映像業界は、今が過渡期。それは言うまでもなく、動画配信サービスの台頭によるものだ。コロナ禍で同市場が飛躍的な成長を遂げたことは周知の事実だが、パンデミックがあるかないかにかかわらず、今の状況は近い将来に予測されていた。そもそも予定されていた未来が、数年早まっただけ。長年アメリカの映像業界を追ってきた人なら、誰もがそう考えるのではないだろうか。
私は雑誌の編集業を経て1998年にフリーランスの映画ライターとして活動を始めた後、2000年からアメリカのTV業界も並行して追い始めた。学生時代は名画座通い(一番通ったのは今はなき三鷹オスカー)に明け暮れたが、昔から海外のTVシリーズも大好きだった。
しかし業界全体を俯瞰して追うようになったきっかけは、2000年に放送が始まった『CSI科学捜査班』でプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーが、映画業界に続きTV業界でも名実共に覇者になったこと。以後、映画業界の人材は加速度的にTV業界に流入し、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー傘下の米大手有料ケーブル局HBOが牽引した質の向上をもたらしつつ、テレビ業界全体として過去最高の作品数を更新し続ける黄金時代(ピークTV時代)へと突入した。