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「お金目的でも性的目的でもなく援助交際を…」父はDV、母は宗教、元彼は依存体質…苦悩する宗教2世がそれでも父親の暴力を今も「虐待」と呼ばない理由

集英社オンライン / 2023年5月9日 17時1分

「1ヶ月で15人くらいの男性に会いました。お金目的でもなく、性的な目的でもない。『3万円出すよ』と言われても、『1万円でいいです』と言っていました」と語るマイさん(仮名・26歳)。リストカット、不登校、万引き、ホームレス生活…彼女を苦しめていたのは、父親のDVと家族の宗教問題だった。

父親を殺そうと、包丁を持って枕元に

「小学生の頃から死にたいと思っていました」そう話すマイ(仮名、26歳)は、小学校の高学年頃から自殺を考えていた。

幼少から宗教問題、家族問題で悩んでいたというマイさん(仮名)


幼稚園の頃から酒を飲むと暴れる父親の姿を見ていた。仕事の愚痴を言ったり、母親へのDVも繰り返していた。そんな中で、母親が立正佼成会に入信した。そんな母を父親は「頭がおかしい」と言っていたという。マイの周囲には佼成会の関係者は多かったのだろうか。

「小学生の頃、親が信者という同級生は一人いました。また、父方の祖母が立正佼成会の信者でしたが、いろんな宗教を転々としていたようです。祖父は天理教で、信仰する宗教は違いました。困っている母を見て、祖母が立正佼成会を紹介したようです。父は入信していません」

マイも入信するように誘われた。

「少年部があり、(マイが住んでいる)地域の中で、子どもの信者が少ないので、参加してほしいと言われました。悪い人たちではないだろうと思ったんですが、(信仰は)受け入れられなかったんです。病気が治ったら、仏様のおかげと言われていましたが、そういうのが嫌だったんです」

だが結局、入信し、少年部に参加した。

「抜けると言ったらどう思われるんだろうと考え、苦しくなって、死のうとしたんです。そのせいで地域の教会に連れて行かれました。それでも少年部を抜けたいと思って、家族に言ったんです」

家族内の宗教問題は、マイにとっては家族問題そのものだった。

「中学に入る頃になっても、父親はお酒を飲んで暴れても、翌日になるとまったく覚えておらず、普通に接してきました。いったい、どちらの父が本当の父なのか、と思っていました。しばらくお酒を飲まない日が続くと、もう暴れることないのかな、と期待するんですが、また、お酒を飲んで暴れました。その結果として、父への恨みが募り、『殺したい』と思ったこともありました」

ある晩、父親を殺そうと、包丁を持って枕元に立った。

「包丁を首元に近づけました。1分くらい考えました。殺したいんですが、自分の人生に影響が出てしまうと思ったんです。それにお酒を飲んでいない父は優しい。殺すのをやめました」

母親が宗教団体の婦人部長に

マイは、父が母に対してDVをする光景を覚えているが、母親は「それでも昔よりはマシ」と言っていた。暴力を受けても、離婚を考えないのは、両親ともが、離婚した親に育てられた経験があったからだ。

そのころ、母親は、婦人部長になるくらい立正佼成会にのめり込んだ。父親はそんな母親に対し、「宗教活動をしているから、家事がおろそかになるんだ」と言った。両親が揉めることが日常だった。

マイは中学では部活に入ったが、宗教活動から逃れるための口実だった。ただ、宗教と家族問題で葛藤を抱えていたことで、中2の二学期の頃、学校へ通えなくなった。さらに、酒を飲んだ際の父の暴れぶりがますます酷くなった。

写真はイメージです ©shutterstock

「そんな生活が耐えられないので、『死んでやる』と思ったんです。近所の公園で初めて手首をカッターで切りました。リストカットでは死ねないとは思いましたが、当時の思いとしては、死ぬつもりでやりました。爪をむしったり、タオルで首を絞めることもありました。結果、落ち着くんです。それらは自傷行為だったと思います」

そんなある日、父親がマイの胸ぐらを掴んで、「お前は社会のゴミだ」と怒鳴った。それを見かねた母親が珍しく止めに入った。

マイは、もうどこか遠くへ行ってしまいたいと思い、徒歩1、2時間はかかる駅までの道のりを歩いた。その後、帰宅すると父にパソコンを壊されていた。

「中2の頃からツイッターで繋がっていた人がいました。いろんなことを相談していた高校生だったんですが、救いになりました。その高校生も悩みがあり、うつ病の診断を受け、自傷もしていました。会ったことはないですが、恋愛をしていました。当時の唯一の相談相手でしたが、パソコンが壊されたので、一時、連絡が取れなくなりました」

