1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

元ギャル男社長が渋谷のストリートで学んだ日本一のビジネスモデル。“年収1000万円の店舗スタッフ”を誕生させるためにブラック職場のアパレル・小売り業界に起こした革命

集英社オンライン / 2023年5月1日 7時1分

EC(ネット通販)の台頭、人手不足、地方の過疎化などの影響で、百貨店や商業施設、ブランドの路面店など、リアル店舗の統廃合が急ピッチで進んでいる。そんな現状を変えるために「オンライン接客」を可能にするサービス「スタッフスタート」を展開する株式会社バニッシュ・スタンダードの代表取締役社長の小野里寧晃氏と大前研一氏による対談を『リアル店舗を救うのは誰か ~今すぐ「店舗スタッフ」にECを任せよ~』(日経BP)より一部抜粋・再構成してお届けする。(前後編の前編)

『怒り』と『愛』が原点にある日本一のビジネスモデルだ

小野里寧晃(以下、小野里) 大前さんが主宰する新しい時代のビジネスモデル創造を志す企業経営者のネットワーク「向研会」で講演させていただいたのが最初のご縁でしたね。その後、経営者仲間や先輩がたくさんできたのですが、大前さんがことあるごとにバニッシュ・スタンダードを褒めてくださっていると聞いて、うれしく思っています。


小野里寧晃さん(左)と大前研一さん(右)

大前研一(以下、大前) 本当にいい会社だし、「日本一のビジネスモデル」だと思っている。僕は明治時代にさかのぼっていろいろな経営者を研究してきたが、小野里くんの事業がすごく意義があると思うのは、「怒り」というものが原点にあるから。特に店舗スタッフの方々はパートやアルバイトも多く、給料が逆立ちしても上がらないところがほとんど。美容関係も同様です。

岸田文雄総理は「給料を上げろ」と言って、給料を上げた会社には税制優遇や公共事業の受注の優遇をするとしているが、そんなおかしなやり方はない。一律に給料を上げろなんて、資本主義を壊すようなものだから。それ以上に、生産性が上がらないと給料は上げられないし、生産性が上がって人が余ったら辞めて外に出てもいいようにしなければならないのに、「クビにしないでそのまま雇い続けろ」と言ったら企業は儲からない。儲からないコストの高い会社に公共事業を発注するのは、国民に対する裏切りになる。こんなの、新資本主義でもなんでもないでしょう。

「スタッフスタート」のビジネスモデル

小野里 おっしゃる通り、アパレルや小売業界では、若い人だと手取20万円に届かない方も多いんですよね。長時間労働も当たり前ですし。

大前 それが、バニッシュ・スタンダードのサービスを使うと、本人の努力次第で自分の稼ぎを上げることができる。怒りに対して、解決策を出した。そしてこの仕組みには、ものすごく愛を感じます。素晴らしいと思う。

手取20万円弱、長時間労働は当たり前を変えるために…

大前 中国では個人インフルエンサーが自宅などから発信して、あっという間に大量にモノを売ったり大金を稼いだりしていますが、バニッシュのスタッフスタートは、お店を拠点に店舗スタッフが発信をしている。本人の知恵と努力に比例して収入を増やすことができるモデルは、すでに生命保険などの営業職にはあるし、社長以上の稼ぎをもらっている人もいる。でも、デジタルを活用してアパレルや小売りの店舗というある種、閉じ込められた場所から収入が増やせるというのは前例がありません。

ビジネス・ブレークスルー大学学長を務める経営コンサルタントの大前研一さん

小野里 スタッフの投稿を通じて、どれだけ売り上げに貢献しているかを可視化しました。そこで個人、あるいは店舗に対して、インセンティブをつけたり、評価制度につなげるように働きかけたりもしてきました。

大前 僕はビジネス・ブレークスルー大学や、オンラインでMBAを取得できる大学院を経営していて、今でいうリカレント教育をしている。例えば、事情があって高校までしか通えなかったけどすごく優秀な女性は、現場を知らなくてもフロアマネジャーになってしまう大卒の男性の下で冷遇されることが多々ある。僕は「寝首をかけ!」とハッパをかけている。オンラインで卒業資格を取れたら出世もできるようになるし、そういう報告を受けると、気持ちが良くて仕方ない。

「あなたの努力で人生を変えていける」。これが、バニッシュの事業の他との一番の違いだし、この観点から事業を組み立てた人は日本には今までいませんよ。

小野里 本当ですか。うれしいです。

「ロケーションを克服できるすごい仕掛け」

大前 でも、あんまり慢心してはいけない。愛をいつまで持ち続けられるかどうかが、この事業の成長や継続性に関わってくる。当初は売り上げの3~5%などとインセンティブを規定していたとしても、店舗スタッフがかなり稼ぐようになっていくと、だんだん削り始める会社が出てくる。それは良くない。なまけていたらそういうオーナーや店長が生まれてしまいます。VTuber・バーチャルライバー集団「にじさんじ」を打ち出すエニーカラーなどを見ても分かるけど、とことん人気が出て稼ぐやつは稼いでいい。

アパレルの人々はロケーション(立地)がすべてだと思ってきた時間が長く、高コストだけど好ロケーションの店舗の売り上げが良いのが当たり前だった。けれど、バニッシュの登場で広島とか山形とか、東京よりも圧倒的に客数が少ない店舗に所属するスタッフだ ったとしても、努力や仕掛け、才能次第で日本一の売り上げを獲得することができるようになる。

これはアパレルや商業施設、不動産の理屈、つまりロケーション・イズ・エブリシング(立地がすべて)の考え方を根本から覆すもの。これはうれしいことだと思う。地方の店舗では客数が少ないぶん、時間があるからこそ積極的に取り組めるという面もある。お客さまは全国にいるというわけです。

