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前年比16.7%増・4,508億となった定額制動画配信市場。「年に数人しか見ない映画でも配信する」動画配信大手のU-NEXT映画部が習い目指すのは、レンタルビデオ店の最終進化系

集英社オンライン / 2023年4月30日 12時1分

圧倒的な配信本数を誇る動画配信サービスU-NEXTで、映画の買い付けや特集を担当しているのが5人からなるU-NEXT映画部。映画館離れが危惧されている昨今、動画配信サービス大手としてどんな未来を見据えているのか。U-NEXT編成制作本部 映画部長の林健太郎氏に話を聞いた。

業界一を誇る定額制見放題270,000本以上

日本でもコロナ禍をきっかけに急速に拡大した動画配信(VOD)サービス市場。定額制動画配信(SVOD)の国内の市場規模は、2022年は前年比16.7%増で4,508億となり、市場シェアはNetflixが4年連続首位。2位に浮上したのがU-NEXTだ(*1)。



中でも圧巻なのは、業界一を誇る定額制見放題の270,000本以上というラインナップ数。うち映画の本数は15,000本以上にのぼる。最新作はもちろんのこと、未公開や旧作、マニアックな作品から権利関係で現在鑑賞が難しくなっているレア系まで多岐にわたりカバーしていて、多くの映画ファンから絶大な信頼を得ている。そうした多彩な映画をユーザーに届ける手段として、あたかもビデオレンタル店の棚組のような感覚で提示される特集企画も好評だ。

U-NEXT映画部のロールモデルは「伝説のビデオレンタル店」と語る映画部長の林健太郎氏。映画のラインナップ目標本数は3万本!

──まずは林さんの経歴から教えてください。

2014年にU-NEXTに入社する前は、当時ギャガの出版部門(のちキネマ旬報社)が発刊していたビデオレンタル業界誌『ビデオ・インサイダー・ジャパン』にいました。そこでの経験が、今のU-NEXT映画部が掲げる「ビデオレンタル店の最終進化形」という発想に繋がっています。

日本の映画文化を映画館とともに根底から支えてきたのは、ビデオレンタル店でした。もっともレベルの高い映像コンテンツを地上波テレビ局が無料で送り続けてきた日本において、何千万もの人たちがお金を払って映像を求めに行っていた唯一の存在がビデオレンタル店なんですね。

海外の配信事業者は参入当初、おそらくペイチャンネルの代替になろうとしていたと思いますが、私たちはレンタル店のような存在になれないかと考えていました。

ただし、当時の配信映画のラインナップは非常に少なくて、どこのプラットフォームでも2017年の時点で映画の見放題は2,000本程度でした。これではレンタル店のような姿とは程遠い。そこで覚悟を決めて一気にアクセルを踏んで買い付け、この6年間で7倍の15,000作品を超えるようになりました。

──それだけ本数があると、逆に何を見たらいいかわからないというユーザーも多いですよね。

かつての「いいビデオレンタル店」は、1人1人のお客さんに声をかけたり、棚組で提案をしていましたよね。「こんな作品が入ったよ」と渡してくれたりするところもあった。だから、その心配にはレンタル店がすでに答えを出してくれています。

僕自身、大学時代にそうやって店員さんにおすすめされた作品を見てきた経験があります。デジタルになったとしても、映画が大好きで仕方がない生身の人間が配信の向こう側にいるということがわかる方法はないかと、常に模索しています。特集作りに力を入れてきたり、U-NEXT映画部のメンバーがnoteで発信したりしているのも、その一環です。

映画館に送客するところまでがU-NEXTの使命

──動画配信サービスはどうしても“デジタルの顔つき”をしていて、中の人の思いや熱意が伝わりにくいというのは、確かにあると思います。また熱心な映画ファンからは、「配信映画は映画ではない」「映画は映画館で見てこそ」といった意見も含めて、線引きされるというか敬遠されることもありますよね。でも思い返してみると、少なくとも1990年代以降のビデオレンタル店と映画ファンの間には、対立するという構図はなかった。

そうなんですよね。DVDがぐっと勢いを増したのは『マトリックス』(1999)とPS2がリリースされた2000年。それ以前はVHSの時代でした。オリジナルビデオもたくさんあって、三池崇史監督や黒沢清監督などの名作もたくさんあり、ひとつの文化になっていました。

劇場公開作かオリジナルビデオ映画かといった区別はもちろん、海外のテレビ映画を日本では“未公開洋画”として普通の洋画と並べてリリースしていましたし、それほど境目はないと思っていました。僕自身は劇場で見ることとレンタル店へ行くことは別のことで、共存や競争といった考えもなかったです。それが今は配信になっただけだと思っています。

──実際にU-NEXTは「映画文化を守るためには劇場が元気でなければいけない」という方針で、劇場とのコラボレーションも実践していますよね。

U-NEXTのポイントを使えるようにするなど、全国の劇場との連携は10年ぐらい前からやっています。いつも我々が言っていることですが「映画は映画館があるからこそ映画なんだよ」と。僕らは映画館がなくなったら困りますし、映画館に送客するというところまで考えることが、U-NEXTのユーザーさんにとっても一番いいことだと思っています。

U-NEXTでは映画への出資も行っていますが、劇場公開のタイミングから一緒に盛り上げていきましょうというスタンスです。配信事業者が出資するというと、「すぐに配信をするのでは」とか「公開より先に配信をやるのではないか」と思われがちですが、我々はそんなことを期待しているわけではありません。

