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〈囲碁将棋トップ棋士対談〉里見女流五冠が見る藤井聡太とは? 藤沢女流本因坊は男女混合戦で優勝して男性社会に風穴! 勝負の世界を生きる2人の共通点「逆転負けが一番辛い」

集英社オンライン / 2023年4月30日 10時1分

里見香奈女流五冠と囲碁の藤沢里菜女流本因坊の夢の対談。これまでは天才少女時代や私生活について聞いてきたが、最終回となる今回は、それぞれの棋界の現状や、勝負の世界に生きるものにしかわからない極限の境地について語ってもらった。(全3回の第3回)

里見女流が見る藤井聡太

――現在、将棋ブームのまっただなかです。

里見香奈女流五冠(左)と囲碁の藤沢里菜女流本因坊(右)

里見香奈(以下、里見) やりにくさとか、マイナスなことはありません。子どものころは話題にされるのは嫌でしたが、今思えばぜいたくなことだし、今は注目していただけるとすごく嬉しいです。メディアを通して、将棋を知らない方々が、日常的に目にする時間がもっと長くなればいいなと思っています。



それに、最近だとスポーツ雑誌の『(Sports Graphic)Number』が将棋の特集をしてましたよね。あれは将棋界的にも一番びっくりしたできごとでした。

藤沢里菜(以下、藤沢) 囲碁や将棋は“マインドスポーツ”と呼ばれ、最近はスポーツのひとつとして見られていますしね。

里見 そうですね。将棋は肉体的に動くことはありませんが、脳の疲労が本当にすごい。対局が終わると1、2キロくらい体重が落ちてますし。

藤沢 私はあまり体重が落ちるタイプではないですが、それでも1キロくらいは減りますね。ただ対局中はきついと感じる暇がなくて無我夢中って感じです。

――ブームの火付け役である藤井聡太六冠について里見女流はどう思いますか?

里見
彼はプロになってからも伸びしろがものすごい。今はAIの強さがどんどん更新されていって人間ではかなわないってレベルになっているのですが、AIが見落としているものまで見つけて現状を覆せる可能性も感じさせてくれます。もうすぐ八冠とも言われていますし、今後どこまで強くなるのか楽しみです。

藤沢 いつか戦ってみたいと思いますか?

里見 現実的には不可能に近いですけど、棋士なら誰でも指してみたいと思ってますよ。

プロ棋士は何手先まで読んでいるものなのか

――若手棋士の成長は怖いと感じますか?

里見
去年、立て続けに若い女流プロが生まれて、若い方の層がだんだん厚くなっている実感はありますね。

藤沢 囲碁はこの4月に中学3年生になった仲邑菫ちゃんが13歳11か月で女流棋聖のタイトルを獲って最年少記録を作りました(それまでの記録は藤沢女流の15歳9か月)。
彼女は2年前に関西から東京に転籍してきて、それから同じ研究会に入って一緒にやっていますが、強くなるスピードが早すぎて……。恐ろしい存在なのは間違いないので、一緒に強くなっていかないといけないなと。

2015年にアルファ碁(コンピュータ囲碁プログラム)が誕生して、16年に世界ナンバーワン棋士を破ったんですが、当時はAIが人間のトップに勝つなんて思ってもなかったのでびっくりしちゃって。
でも今は自分が強くなるためにはAIをうまく活用していかないといけない。

世界最年少、9歳4か月でプロ棋士になった藤田怜央くんもいますし、AIで学んだ子がどんどんプロになってくると思うので、これからが楽しみですよね。

―――人間は何手先まで読めるものなのでしょうか?

里見
どうでしょう。序盤は変化が多いので、例えば、次の手の候補が7通りあって、それぞれでまた枝分かれして……となるので合計100手くらいはあっという間に超えます。
そういう状態がずっと続いて、終盤になるとその候補が3択くらいに絞られて、詰みで1択なるという感じでしょうか。
ただ終盤で選択肢が少なくなっても、それぞれの手を深く、さらに先まで読むようになりますね。

藤沢 囲碁も同じような感じで、感覚的によくない手は排除しつつ候補が枝分かれしていくから、合わせて100手、200手ぐらいは読んでいるのかな。

里見 でも対局中ずっと考え続けるのはさすがに集中力が続かないので、飲み物を飲んでひと息入れたり、席を立ったり、そういう“抜く”瞬間はつくりますよね。

藤沢 そうですね。お菓子を食べたり飲み物を飲んだり、相手が考えているときに少し目を閉じて休んでます。

「逆転負けが一番辛い」

――一番辛かった勝負って覚えていますか?

里見
それは覚えてないんですが、逆転負けは辛いですね。最近も西山朋佳さんを相手に必勝態勢から逆転負けをしたので、それが一番手痛い。

藤沢 私も逆転負けが一番悔しい。たくさんありますが、特に17歳のときの第34期女流本因坊戦で謝依旻先生に2連勝から3連敗して失冠したときは長いこと切り替えられなくて、夢にも出てきました。

里見 うれしかった対局はあまり思いつきませんが、初タイトル(倉敷藤花)を取った時は、初めてでしたし、応援に来てくれた家族が喜んでくれたので、嬉しかったです。

藤沢 勝った時はどちらかというとホッとした感じですよね。

里見 藤沢さんは(2020年の)男女混合の公式棋戦「若鯉戦」で、女性として初めて優勝されてますよね。新幹線の入り口ドア上の電光掲示板のニュースで知ったんですが、それが衝撃的で。将棋界では考えられないこと。やっぱり女性の活躍ってすごく嬉しいし、励みになりました。

藤沢 そう言っていただけて、すごく嬉しいです。

――9月に行われるアジア競技大会ではマインドスポーツとして囲碁が採用され、その日本代表に藤沢女流本因坊が選ばれています。

藤沢
スポーツ選手と同様、ジャージを着て対局するんです。来月からはドーピング検査もあって。大会自体はすごく楽しみです。

――藤沢さんの祖父の藤沢秀行名誉棋聖は「勝負についてわかっているのは百のうち六だ」という名言を残しています。おふたりはそれぞれの競技についてどのくらいわかっていますか?

藤沢
1……いや、0かもしれない。まだまだ未熟なので少しでも強くなりたい気持ちです。

里見 私も将棋について全然理解できていません。すごく奥が深いので自分の棋力を少しでも上げて、なるべく将棋のことを理解できるようになりたいです。

取材・文/内藤由起子
集英社オンライン編集部ニュース班
撮影/小木寛一
撮影協力/アカシヤ書店

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