小野里 そうなんです。実際に、札幌や金沢など地方からの売り上げ上位者も登場しています。人気のスタッフのオンライン接客を受けてみたいとか、「会いに来ました」というケースも出てきています。

大前 かつては渋谷109とそのスタッフが憧れの的になっていたよね。カリスマ店員。ASEANやインドネシアなど、東南アジアでは今でも日本に行くなら109に行きたいという人も多くいます。これと同じことが、今度は全国で起きるということ。ロケーションを超えて、少しさみしいと思われる場所でも工夫した人が勝てる。自分の努力によってとんでもないお金持ちが生まれる。

「地方創生!」「東京に反旗を!」とまで大きな話ではないかもしれないけれど、気持ちがいい。怒りから生まれたビジネスを、愛を持ってやることで、ヒーロー、ヒロインが生まれる。日本でも世界でも革命を起こせると思います。

「年収1000万円の店舗スタッフを誕生させたい」

小野里 OMO(オンラインとオフラインの融合)の単なる手段ではなく、もっと本質にリアル店舗の価値を高めて、店舗スタッフの活躍の場を広げて、それによって売り上げを伸ばし、企業をサポートする。そして、年収1000万円の店舗スタッフを誕生させたい、というのが僕の思いなんです。それにしても、大前さんから「にじさんじ」の名前を聞くとは思いませんでした。

ギャル男時代の小野里さん(写真左)

大前 僕は面白い会社を見つけたら、すぐ調べるし、とことん追跡する。日本では、テレビショッピングやジャパネットたかたとか、通販生活など、昔売れた俳優さん、女優さんが登場して、その活躍を知っている世代の高齢者が購入するというビジネスモデルがすごく調子がいい。中でも通販生活はユニークだ。通常のカタログ販売は、カタログ到着後、

注文の電話は48時間に集中する。けれども、通販生活は面白い読み物があり、トイレに置かれたり長く手元に置かれるから、1か月間注文が入る。まれにみる物語性があり、売れていた女優、俳優が出てくる。売られているものは僕からしたら物足りないけれど、仕掛けは面白いよね。

もう一つ、僕らの勉強会「向研会」の仲間でもあるけれど、50代以上の女性をターゲットにした「ハルメク」も素晴らしい。お客さまの悩みをディスカッションし、それを商品開発につなげていく。一番の関心事は尿漏れだという。通販生活なら書けないけど、自分たちでリアルに話し合い、解決策を探り、商品開発を始める。すると、アパレルや薬・サプリメントなどのメーカーが提案をしてきたりする。これだけ雑誌が売れないといわれる時代に逆行し、発行部数が60万部に達して広告も殺到しています。

『リアル店舗を救うのは誰か ~今すぐ「店舗スタッフ」にECを任せよ~』(日経BP)

小野里 寧晃

2023年3月25日

1787円(税込)

‎288ページ

ISBN:

978-4296201198

「このままいけば、リアル店舗は『死ぬ』」――。

EC(ネット通販)の台頭、人手不足、地方の過疎化など、社会環境が大きく変わる中で、百貨店や商業施設、ブランドの路面店など、リアル店舗の統廃合が急ピッチで進んでいる。
そんな現状を変えようと奮闘しているのが、店舗スタッフによるコーディネート投稿など、「オンライン接客」を可能にするサービス「スタッフスタート」を展開するバニッシュ・スタンダードだ。サービス提供開始から僅か6年で年間経済効果は1500億円を突破、導入ブランドは2100以上と、快進撃を続けている。
本書では、同社を率いる小野里寧晃(おのざと やすあき)CEO/代表取締役が初めて明かす、「リアル店舗復活のための処方箋」が余すことなく語られている。

すべてのカギを握るのは、アパレルやコスメ、百貨店、家電量販店、家具・インテリアなど、あらゆる業界のリアル店舗で働く「店舗スタッフ」だ。店舗で培った接客ノウハウをオンラインでも発揮することでファンを獲得し、EC売り上げを最大化。その貢献を適正に評価してスタッフ個人や店舗にインセンティブを還元していくことが、リアル店舗を守ることにつながると説く。

その効果は絶大で、スタッフスタートを活用した投稿経由のEC売り上げの最高記録は、店頭の約100倍に当たる月間1億3000万円に到達。ECで月1000万円以上売り上げる店舗スタッフも200人以上と、リアル店舗とECを股にかけて活躍するOMO(オンラインとオフラインの融合)時代の「令和のカリスマ店員」が、全国で続々と誕生している。

従来、企業が推進してきた「オムニチャネル」は、なぜ失敗ばかりだったのか。店舗スタッフ起点のOMOに取り組む先進企業は何が違うのか。令和のカリスマ店員はなぜ売れるのか――。本書では、豊富な事例を基に数々の疑問を分かりやすく解き明かし、リアル店舗の明るい未来を描く。

「店舗スタッフこそ、最強のビジネスモデルである」

企業の経営層、EC担当者、店舗のエリアマネジャーのみならず、すべてのビジネスパーソンは、今すぐ認識を改めるべきときに来ている。また、「当事者」であり、リアル店舗の「救世主」である店舗スタッフの「あなた」にとっても必読の一冊となる。リアル店舗はもう1店も潰さなくていい!

大前研一氏 推薦!
「『あなた(店舗スタッフ)の努力で人生を変えていける』。これが、バニッシュ・スタンダードの事業の他との一番の違いだし、この観点から事業を組み立てた人は今まで日本にはいない。『怒りと愛』を原点にした、『日本一のビジネスモデル』だ!」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください