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ドラマ『育休刑事』なるものまで放送開始。NHKはなぜ今”育休”テーマを頻繁に取り上げるのか

集英社オンライン / 2023年5月5日 14時1分

『あさイチ』やNHK NEWS WEBでの特集、そしてドラマ『育休刑事』……。NHKはなぜ今“育休”を頻繁に題材にしているのか。出生率が減少している今、若者に夢と希望を与えたいのか?

育休中の男性刑事が主役のドラマ『育休刑事』がNHKで放送開始された。
主役の秋月春風役は金子大地。育休取得中でも次々に彼の元へ事件が押し寄せ、事件を解決していく。春風の姉・吉野涼子役には前田敦子。彼女が事件捜査を素っ頓狂な発想と行動でサポートする様子が楽しい……のはいいけれど、ふと脳裏をよぎった「最近のNHK、“育休”関連の番組が多いのでは?」。

地上波をこよなく愛し、朝から晩まで視聴を続けている私の目はごまかせない。なぜ、今“育休”を頻繁に題材として扱うのだろうか。


「心が折れかけている」という男性の子育ての実状を放送しているが…

NHKで放送されている朝の情報番組『あさイチ』は、放送内容がとても潔い。午前中、民放局のワイドショーでコロナ、不倫、著名人の訃報といった時事ネタを流していようとも、知らんふり。更年期、レシピ、就活、介護などあくまでも生活に役立つ情報を提供している。私も番組のファンだ。同じようなニュースばかり流されて、視聴者が辟易している中、全く違う情報が流れてくるのは癒しのような存在だ。

そんな『あさイチ』で今、視聴者にとって関心が高い情報として選ばれたのは、男性社員、つまり夫の育休制度について。確か4月中旬に放送されていた。実際に育休を利用している男性に取材をして、育児うつなど男性育児の実態に触れていた。独身子なしの私も「へえ」と唸りながら、見ていたけれど違和感を覚えた。
彼らが話していることは、母親が育児をするにあたってぶち当たる悩みなのではと。

そのほかNHKオンラインでは、育休取得に関する取材記事が頻繁にアップされるようになった。対象者はプロレスラーや永田町の官僚と、職種はさまざま。ここにも「心が折れかけている」「育児をしながらメール対応」と『あさイチ』で見かけた、悩みが吐露されている。

写真はイメージです

ままならない、実状を伝えるということは、同じく取材をする仕事をしている立場からの見地として正しいと思う。ただ一方で「父親も育休を取りましょう」「企業が協力します」とさもハッピーライフを提示してくるという、事実もある。日本国内のどこかで、この件に関して日々議論されている。このダブルバインドは、いかがなものか。

まだ国内では浸透性の薄い、育休取得の現況

ふと周囲を見渡すと、育休を取得しているという男性に出会ったことがない。ちなみに大手出版社に勤務する編集者さんも「周りでは聞いたことがない」と言う。

独身ベースで生活をしていると、そういった人物に会う機会も減るという事実も否めないが、子供が誕生したばかりの男性から、聞いた話がある。育休制度を利用しないのか、と尋ねると

「無理無理。実際、社内で取得した人はいない。もし利用して復職をしても、自分の座席があるのかどうか保証もないし、仕事の勘を取り戻す自信もない」

ということだった。これは都内在住の男性の話。私の地元である静岡県浜松市で、知人に育休に関することを聞いてみると

「(育休という)風潮さえない。東京でやっているのかなあ、という感じ。そもそも地方だと噂話が早いんだよね。お父さんが朝から晩まで育児をしている様子を、近所のおばさんが知ったら、あらぬ噂も立てられそうだし。結局はお母さんが産休、育休を取るしかない」

こちらも生々しい意見である。ちょうどこのコラムを書いている当日、朝日新聞にこんなニュースがあった。クレジットカード会社に勤務していた女性が産休、育休を経て職場復帰すると、かつて37人の部下を率いていたチームが消えていたそう。女性は電話営業の新設部署に異動となり、裁判を起こしたという。母親でさえもこの有様だ。

育休ドラマ、コメディよりもシリアスを望む

NHKに話を戻そう。前述の情報番組、webでも男性の育休取得について立て続けに触れ、この春は満を持して『育休刑事』がスタートした。前述通り、ドラマは面白い。原作漫画も人気らしい。

でも漫画とドラマは相寄ることができない部分もある。
総じて思うのは「これ、育休中の刑事である必要はあるのか?」。

1話完結の本作では、ラストシーンで事件解決のカギを息子が握るという、タイトル回収に近い表現はある。でも贅沢を言わせてもらうのならば、もう少し育児中の現実を表現する内容でもよかったのではないかと思う。

情報番組、webとアプローチを都度変えて、男性の育休について取材を重ねてきたのであればネタは揃っているはず。コメディではなく、もっとシリアスなドラマの方がより反響を得られたのでは……というのが、独身なりに感じた、NHK、男性の育休取得、春の陣に対する意見である。

出生率が減少している今、若者に夢と希望を与えるのか、事実を伝えるのか。いずれにしても育休取得をする社員が、後ろめたくない環境をデフォルトにしたい。

……余談だが『育休刑事』主演の金子大地は、個人的に注目している俳優である。2019年にNHKで放送された『腐女子、うっかりゲイに告る。』で演じた、ゲイの高校生役の演技に胸打たれた。
こちらの作品、同性愛者であることを家族にも友人にも言えず、思い悩む高校生の葛藤が描かれている。放送当時は観ながら、大号泣。とてもデリケートな役を演じ切った金子さんであれば、共感を呼ぶ、本当の育児パパを演じることができると思うのだけど……。

文/小林久乃

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