——「マーガレット」で描いていらした頃は物語を「感情の波で作っていた」とおっしゃっていましたが、ご自身も感情の波の中に入るのか、それとも冷静な状態で感情の波を描くのか、どちらでしょう。
自分ではあまりわからないんですけど…入りこんでいるときは、周りが「飛ぶ」かな。寝ないですしね。
——時間の感覚がなくなるのですね。そのときは気持ちがよさそうでもありますが、終わった後にすごく疲れてしまいそうです。
すごく疲れます。描きながらうまくいっているときは楽しいですが、何にも思い付かないときは、吐きそうになるくらい苦しいです。その状態が続いて鬱っぽくなっていたときに、鉄骨が「一緒にやろうか?」と言ってくれて。それで組むことになったんですよ。話と絵で完全に分担するのではなく、一緒に考えて、絵もすごくダメ出しされたり、後半は一部を描いてもらってもいました。苦手分野であるカラーの着色は最初から鉄骨にまかせましたが(笑)。まさに「一緒にやる」ということが、私自身も鬱から脱却してまたやる気になれた要素だったと思います。数年間も一緒にやってくれたんです。
——原作と作画がはっきり分かれたコンビもありますが、お二人は一緒に作り上げる、有機的な組み方をされていたのですね。『菜の花の彼-ナノカノカレ-』で1人から2人になって描いてみて、いかがでしたか?
すごく助けられましたし、鉄骨のエッセンスをめちゃくちゃ勉強させてもらいました。振り切っているところがすごいなと思っていて。『菜の花の彼-ナノカノカレ-』で、鉄骨は「好きになるということは、残酷なことでもある」という、ピュアを突き詰めたものを描こうとしていたのだと思います。
主人公の菜乃花は、もう好きじゃないと思った相手からの愛情はいらなくなるし、本当に相手に冷たくなるし……そこまでむごいことを少女マンガの主人公にさせていいのかな?と思いながら描いていました(笑)。普通だったら主人公はみんなに優しいですからね。