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〈卒アル、大丈夫?〉良くも悪くも、突然有名人になったときにはすでに遅いから。これまでの卒アルの自分をチェックしてみた

集英社オンライン / 2023年4月21日 17時1分

仮に偉大な業績を挙げたとき、未曾有の犯罪を犯したとき…今や真っ先にネットやニュースで晒されてしまうであろう卒業アルバムの写真や卒業文集の作文。万が一にも備えてチェックしてみたら、はたしてどうなのだろうか。

もしも大事件の容疑者になったら、
もしもノーベル賞候補になったら……

今後もし、やむにやまれず、世間を震撼させるような大犯罪の実行を決意したとしよう。
準備段階で僕はまず、SNSのアカウントや履歴を完全に消去しようと努めるはずだ。
今後の立件や裁きで不利になる情報をほじくり出されかねないし、何より家族や友人など自分と密接なつながりがある人に、迷惑が及ばぬようにしたいからだ。

逮捕された僕のプロフィールを、マスメディアはこぞって探りにかかるが、ネット上には情報がほとんど存在しないと見るや、僕が生まれ育った土地で聞き込みを開始し、かつての同級生を探り当てるだろう。


小学校や中学校、あるいは高校の卒業アルバムを借り受け、僕が写っている部分を複写。
こうして、若かりし頃の僕の姿がワイドショーやネット記事で曝け出され、キャスターやコメンテーター、記者やネット民に、ああでもないこうでもないといじくりまわされるのだ。

逆に、僕がもし仮にノーベル賞などの大きな栄誉を受けることになったとしても、誰でもアクセスできるネット上の情報は価値が低いので、メディアはやはり僕が写っている卒アルを入手するべく奔走するに違いない。

そんなふうに考えてたら、なんだか心配になってきた。
僕の卒業アルバム、大丈夫かな?
メディアに晒されたとき、あまりにみっともなかったら困る。
は、恥ずかしいではないか……。
そうなる前に、ちゃんとチェックしておかねば。

……と思って引っ張り出した、小学校から高校までの卒業アルバム

僕が大犯罪人になったりノーベル賞を受賞したりする可能性は、かなり低いのでいらぬ心配ではあるのだが。

そしてここまで読んだ方はすでにお気づきのように、これはネタに困ったコラムニストが、もっとも手っ取り早い自分の話でお茶を濁そうと思いついた戯言に過ぎないのだけど、ま、お付き合いください(もちろん、忙しければ無理に付き合う必要はありません)。

卒アル晒しの風潮には疑問があるが、
まずは小学校のアルバム&文集からチェック

岸田首相襲撃事件でも繰り返されたように、大きな事件が起こったとき、メディアはこぞって容疑者の卒業アルバムや卒業文集を発掘し、世間に公表する。
そもそもこれについて、僕は根本的な疑問を抱いている。

望んでもいないのに、自分の過去の姿が曝け出されてしまうのだ。
罪も罰も未確定な容疑者の、基本的人権はどうなっているのだろうかと思ってしまう。
コンプライアンスやポリティカルコレクトネスに対する意識が高まっている現代社会においても、メディアがスクラムを組めばなんでもまかり通るという、いかにも日本的で前近代的な圧力さえ感じる。

でも、今はまだそんなことも普通に許される社会だから仕方ない。
そうなる前にせめて、晒される自分の姿をチェックし、心の準備だけはしておこう。
って、繰り返しますが、そういう予定は一切ないのだけど。

まずは小学校からだ。
久しぶりに引っ張り出した、東京都・東久留米市立第二小学校1982年の卒業アルバムである。
恐る恐るページをめくり、6年3組を開いてみると、集合写真の最前列、担任の佐竹先生の横に僕は写っていた。
チビだったので、集合写真は常に最前列だったのだ。

『東久留米市立第二小学校 1982年卒業アルバム』より引用

う〜ん、なんてダサい格好だ。
しかもモノクロだし。
時代が時代なので仕方がないでしょう。
神妙な顔をして写っているじゃないか。
こんなに真面目そうな子が、まさかあんな凶悪犯罪に手を染めるなんて……。

アルバム後半の「委員会活動」のページには、飼育委員会の一員として写っている。
そうそう、この頃から動物好きだったのだ。
後にノーベル生理学賞を受賞する片鱗が窺えるではないか。

アヒルを抱く筆者。『東久留米市立第二小学校 1982年卒業アルバム』より引用

なぜわざわざ文集の作文でこのテーマを

文集も見てみよう。

タイトルは『議長団選挙「落選編」』

ああ〜、そうだった!!
6年生のとき、柄でもないのに担ぎ出されて児童会議長団選挙に立候補し、まんまと落選した顛末を書いたのだった。
小学校の思い出の中から何を書いてもよかったはずなのに、なんでわざわざこのテーマを?という感じだが、今でも僕はコラムを書くとき、自虐ネタを好んで選んだりするから、その性質は当時から培われていたのだろう。