実際に劇場でヒットしないと、その後の二次利用でも無風で終わってしまうことも多いですから。収益の最大化を図る中で、パートナー側から「早めに配信してくれないか」と言われることは、もちろんありますけどね。
U-NEXTでは都度課金(TVOD)のレンタルと見放題(SVOD)の両方をやっていますが、そうした背景から、新作は必ずレンタルから始めます。かつ、劇場公開から2ヶ月以内など早いタイミングで配信をする場合は1000円台で配信をします。

お客様にとって、近視眼的に見たらこの価格設定はいいことではないのかもしれませんが、長い目で見たら映画の価値や豊かさを守ることに繋がると信じています。幸い、お客様からのネガティブな反応は少なく、「これだけ早いなら、この価格になるよね」とご理解いただけている印象です。

劇場→レンタル→見放題で映画を循環させる

©2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
U-NEXTにて好評配信中

──映画ファンの間では、劇場公開から配信までが早いと劇場に行かなくなるといった議論もありますが。

その懸念が当てはまるのは、公開後すぐにSVOD配信になる映画の場合であるように思います。高額TVODの仕組みは、中規模やミニシアター系の作品など、東京や都市部以外で鑑賞するのが難しいタイトルにこそ、映画ファンの需要があると思っています。

実際に地方の映画ファンの皆さんには喜ばれていますし、その分、映画製作側にも還元ができるので、意味のあることではないかなと。映画館はスクリーン数も限られており、どうしても人気タイトルに編成を集中せざるを得ない部分があるので、映画の多様性を守る受け皿になれたらという思いもありますね。

ただ、配信作品の買い付けにおいても当然、「ビッグタイトルはこれだけの人が視聴してくれるから、こちらに投資しよう」というふうに、数字だけ見ていると、どうしても多様性が作りづらくなる。どうにかそこを我慢して、年に数人にしか視聴しないようなタイトルも入れていく。これもまたレンタル店から教わった姿勢です。

昔、小津安二郎監督や成瀬巳喜男監督の作品のVHSを店頭に並べているお店があって、年に1回しか貸し出されないものもあったらしいんです。でも店主は「置いておかなきゃ駄目なんだ、それがないとお店じゃないんだ」と言っていました。U-NEXTでは黒澤明監督作を29本、小津は35本、成瀬は17本揃えるなど、まさに同じことをやっているわけです。

また、リクエストの仕組みも整備しました。今では年間3,000本を超えるリクエストに、映画部のメンバー5人で対応しています。それ以前もエゴサをしたり、送っていただいたメールなどからユーザーさんの声を拾っていたのですが、仕組みができたことで、さらに本数が増えましたね。

実際にこの2〜3年で、ユーザーや映画業界のみなさんからU-NEXTに対する信頼度を肌で感じられるようになりました。僕らの考え方がじんわりと伝わってきたのかなと。まだまだ途上ですが、手応えは感じています。

──映画館で映画を見るのがベストではあるけれど、家庭環境や住んでいる場所、仕事などによっても、劇場に足を運べる機会が物理的に制限されてしまう人も多いと思います。U-NEXTさんのような動画配信サービスなど、何らかの形で映画とつながっていられることが、業界にとっても重要に思えます。

僕らが目指しているのはまさにそこです。いろんな映画の見方、自由な選択肢を用意するということなんですよね。映画館で見る体験は特別ですし、映画館で見逃してしまった新作はTVODで見ていただけたらと。そしてアーカイブは見放題で見ていただく。アーカイブを見て、ある監督やキャスト、ジャンルに興味を持ったら、今度は新作を映画館に見に行く。この循環を作ることが大事だと思っています。

何らかの理由でこの循環が断ち切られると、「もう映画を半年ぐらい見てないよ」といったことが普通に起こり得ます。そこの循環を途切れさせないように、映画がずっと生活の中にあるという状態を作れたらいいなと思っています。

特にコロナ禍では、緊急事態宣言などで映画館に行きたくても行けなくなってしまった。人が映画館に行かなくなったら、映画が忘れ去られるんじゃないかという恐怖のようなものも業界内にはありました。そんなとき、僕らは配信でもいいからまず映画を見てほしいというメッセージを送りました。それはU-NEXTのユーザーさんに関しては伝わったと感じています。映画の循環が切れるどころか、さらに情熱が増したように感じましたし、それが実際に数字にも表れていました。

大きな話になってしまい、おこがましいのですが、僕らのゴールのひとつは映画人口を増やすことだと思っています。これからも、映画通が喜ぶマニアックでニッチなところを丁寧に拾っていく、そしてマス向けの映画で映画ファンを育てていく。この両方をバランスよくやっていきたいと考えています。

*1 GEM Partners調べ「動画配信(VDO)市場5年間予測(2023-2027年)レポート」より

取材・文/今祥枝

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U-NEXT映画部
2023年4月現在は総勢5名。100社を超える映画会社と向き合いながらの作品調達、映画作品をテーマ別にキュレーションした特集の制作、「ONLY ON U-NEXT」として打ち出す独占先行作品の選定と交渉、映画作品への出資、映画祭との連携等々、映画に関することの全般を手掛ける。

U-NEXT
https://video.unext.jp

U-NEXT映画部のnote
https://note.com/unext_movie

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