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〈爆発事件後も遊説続行〉焦る岸田首相「懸念をよそに握手やグータッチ」「高揚感から自制が効かなくなった」背景に衆参5補選“1勝4敗”なら求心力低下は必至で…

集英社オンライン / 2023年4月17日 18時1分

15日に和歌山市で岸田文雄首相を襲った爆発事件。首相はその約1時間後にはJR和歌山駅前で街頭演説を再開し、衆院補選での候補者への支援を呼びかけた。首相周辺によると、警備体制やテロ対策などは二の次で、首相自身の政治的判断で演説が続行されたという。その背景には、衆参5補選で自民が予想以上に劣勢に立たされているということへの焦りもにじむ。

爆発事件直後も岸田首相は和歌山駅前で街頭演説

「いま私たちの国にとって大切な選挙を行っている。ぜひみなさんと力を合わせて、最後までやり通さなければならない。この国の主役であるみなさん一人ひとりに、自らの思いを選挙においてしっかり示していただかなければならない」

岸田首相は4月15日午後、和歌山駅前で街頭演説し、午前中に起きた爆発事件について触れて力強く訴えた。


その後は航空機で羽田空港を経由して千葉県へ移動。演説が予定されていたJR新浦安駅前には、事件の影響もあってか雨にもかかわらず大勢の聴衆が集まった。

岸田首相は「天気は変えることはできませんが、政治はみなさんの一票一票、力によって変えることができる。結果を出せる政治を実現しよう」とマイクを握り、自民党公認で立候補した千葉5区補選の英利アルフィヤ候補も「雨にも、風にも、暴力にも絶対に負けません」と声を張り上げた。

爆発物を投げ入れた直後に確保された木村隆二容疑者(写真/共同通信社)

事件があったのは15日の午前11時25分ごろ。岸田首相が和歌山市雑賀崎の漁港で海産物を試食した後、和歌山1区補選の門博文候補と並んで演説を始めようとしたところに、筒状の爆発物が投げつけられた。直後に和歌山県警は兵庫県川西市けやき坂の無職、木村隆二容疑者(24)を現行犯逮捕。首相は緊急で和歌山県警本部まで車で退避した。
しかし、その約1時間後には、予定されていた和歌山駅前で街頭演説を再開。岸田首相はその後、Twitterで「私は街頭演説の場に立ち続けます」と発信し、もともと予定されていた遊説スケジュールをこなした。

一方、今回の演説続行の判断については、警備体制やテロ対策が十分に検討された上での判断だったか疑問視する声も挙がっている。全国紙の政治部記者は語る。

「岸田首相は和歌山県警本部に入った後、自民党の幹部らに『何かが投げ込まれたが、爆発まで時間があったので逃げることができた』と電話で報告しているが、そのときに同時に『街頭演説は予定通り続ける』と伝えている。
まだ容疑者が何者なのか、犯人は単独犯なのか複数犯なのか、組織的なテロ行為ではないのかについて捜査が進んでいないなか、首相が自身の政治的判断で、演説を予定通り続けることを決めたようだ」

強行遊説の背景にある自民劣勢の選挙戦

そのため、永田町周辺からは「和歌山駅前での演説でも続けて襲われていたらどうするつもりだったのか。聴衆に被害が出る可能性もある。せめて直後の街頭演説は中止にし、警備体制が整ってから演説を再開するのが正しい判断だったのではないか」という声も聞かれた。

また、自民党周辺によると、一部の幹部からは「街頭演説を続けたとしても、聴衆と触れ合うのは警備上控えた方がいいのではないか」という意見も出たが、新浦安駅前では演説後に岸田首相が聴衆に近づき、握手やグータッチを交わす様子も見られた。

前出の政治部記者は「暴力に屈しない姿勢を示したいという側面もあるのだろうが、事件を受けて岸田首相自身の高揚感が高まってしまい、自制が効かなくなった部分もあるのではないか」と心配する。

その背景には、いま行われている衆参5補選で自民候補が劣勢に立たされているという現状がある。
事件があった和歌山1区の補選では、統一地方選の前半戦で隣県の奈良県の知事選を制した日本維新の会が勢いを増しており、一部の情勢調査では維新の林佑美候補が自民元職の門博文氏に先行しているとの結果も出ている。
また、その後に岸田首相が訪れた千葉5区の補選も、英利氏に保守層からの支持が十分に集まらず、立憲民主党の矢崎堅太郎候補と互角の戦いを繰り広げている。

自民党公認で千葉5区の補選を戦う英利アルフィヤ候補(撮影/集英社オンライン)

翌16日に首相が応援に入った参院大分補選は、大分県が社民党の村山富市元首相の地盤ということもあり、社民党党首を務めたこともある立憲の吉田忠智候補が、自民の白坂亜紀候補に対して有利な戦いを展開している。
そして、自民王国である山口2区でも、岸信夫前防衛相の長男で、自身のHPでの「家系図アピール」を批判された自民の岸信千世候補が、無所属の元職、平岡秀夫候補と接戦中という、まさかの展開が起きている。

今のところ自民が安定して優位な戦いを進めているのは故・安倍晋三元首相の地盤だった山口4区のみで、自民党周辺からは「この衆参5補選で連敗を喫してしまうと首相の求心力が一気に低下し、政権運営が不安定になる可能性がある」と懸念する声が漏れている。

襲撃事件を受けて自民の追い風となるか

そうしたなかで起きた今回の爆発事件。

「『岸田さんが襲われたから自民党に入れよう』という人がたくさんいるとは思えない。実直に選挙戦を頑張るのが第一だ」という自民党関係者の冷静な受け止めが多い一方で、「岸田首相が襲われたことに同情票が集まり、補選の情勢にも変化が出るのではないか」と期待する声も出ている。
現にANNの世論調査で岸田内閣の支持率が3月から10.2ポイントアップの45.3%となっており、追い風に変わったという見方もできる。

15日、雨が降りしきるなか応援演説を行う岸田首相(本人Facebookより)

果たして各選挙区をどの候補が制すのか。その結果によっては岸田政権にも大きな影響を与えることとなる。
爆発事件が起きてもすぐに街頭演説を続行した判断は、暴力に屈しない政治家としての使命感からか、選挙戦で予想以上に劣勢に立たされている自民党の総裁としての危機感からか。

いずれにしても投開票は4月23日。有権者による審判が迫っている。

※「集英社オンライン」では、統一地方選挙について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

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取材・文/宮原健太
集英社オンライン編集部ニュース班

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