『東久留米市立第二小学校 1982年卒業文集』より引用

見開きの隣のページは、先月も一緒にゴルフに行った友達の『議長団選挙「当選編」』である。
ヤツが書く予定の作文を先に知り、自分の落選編を並べてもらうことで、受けを狙ったのかもしれない。

文集の他のページを見ると、クラスメートの投票による“ザ・ベストスリー”の「ユーモア」で、意外なことに僕が第一位に選ばれている。
調子に乗ってふざけたりおどけたりすることはない子供だったが、いつも頭の中で変なことを考えていて、ポロっとシニカルなことをつぶやいてみんなを笑わせるのが得意だったような記憶がある。
今考えると、なかなか嫌味な小学生だ。

『東久留米市立第二小学校 1982年卒業文集』より引用

ともかく、小学校の卒業アルバムも文集も、晒されたとしてもそんなに恥ずかしくはないかもしれない。
良かった良かった。

中学と高校の卒アルもチェック。
恥ずかしい過去の自分が次々と出てくる

こんな、どプライベートな話に需要がないのはわかっているのだけど、書き出してしまったら止まらない。
暇で暇でしょうがなくて、とにかく時間をつぶしたい人だけついてきてください。

続いて、中学校編である。

東京都・東久留米市立大門中学校1985年の卒業アルバムを開いてみよう。
僕は3年B組。
金八先生世代だから、クラス替えでB組になったときはちょっと嬉しかったっけ。

小学校の卒業アルバムとは違い、個別撮影の写真が掲載されている。
ちょっとはにかんだような笑顔で写る僕。
変な髪型……。

『東久留米市立大門中学校 1985年卒業アルバム』より引用

そうか。
部活をやっている間は髪をスポーツ刈りにしていたけど、3年になって引退してから伸ばし始めたんだった。
伸びかけの中途半端な時期に撮られたので、こんな髪型なんだな。
周りの写真を見ると、僕と同様に妙な伸びかけ頭をした運動部出身の友達がたくさんいる。
そんな時代だった。

クラスの集合写真に写る僕は、もっと伸びてより変な髪型になっているが、笑顔で友達と肩を組んでいる。
部活の集合写真は、自分が活躍して獲ったわけでもない賞状を掲げ、誇らしげな表情だ。
いろいろ突っ込みどころはあれど、真っ当で充実した中学生時代を過ごしていたことがうかがえるではないか。
まさかこの純粋な目をした少年が、家であんなブツを製造していたなんて……。

ともに『東久留米市立大門中学校 1985年卒業アルバム』より引用

中学の卒業文集はいくら探しても見つからなかった。
そんじょそこらにいる並の優等生だったから、きっと大人が喜びそうな、歯の浮くような作文を書いていたんじゃないだろうか。
恥ずかしいから見つからなくて良かったが、芥川賞を受賞した暁には、きっとメディアに晒されるんだろうな。

そして最後は高校編。
国際基督教大学高等学校(ICU高校)の1988年卒業アルバムだ。

高校名から想像がつくかもしれないが、ちょっと特殊な私立校に通っていたので、卒業アルバムの作りも独特だ。
生徒一人に対して与えられる4分の1ページのスペースを使い、写真などを使って自由にコラージュして、自分を表現する趣向である。
これがもうね、ご想像のとおり、後から見るとメチャクチャ恥ずかしいのです。

ちょっとここで公開するのはやめておこうかとも考えたのだが、フェアじゃないので出しましょう。
ジャーン。

『国際基督教大学高等学校 1988年卒業アルバム』より引用

僕は高校でバンドを組み、ボーカルをやっていたのだけど、なんでこの写真なのか。
自分なりに、写りに自信がある写真を選んだのだろうが、なんとナルシスティックな……。
ああ、やばい。
本当に恥ずかしい。

写真のバックは、当時愛読していた雑誌『宝島』から切り出した、藤原カムイの漫画だったはずだ。
なんか好きなコマだったんだろうね。知らんけど。

中庭で撮った集合写真の方がまともと言えばまともだけど、校風をそのまま反映したような緩い雰囲気だ。
懐かしいなあ。

前列中央が筆者。『国際基督教大学高等学校 1988年卒業アルバム』より引用

総合的に考えると、一番恥ずかしいのは高校の卒アルの個人写真だが、今の自分に直結しているノリもあるので否定はできない。
いずれにしても、どの卒アルに写っているのもとても平凡な僕の過去の姿だ。
まさかこんな少年が、あんな事件を起こしたり、勲章を授かったりするなんて……。

まあ、そんなシミュレーションの話でした。

もし万が一、これから僕が、良くも悪くも一躍有名になる機会があったら、マスコミの皆さん、ネット上にしばらく転がり続けるであろう、こちらの卒アル写真を、どうぞご自由に使ってください。


写真・文/佐藤誠二朗

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