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エクセル世界一に輝いた女子高生から学ぶ驚異のグラフ術

集英社オンライン / 2022年5月12日 7時1分

マイクロソフト社の表計算ソフト「エクセル」の使用テクニックを競う世界コンテストで、日本の女子高生が初めて、世界一に輝いた。審査員に評価された見やすいグラフを、彼女はどうやって作っているのか。ポイントを聞いた。

福岡県立八幡高校に通う中園愛美さん。昨年開催された「マイクロソフトオフィススペシャリスト世界学生大会2021」の「Excel365&2019」部門で世界一に

2021年11月に開かれた、高校生以上の学生がMicrosoft Officeのスキルを競う「マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)世界学生大会2021」において、福岡県立八幡高校2年生(当時)の中園愛美さんが表計算ソフト「Excel365&2019」部門で優勝した。日本人の高校生が世界一になるのは初の快挙だった。



同大会の試験時間は3時間半。ソフトに関する知識や操作スキルだけでなく、与えられた課題テーマに対する出場者自身の意見や、それを補足するための統計データの分析なども求められた。

「他の出場者とどう差別化するかを考えたとき、グラフの見やすさは必要だなと思いました。新聞や参考書などを基に、人々を惹きつけるグラフづくりを大会前にたくさん勉強しました」と中園さんは振り返る。

中園さんの強みは、グラフの「見栄え」。誰もがわかりやすいよう、できるだけシンプルにすることを心がける。それが世界大会本番でも活きた。そんな若き達人に、ビジネスシーンでも役立つエクセルのグラフ作成術を教えてもらった。

目に優しい色を使う

ビジネスの現場では、エクセルを使ってグラフや表を作成したり、それをプレゼンテーション資料に活用したりする機会は多い。けれども、パッと見ただけでデータの中身が頭に入ってくるようなグラフを作るのに苦労した経験を持つ人は少なくないだろう。

中園さんがグラフづくりにおいて何よりも気を付けているのが、その見やすさである。

「私は決してすごいことをしているわけではありません。まずはグラフを見て、ここの数値は高いとか、上がったり下がったりしているといった傾向をつかみます。その上で、強調したい部分の色を変えたり、補足説明の言葉を加えてみたりしています」

取り扱うデータの分量が多くなると、どうしても表示されるグラフやそれに紐づく数値の数も増えてしまい、乱雑で見栄えが悪くなってしまう。

「例えば、細い棒グラフがたくさん並んでいると見にくくなるので、グラフ1本1本を太くしたり、色をちょっと変えてみたりしています。あとは、グラフの数値の数を減らして、際立たせたいものだけに付けることもあります。その場その場でやり方は変わりますが、ごちゃごちゃしたビジュアルはやめて、シンプルさを心がけています」

こちらが中園さんの作例。目に優しい色を選ぶのが特徴。その上で、強調したい部分の色は濃くしたり、フォントを大きくしたりと、とにかく見やすさを重視する

棒グラフの線は太くして、もっともデータが大きいところ(このグラフで言えば人数が多いところ)だけ色を濃くしている。また変化が激しい「1世帯当たり」人数は折れ線グラフにして変化量を見やすくし、人数もグラフに直接書き込んでいるのがわかる。

エクセル作業の様子

目立たせたいところでも、真っ黄色のような原色を使用するのではなく、マイルドな黄色にするなど、全体的に目に優しい色の中でメリハリをつけている。ただし、色彩の理論などを勉強しているわけではない。「数値が低いからブルーにしたり、高いからレッドにしたりと、自分の直感でやっています」と中園さんは話す。

折れ線グラフはマーカーを使おう

見栄えやデザインは、個々人の感性によるところも大きい。ただ、そうした感性に依存するのではなく、誰でもすぐに使えるエクセルの機能のうち、最低限これだけはやってみてほしいというものを中園さんは紹介する。

