世襲で名跡を継いでいく歌舞伎役者の家を別にすると、今日、映画界でもっとも活躍している“三世スター”俳優は寛一郎だろう。『菊とギロチン』(2018)で寛一郎の演技に初めて接したとき、その存在感にただならぬものを感じた。
もっとも、そのときには彼が佐藤浩市の息子であり、三國連太郎の孫であることは知らずに見ていて、後からプロフィールを見てびっくりした次第。公開では『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(2017)の方が先になったが、初めて演技をしたのは『菊とギロチン』だったというから、やはり彼の身にまとわりついているただならぬ存在感は、天性のものに違いあるまい。
その後『雪子さんの足音』(2019)、『一度も撃ってません』(2020)で父・佐藤浩市との共演を果たし、前者では父は“友情出演”だったが、後者では主人公(石橋蓮司)の担当編集者を佐藤浩市が演じ、寛一郎はその部下という役での競演だった。