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〈鐘を鳴らして21年〉“鐘のおじさん”こと秋山気清さんが語る「NHKのど自慢」の魅力「私としては全員に合格の鐘を鳴らしたかった」

集英社オンライン / 2023年4月9日 12時31分

今年3月にテレビ放送70周年を迎えた国民的音楽番組「NHKのど自慢」。この舞台で2002年から21年間、全国の「のど自慢」参加者の合否の鐘を鳴らし続けた秋山気清(きせい)さんが3月26日の放送をもって番組を卒業した。その胸中を尋ねた。

“鐘のおじさん”の知られざるエリート経歴

「鐘を鳴らしているこの道具はハンマーって言うんですよ。1本6000円くらいで、7年間くらい使うとダメになってしまいますね。真ん中から少しずつ剝がれて最後は中央に穴が空いて音が全然違ってきちゃうんです。『(NHK)のど自慢』で鐘を鳴らしていた21年間で3本のハンマーを使ってきました。これが最後の放送でも鐘を鳴らしたハンマーです」


秋山さんが使っていたハンマー

優しい口調で語る秋山気清さん。日本を代表する長寿番組「NHKのど自慢」で“鐘のおじさん”として親しまれ続けてきたが、3月26日の番組放送中に小田切千アナウンサーが秋山さんの卒業を発表。秋山さんが笑いながら泣き真似をして頭を下げると、会場内は大きな拍手で包まれた。

「あの時はバックバンドの人たちに『最後に泣き真似しろよ。俺達も一緒に泣き真似するから』と言われていたのですが、見事に裏切られ私一人が泣き真似をしてしまいました。

去年の12月に突然スタッフから3月までと告げられた時は『あと1年くらいは続けられたらなあ』と思いもしましたが、今となっては『終わったなあ』『21年間ってずいぶんやったなあ』と思っています」

実は秋山さん、音楽界のエリートといっていい経歴の持ち主だ。67年に東京芸術大学を卒業後、東京交響楽団、藝大フィルハーモニアなどでオーケストラ団員や同大で非常勤講師を務めてきた。そんな秋山さんが音楽の道を志したのはひょんなことがきっかけだった。

最初は前任者の代打で鐘を鳴らしていた

「高1の頃は、コーラスとバレーボールをやっていました。もともと音楽がすごい好きというわけではなかったのですが、高2の時に音楽の先生から『打楽器をやってくれないか』とブラスバンド部に誘われて小太鼓を始めました。

その時に師事した東京芸大の先生に『打楽器をやるなら芸大を目指せ』と後押しされて、芸大を目指すことになったんです。もともと芸大に行くつもりではなかったので試験まで時間が足らず、1浪してようやく入りました」

大学入学後は東京の宝塚劇場や帝国劇場で打楽器奏者のアルバイトをしながらの生活。「流れに身を任すような感じでしたね」と秋山さんは語るが、これによってつながりは広がっていき、様々な舞台で演奏する機会に恵まれた。

自身の音楽人生を振り返る

「ティンパニーや鍵盤楽器担当として、いろいろな方のバックバンドで演奏させていただきました。日本ならザ・ピーナッツさん、外タレだとペリー・コモさんやデイム・ジュリー・アンドリュースさんなどのバックバンドもやらせてもらいました」

そんな秋山さんの音楽家人生に転機が訪れたのは、東京芸術大学フィルハーモニアを約30年務め、定年を間近に迎えた頃だった。当時、秋山さんは非常勤講師という立場で同大の打楽器指導を行っていた。「のど自慢」の鐘奏者の前任者がガンで入院してしまい、知人から急遽代打を頼まれたことがきっかけだったという。

「最初は1か月だけ代役を務める予定だったんです。ところが、1か月がすぎると3か月、半年、1年間とどんどん代役の期間が伸びていきました。前任者の方がいつでも復帰できるようにNHKの方も配慮していたのですが、残念ながら前任者の方は亡くなってしまい、復帰できなかったんです。それで前任者の跡を継ぐ形で私が鐘奏者になったんです」

“鐘のおじさん”が語る「のど自慢」の魅力

クラシック畑にいた時間が長い秋山さんにとって、歌謡曲の合否に対し鐘を鳴らすことに当初は戸惑いもあったという。秋山さんは当時をこう振り返る。

「もともとオーケストラを長年やっていたので、舞台には慣れているから鐘を叩くことに緊張はしませんでした。でも、やってきた音楽のジャンルがまるで違うから違和感はありましたよね。それでも、『のど自慢』の魅力に気付いてからは『続けられるうちはやっていきたい』と思うようになっていったんです。

この仕事の魅力ですか? 例えば、この歌を聞いて病気を克服しました、など参加者一人ひとりの物語を目の当たりにした時、改めて『音楽の持つ力ってすごいな。音楽はジャンルじゃないよな』と気付かされました。だから私は『のど自慢』では参加者の人生にも耳を傾けるようにしています」

3月26日放送の番組中に小田切アナより卒業を発表される秋山さん

優しく会場に響く鐘の音は、番組の看板だったと言っても過言ではない。秋山さんは「とにかくいい音で鐘の音を響かせたい」、その一心だったという。

「私の気持ちとしてはみんなに合格の鐘を鳴らしたいんですよ。ですが実は合格、不合格や鐘の回数を決めているのは私ではないんです。私は受けた指令に従っているだけなんです」

21年間の長きにわたって「NHKのど自慢」の顔である“鐘のおじさん”を務めてきた秋山さん。後半では「のど自慢」に関するエピソードやハプニングを語ってもらった。また、4月から司会者が2人体制となり刷新された新生「NHKのど自慢」についてどう思うのか、その胸中にも迫っていく。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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