「折れ線グラフのマーカー(値の部分に使う丸などの印)は大事だと思います。マーカーを付けるだけでも見え方がだいぶ変わります。あと、データを範囲指定して自動的に生成されるグラフだと、縦軸の数字に沿って薄い横線が入りますよね。これを全部消すとスッキリします。折れ線グラフだったら、マーカーに数値を付けることができるので、毎回わざわざ縦軸の数字を見なくても済みます」

エクセルのグラフの自動生成にお任せすると、横軸に細い線が入る。中園さんはスッキリさせるためこれを全部消す

横線を消して、マーカー(折れ線グラフの丸い印)を使う。上のグラフと比較して、かなりわかりやすくなった

中園さんは続ける。

「その中で注目させたい数値のサイズを大きくしたり、太字にしたりする工夫はすごくいいと思います」。

ただし、フォントサイズや色の種類には注意が必要で、多用すればいいというものではない。中園さんが使うのはせいぜい2、3色。フォントサイズは、タイトルを一番大きくして、数値は基本的にそろえる。上述したように、強調したい場合にのみ、その数値だけ他よりも少し拡大したり、太くしたり、色を変えたりする程度だ。

「別に難しいことをやる必要はありません。簡単な工夫で見栄えはずっと良くなるはずです」と中園さんは笑顔でアドバイスする。

見栄えを良くしようと考えて、ついついグラフにいろいろな表現を盛り込みすぎになるが、逆に演出を抑えてシンプルに描くのが、中園流グラフ術の極意である。

新聞記事なども参考に独学でエクセルを習得

中園さんがエクセルの勉強を本格的に始めたのは高校1年のとき。学校の「情報」の授業で、Microsoft Officeソフトの「ワード」「パワーポイント」とともに触れたのがきっかけだ。

「3つの中で、エクセルが一番難しそうだと思い、チャレンジしてみたいという好奇心で選びました。難しいと思ったのは、ワードなどと違って計算式があること。でも、将来のためにも今のうちに勉強しておくことにメリットを感じました」

ソフトの基本的な操作方法は、参考書などを読んで独学で習得した。とりわけグラフや表に興味を持ち、新聞記事などを読んでは、「これはどうやってつくっているのだろう?」「こんな表現の仕方があるのか!」と独自の感性を磨いていった。教材はどこにでもあるのだ。今回、世界一になったことで、高校の先生からも「エクセルを教えて」などと言われたそうだ。

パソコン歴そのものは長く、幼稚園のときにはすでにタイピングソフトで遊んでいた。小学校に入り、母親が勤めるパソコン教室に通い始めてから、ますますパソコンを使う楽しさが増していった。そんな折に出会ったのが「毎日パソコン入力コンクール」だ。これは、毎日新聞社および日本パソコン能力検定委員会が主催する、タッチタイピングの速さや正確性を競い合う大会である。小学2年生で初めて全国大会に出場し、そこからパソコンソフトの操作技術を向上させる気持ちに火がついた。

過去には「毎日パソコン入力コンクール」全国大会で優勝した実績も

「負けず嫌いという性格もあって、うまくいかないと悔しいからもっとやろうとか、大会で良い順位を取るために頑張ろうとか、毎日練習していました。練習すればするほど成果は出るので、達成感を持って取り組んでいました」

中園さんの努力はしっかりと実を結び、小学6年生のときにコンクールで日本一に輝いた。

根っからのパソコン少女だった中園さんは、当然のように理数系だと思いきや、「数学は苦手で、バリバリの文系です。得意科目は英語」と言う。また、小学生のころは地域の祭りで太鼓を叩いたり、中学時代は陸上部で短距離走の選手だったりと、どちらかといえば体育会系であることにも驚いた。

将来は、データを駆使して商品の販売分析などを行うマーケティングの仕事に就きたいと、夢を語る。エクセルのデータなどを使って、資料づくりに悪戦苦闘しているビジネスパーソン諸氏も、中園さんのグラフ作成術から学べることはあるはずだ。
(写真は全て中園さんから提供)

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