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「ウインカーを出さない」「一時停車しない」など運転マナーの悪さとの関連は? 岡山県が「10万人あたりの交通事故死日本一」になってしまった意外な理由

集英社オンライン / 2023年5月6日 11時1分

2022年度、「10万人あたりの交通事故死者数で」でワースト1位という不名誉な記録を頂戴してしまったのが岡山県だ。岡山といえば「ウインカーを出さない」「一時停車しない」などの運転マナーの悪さでも知られるが、今回の記録には岡山ならではの意外な背景があった。

ウインカーを出さない? 一時停車しない?

2022年度、10万人あたりの交通事故死ワースト1位という不名誉な記録を頂戴してしまった岡山県。

警察庁によれば、岡山県の昨年10万人あたりの交通事故による死者数は3.94人。全国平均が2.0人だから、ほぼ2倍の発生率ということになる。

岡山県といえば、以前から交通運転マナーの悪い県としてつとに有名だ。たとえば、JAFが2017年に行ったアンケート調査。


「ウィンカーを出さずに車線変更をしたり、右左折する車が多いか?」という設問に、岡山県在住者の回答は「とても思う」が53.2%、「やや思う」が37.8%で、両者の合計が91%にもなっている。ちなみに、「とても思う」の全国平均は29.4%ほどだ。

岡山県の路上。ドライバーにウインカーを促す“独特の合図”が描かれている

上記同様の看板も

また2021年の同調査でも、歩行者が信号機のない横断歩道を渡ろうとしている時に「一時停車する」という回答が全国平均30.6%なのに、岡山はわずか10.3%しか停車しないという結果になっている。岡山県に入ると、道路わきに「とまろう岡山」と大書された看板がやたらと目につくのはこうした交通マナーの悪さの反映でもある。

こうなると、岡山県が昨年、人口10万人あたりの交通事故死者数ワースト1位となった原因は、こうした運転マナーのせいではないかと考えたくなる。そこで真偽を確かめるべく、岡山県警を取材してみた。
だが、返ってきた答えは意外なものだった。

「交通マナーの悪さが事故死増につながったのかどうか、データが不足していることもあってはっきりとはわかっていません。たとえば、JAF調査によれば、歩行者が道路を横断している時の県内の車の停止率は22年より21年の方がずっと悪い。なのに、21年の10万人あたり事故死者数は全国12位どまりです。交通マナーの悪さと事故死者数は必ずしもリンクしていないんです」(岡山県警交通部)

では、いったい何が死亡事故増加の原因なのか?

自転車事故に岡山ならではの理由

「10万人あたり事故死数が全国ワースト1になった原因は、22年の死者数が前年より17人も増えて74人になったことに尽きます。ただ、そこで目立つケースがある。それは自転車事故による死者数です。22年の死者数は21年から倍増して18人にもなりました。その結果、昨年に増えた17人の交通事故死のうち、自転車に乗って亡くなられた方が半数以上の9人を占めることになったんです」(前同)

つまり、岡山県警は自転車事故による死者増が10万人あたりの交通事故死数を押し上げ、ワースト1位になったと考えているということらしい。しかも、その自転車事故死にはある特徴があるという。

写真はイメージです

「自転車単独による事故死が多いんです。それも走行中に誤って用水路に落ち、死亡するというケースが目立ちます」(前同)

たしかに岡山県内の交通事故データを調べると、22年の自転車の死亡事故18件中、単独事故は半数の9件。そのうち、用水路への転落死が7件にも達している。これはかなり異常な数字だ。

なぜ、岡山県では自転車の用水路転落死が多いのか? 現地のサイクリング事情に詳しい「岡山県サイクリング協会」に聞いてみた。

「瀬戸内海に面した岡山の南部は干拓地が多く、そのせいか、やたらと用水路が多いんです。それも昔に作られたために、形状がまっすぐでなく、複雑に曲がりくねっていたりする。用水路の幅や深さもさまざまで、落ちたらとても助かりそうにもない深いものから、水深数十センチほどの浅いものも。

ただ、浅い用水路でも自転車ごと転落した衝撃で気を失い、溺死することも少なくない。他にも大雨で道路が冠水すると、用水路がどこにあるのかわからず、自転車ごと転落したというケースもよく耳にします。こうした危険な用水路が多いことが、自転車死亡事故の多発につながっているのでしょう」

用水路の総距離は日本―ベトナム間に匹敵

写真はイメージです

岡山サイクリング協会によれば、用水路の総延長距離は岡山市内だけでも約4000キロになるという。4000キロといえば、日本からベトナムまでの距離に匹敵する。そのため、岡山県では用水路の危険性が認識されながら、事故防止策が追いついていないのだという。

「行政サイドで用水路に自転車が転落しないよう、懸命にガードパイプや水路蓋を設置しているのですが、あまりにその総延長距離が長いため、まったく追いついていないのが実情です。県内の用水路すべてに安全対策を施すのは予算面から考えても不可能だと思っています」(前同)

対策の不備を岡山県警も認める。

「ガードパイプなどの安全施設を設置するのは警察でなく、用水路の管理者の管轄。そのため、警察では転落策の徹底を管理者に何度もお願いをしているのですが、予算の制約もあって遅々として進んでいないというのが実情です」

これでは自転車の用水路転落事故は減りようがない。4月1日から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されたが、こと岡山県にかぎってはヘルメット普及の前に用水路のパイプガードや水路蓋の設置義務化を進めるべきなのでは?


取材・文/集英社オンラインニュース班 写真/pixta

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