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【Jリーグ初のイスラエル人選手】ガンバ大阪のネタ・ラヴィはJリーグをどう見ているのか。「キャプテンの宇佐美貴史をはじめ、チームを牽引しようとする選手が複数人いることはポジティブで…」

集英社オンライン / 2023年5月3日 12時1分

Jリーグ初のイスラエル人選手としてガンバ大阪に加入した、ネタ・ラヴィ。イスラエルリーグのスター選手だった彼はJリーグでプレーする日々をどう感じているのか。本人に話を聞いた。(前後編の前編)

イスラエルリーグにはなくてJリーグにはあるもの

Jリーグ初のイスラエル人選手、ネタ・ラヴィがガンバ大阪の中盤で圧巻の存在感を示し続けている。

局面でのボール奪取力はもちろん、厳しい体制からでも前を向いてボールを配れる強さも頼もしい限り。来日当初は、初めて体感する試合の流れ、テンポはもとより、慣れない試合間隔に順応するのにやや時間を要したと聞くが、日本での公式戦出場も10試合を超え、チームにもJリーグにもアジャストしたと言っていい。


ⓒGAMBA OSAKA

「イスラエルでは試合は常に夜に行われていたので、実は僕には『デーゲーム』(昼開催の試合)の経験がほぼありません。そういう意味では食事を摂るタイミング、体の準備、睡眠時間までいろんな調整が必要で、来日当初はその『時間』へのアジャストというか、どうすれば昼間の時間にトップコンディションを持っていけるのかを探る必要がありました。

またプレー面でも、僕が以前プレーしていたイスラエルリーグに比べて、日本のサッカーはすべてのテンポが速いです。判断や思考をそこに合わせて狭い局面から早く抜け出したり、的確にボールを動かせるようになるまでに少し時間を要したところもあります。

でも、今は公式戦を重ねてJリーグの戦いに慣れてきたこともあり、繰り返し映像で自分やチームのプレーを見直して、どこに改善点があり、何を修正して臨むべきかを考えてきたことで、頭で描くことをプレーで表現できるようになってきました。もちろん、今のパフォーマンスが僕のすべてではないですが、少なからず理想的にプレーできる時間、シーンが多くなってきたという手応えはあります」

しかし、現在チームは17位と低迷しており、未だ彼のパフォーマンスがチームの勝利に直結しているとは言い難い。今季のガンバは新監督に就任したダニエル・ポヤトス監督のもとで昨年までとは大きく異なるサッカーに取り組んでいる中でチーム構築に時間がかかっているからだ。

22歳でキャプテンになった生粋のリーダー

ここまでの公式戦14試合で勝利したのはリーグ戦1試合と、カップ戦2試合のみ。それでも、ラヴィはいたって前向きだ。

ⓒGAMBA OSAKA

「プロサッカー選手にとって負けることは最大の屈辱です。ただチームが発展途上にある今、この事実をすべてマイナスだとは思っていません。敗戦から学んだ教訓は必ず、次の試合に活かされますし、チームの財産として蓄積されていきます。

実際、今は悔しい結果が続いていますが、この10数試合でも我々が得たものは確かにあり、成長も感じます。また当然ながらチームとしても、個人的にも分析を行いながら、より精度を高められるように取り組んでいます。もちろん、口で語るほどサッカーは簡単ではないので、洗い出した課題のすべてをすぐに試合で改善できているとは言い切れません。

それでも、少しでもプレーがよくなるように、ガンバを勝利に導けるように日々、最大限の力を注いでいますし、それが自分たちの使命だとも思っています」

そんなふうに胸を張るのは、以前に所属していたイスラエル・プレミアリーグのマッカビ・ハイファでの成功体験があるからだろう。13歳から同チームのアカデミーで育った彼がトップチームに昇格した2015年。かつてはリーグ3連覇を実現するなどイスラエルの強豪として知られたマッカビ・ハイファはタイトルから遠ざかる低迷期を過ごしていた。

そんな中、ラヴィはトップチーム昇格からわずか3年、22歳の時に同チームのキャプテンに指名され、就任する。その重圧は「とてつもなく大きかった」が、クラブ再建への使命感は彼を突き動かし、チームも古豪復活への道のりを歩んだ。

「22歳の自分に何ができるのか。どうすればチームが再び、タイトルを争える強さを取りもどせるのか。そのことをクラブオーナーをはじめ、いろんな人と話し合いました。その中で当時、クラブが見失っていた『チームがゴールに向かって同じ絵を描き、一丸となって突き進むこと』が大事だという考えに行きつき、そのことを常にチームに投げかけました。最初はごく数人の選手と同じ考えを共有することからはじめ、その輪を大きくするために、ロッカーでは常に一丸となって戦うことを仲間に求めたのを覚えています」

常勝軍団復活のために必要なこと

もちろん、改革は簡単ではなかったという。チームメイトからの理解は得られても、それがすぐに結果に結びつくことはなく、その事実が時にチームの成長を停滞させたこともあったそうだ。だが、自分の考えを根気強く仲間に伝えることを諦めなかった。

ⓒGAMBA OSAKA

「チームが成功を収めることができれば、全員で成功を分かち合えるし、全員が成功者となれますが、どんなに素晴らしい選手でも、チームの成績が伴わなければ、成功者になることはできない。だからこそ、練習前のクラブハウスで、試合前のロッカーでは常に僕たちは一丸となって進み、共に成功者になろうと伝え続けました。

僕たちは勝たなければいけないクラブにいて、そのクラブのために一丸となって戦わなければいけないんだ、と。そしてその過程はチームだけではなく、僕自身を成長させてくれたと思っています」

思えば、かつては常勝軍団と知られたガンバも、今現在の成績に限らず、2015年の天皇杯優勝を最後に『タイトル』から遠ざかっている。それどころか、近年は毎年のように残留争いに巻き込まれている状況だ。その姿と、かつてのマッカビ・ハイファには重なる部分が多いこともラヴィが現状に強く立ち向かう理由だろう。

「確かに似たような状況にあると思います。ただ、僕はまだガンバに加入したばかりで『これは違う』『ここは素晴らしいね』と言えるほど、このクラブのすべてを理解しているわけではありません。マッカビ・ハイファではアカデミーからトップチームに昇格した流れもあって僕自身のチームへの理解も深く、チームにすんなりと入っていけました。だけど、ガンバでは今はまだそこまでクラブのすべてを理解できていないし、逆に僕個人に対する信頼も、理解も今はまだ十分には得られていないと思います」

ガンバにはリーダーになれる選手がたくさんいる

そう慎重に話すラヴィだが、ガンバの未来は明るいという。

撮影/高村美砂

「1つだけ言えることがあるとしたら、ガンバにはマッカビ・ハイファでの僕のようにリーダー気質の選手がたくさんいるということです。これはクラブの将来を語る上でもとても重要なことだと思います。僕自身も、たくさんの仲間に支えられましたが、プロ選手が集まるプロの集団においてたった一人のリーダーしかいない状況では、長いリーグ戦を勝ち抜くことはできません。

その点において、キャプテンの貴史(宇佐美)をはじめ、先頭に立って、チームを牽引しようとする選手が複数人いることはとてもポジティブですし、彼らが中心となって互いに協力し合い、ハードワークを続ければ、必ず栄冠は取りもどせると思っています」

取材・文/高村美砂

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