泊は謎すぎますね。

石原 あれは怖かったですよ。「何があるんだろう?」って寝られなかったし。全部本当にあった話です。

ドラマになったことで読者層が一気に広がった

――そこで初めて会ったとき、隆太さんから見た先生の印象は?

佐藤 ちょっと不思議な言い方かも知れませんけど…意外性はあまりなかったですね。

石原 それ、よく言われます(笑)。

佐藤 僕が大好きな『3名様』から勝手に思い浮かべる、イメージ通りの空気感を纏っていらっしゃると言いますか。印象的だったのは、現場にいらした時、先生の物腰が柔らかすぎるくらい柔らかくて。僕らとしては、「先生の作品があってのドラマですから!」って言うんですけど、ずっと先生は「いやいや……」という感じで。

石原 ずっと裏でカメラのコードを避けながら見ていました。

佐藤 ホントにこっちが、「ありがとうございます!」って気持ちなんですけど、むしろ先生のほうが、「ありがとうございます!」ってスタンスでいらっしゃって。

石原 それは本心なんです。(最初の版元だった)小学館の編集者ともよく話すんですけど、もし実写化がなかったら、これだけ長く続いてなかったと思います。すごく狭い層だけが読む漫画で終わっていた。でも、ドラマになったことで女性も読んでくれるようになって、読者層が一気に広がりました。

だって、キャストの3人が『THE3名様』として「笑っていいとも!」に出たことがありましたけど、あのときが一番重版かかりましたからね。これだけ成功した漫画原作のドラマって、そんなに多くはないですし、本当に感謝しています。

――漫画の実写化における幸福なケースですよね。原作者も出演者も満足していて、しかも大ヒットした。これだけドラマ版が支持された理由は、どこにあると感じていますか?

石原 最初は正直、どういうドラマになるんだろうと思ったんです。3人とも若くてイケメンですから。

――原作のキャラクターとは似ても似つかない。

石原 でも完成した映像を観たら、びっくりしました。「漫画の3人がいる!」って。役者さんのすごさが初めてわかりました。塚本さんなんて、「ミッキー」にしか見えない。こうして自分の作品が実写になって、初めて役者さんの力を実感しましたし、それが魅力になっているんだと思います。

シリーズにおける福田雄一監督の貢献

佐藤 特に最初のシリーズは福田雄一さんが監督していますから、それでわかりやすくハネているのかなとは思いますね。

――わかりやすくハネているとは?

佐藤 僕は『THE3名様』の何か起こりそうで何も起こらない、そういう淡々としたシュールさが心地よくて大好きなんですけど、そこに福田雄一さんのエッセンスが加わったことで、笑えるポイントがより明確になったんじゃないなかって感じています。

でも、それはそれで先生がどう思うのかなっていうのも気になっていました。こっちで新たな味付けを加えてしまうってことですからね。この作品に限らないですが、原作者の方に初めて完成した映像を観ていただくときは、やっぱり僕らも緊張します。

――「これじゃない」って言われないかと。

佐藤 だから、すごく喜んでくださったと聞いて安心しました。

石原 福田さんって、基本的にはアッパーなテンションの作品が多いと思うんですよ。だから、『THE3名様』ではそのアッパーな感じと、僕の原作のダウナーさが合わさって、いい塩梅の味になった。だから……福田さんにはもう一回、『THE3名様』を監督してもらいたいですね(笑)。

佐藤 去年の新作ではまこちん先生に脚本を書き下ろしていただいたこともあって、12年ぶりではありましたけど、『THE3名様』ならではの魅力が色濃く出ましたよね。

石原 そうですね。

佐藤 年月は経ったけど、納得のいくものが作れたと思っています。

役者は40代でも、キャラクターは20代フリーターのまま

――『THE3名様』のように漫画では登場人物たちの年齢が長期シリーズでも変わらないことが珍しくないですが、ドラマだと俳優さんは否応なしに成長します。12年分の歳を重ねているわけで、新作のお話が出たとき、そこをどうクリアするのだろうと気になりました。

石原 だから、最初の企画段階では彼らに子どもがいるっていう案も出たんです。成長した『THE3名様』をやろうかって。でも、僕はやりたくなかったんですよ。

隆太さんって、1990年代のメロコアが今も好きですよね。NOFXとかHi-STANDARDとか。僕も未だに大好きなんです。例えば、彼らが「自分たちも歳をとったから音楽性を変えます」って言い出したら絶対イヤですよね。

佐藤 あーわかります! 素晴らしいたとえですね。

石原 ファンを裏切ることになるわけですよ。でも、彼らはずっと同じ音楽をやり続けた。あの人たちを見て、自分もやらなきゃと思ったし、役者さんたちも絶対に演じてくれると思ったから、12年ぶりの新作でも設定を変えなかったんです。

――役者は40代でも、キャラクターは20代のフリーターのままにしたと。

佐藤 今のお話は初めて知りましたけど、僕も変えるつもりはなかったですね。

――実際に新作を観て、彼らが何も変わっていないことに驚きました。

石原 「あいつら、まだあのファミレスにいるのか!」っていう(笑)。

――しかも、ちゃんと3人が昔のままに見えるんですよね。これは皆さんが特別に若く見える俳優さんだからなんでしょうか?

佐藤 そんな事ないと思いますけど(笑)。でも、確かにあのテーブルでの3人を見ると、昔からあんま変わってないですね(笑)。

石原 それが役者の力ですよ。この前、映画『シャイロックの子どもたち』を観たんですけど、あの中の隆太さんは『THE3名様』と違って、ちゃんと歳を重ねた役者として出ていましたよね。それがすごいなと思って。これはぜひ聞きたかったんですけど、子どもが家の中を走るときに、「滑るぞ」って注意するじゃないですか。あれ、アドリブですか?

佐藤 多分、アドリブですね。

石原 あそこがすっげえリアルに感じたんです。「転ぶぞ」じゃない。「滑るぞ」なんです。たしかに、自分も子どもにそうやって言うよなって感じがあって……。『シャイロックの子どもたち』を観て、隆太さんが役者としてすごく成長されているのがわかりました。だから、本当は僕も成長しなきゃって思います。いつまでも同じコマ割りの漫画じゃダメですよ(笑)。

脱力系青春漫画の頂点!

【漫画】『THE3名様 Ω 1』(1〜3話)を読む(漫画を読むをクリック)

取材・文/小山田裕哉 撮影/鈴木大喜

『THE3名様 Ω 1』

石原 まこちん

2023/2/23

544円(税込)

ISBN:

-

実写ドラマ化もされ一世を風靡したゆるゆる漫画の金字塔『THE3名様』から最新シリーズが登場。ふとし・まっつん・ミッキーの3名が毎夜ファミレスで繰り広げる令和イチどうでもいい話を感じろ! 第1巻は、コロナ禍の中でもくだらない楽しみを見出す3人の姿を描いた話を中心に20篇を収録!

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