その後、相談相手と連絡が取れないこともあり、マイのリストカットが激しくなる。

「リスカが酷くなったので、保健室に呼び出されました。養護教諭に『自傷しているの?』と聞かれましたが、私は『言いたくない』と、拒んでいました。結局、バレてしまったのですが、『親には言わないで』とだけ頼みました。帰宅すると、母がずっと泣いていました。母は『あなたの体は私の体と一緒よ』と言いました。気持ち悪いなと思って、『私の心配じゃなく、自分が辛いってこと?』って怒りました。もう、母は負担でしかない」

ひと目惚れした彼氏の家は
エホバの証人を信仰していて…

その後、高校へ進学した。

「不登校だったわりには勉強ができたほうだと思います。でも、内申点が心配だったので、昼間定時制に行くことになりました。そこで出会った人のせいで、さらに人生が狂わされました」

高校では、ひと目惚れをした人と付き合うことになったが、依存体質な彼氏だった。彼は母親から暴力を受けており、マイの目の前で彼氏が殴られたこともあった。そのため、彼氏を家に泊めることも多かった。

「彼氏は授業をサボる。自分もサボらされる。私が離れると、彼氏が過呼吸になるんです」

いつしか、依存体質な彼氏がいなければ、マイも「存在価値を失う」という共依存関係になっていった。そのため、高校を中退し、一緒に住むために働いた。ただ、彼氏はマイがいないと寂しがり、バイトに行こうとすると、「行くな」と怒った。結局、無断欠勤が続き、彼氏の祖父母の家に2人で居候した。彼氏の祖父母はエホバの証人の信者だった。

「エホバの証人の信者の家なので、教えとして『婚前の性交渉は禁止』です。一緒の部屋には寝かせられないということになりました。ただ、彼氏が『怖い夢を見た』と言うから、彼の部屋に行ったら、〝別人格〟のように豹変するんです。そのうち首を絞められたりすることも多くなって。バイトもできず、彼氏の祖父母の家からお金を盗むようになったんです」

盗んだお金は、ショッピングセンター内のゲームセンターなどで使うことが多かったが、ゲームに負けたらマイは彼氏に殴られた。お金がなくなると、メダルゲームに使うメダルを拾ってくるように言われたり、誰かの財布を盗むように指示された。そうこうするうちに彼氏の祖父母宅からも追い出された。

写真はイメージです ©shutterstock

「彼氏からのDVがひどくて。傘で殴られたこともありますし、服が血だらけになったこともありました。『電車に乗り遅れたのはお前のせいだ』と言われたり、多目的トイレで『土下座しろ』と言われたりしました。行くところがないので、神社のトイレなどで泊まりするなど、2人でホームレス生活したこともあります。

食べるものはスーパーで万引きしました。お風呂だけは彼氏の祖父母宅で借りました。エホバ信者としての慈悲もあったようです。警察には5、6回補導されましたが、実家に戻されただけ。また、彼氏が迎えにきました」

お金目的でも性的目的でもなく援助交際を

いつしか援助交際を行うようになっていったマイさん

結局、彼氏とは18歳のころ、別れた。

「彼氏と付き合っている間は、自傷しようとすると、怒られ、殴られたことがありました。彼氏のいる横で市販薬のオーバードーズをしたこともあります。彼氏との関係に疲れて死のうとしたんです。『もう無理だ』って思ったんですよ。家に帰ることもできない」

彼氏と別れると平和になった。その後、マッチングアプリで多くの男性と会い、援助交際をした。

「1ヶ月で15人くらいの男性に会いました。お金目的でもなく、性的な目的でもない。ただ、心の隙間を埋めたいだけ。『3万円出すよ』と言われても、『1万円でいいです』と言っていました。人と会っていればそれでいい」

そんな人生を送る彼女だが、家族に暴力をふるい続けた父親を嫌いになりきれないと言う。だからこそ、父親からの暴力を今でも「虐待」と呼ばない。家族の中で加害者である父親に同情をしてしまっている。

「お父さんがそうなったのは、幼少期の環境がそうさせたと思うので、責められないです」


取材・文/渋井哲也

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