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なぜ彼女たちは“下着”を譲ってもらうのか? 令和の花嫁たちのリアル

集英社オンライン / 2022年5月15日 10時1分

「#幸せバトン」や「お譲りアカウント」という言葉をご存じだろうか。結婚式を終えた卒花嫁が、これから結婚式を挙げるプレ花嫁に、自分が結婚式で使ったドレス用の下着やグローブ、フォトプロップスなどのアイテムをバトンすることが、近年流行している。これらのトレンドの背景を取材した。

私事だが、新型コロナ流行の1年前に夫に出会い、外出自粛前に滑り込みで同棲。今年2月に結婚した。目下、結婚式の準備を進めているところである。

友人の結婚式に数多参列してきた30歳。しかし、いざ自分が結婚式を挙げるとなると、その無知ぶりに呆然とした。

そこで、株式会社ウエディングパークに結婚式の最新事情を取材。#幸せバトンに、お譲りアカウント……令和の花嫁の結婚式準備のトレンドの背景を聞いた。


令和の結婚式=おもてなしのイベント

――「ナシ婚」「地味婚」という言葉をよく聞きますが、結婚式をする人は減少傾向にあるのですか?

結婚式市場は経済にとても左右されやすく、景気が悪くなると挙式件数が減るという明らかな傾向があります。

しかし一方で、災害で減ることが少ないのも結婚式の特徴です。事実、2011年の東日本大震災後は「何があるかわからないからこそ、家族の繋がりを感じられる結婚式を大事にしたい」という流れがあり、件数が減ることはありませんでした。

コロナ禍で結婚式自体は減っていますが、実はコロナ前は結婚式にかける費用の相場は上がりつつあったんですよ。「家族や大事な人に感謝を表すイベント」として結婚式をとらえ、式場やお料理など、お金をかけるところにはしっかりとかけて、ゲストにおもてなしをしたい、と考えるカップルが増えていたのです。

コロナ禍の今でもその傾向は変わりません。交通面の利便性やゲストの快適さ、料理の質を重視するカップルが多いんです。

体験をリレーする「お譲りアカウント」

――ところでInstagramで情報を探していると、結婚式を終えた卒花嫁が、次に式を挙げるプレ花嫁に自分が結婚式で使ったアイテムを譲るアカウントの運営をしているのを見かけます。「#幸せバトン」というハッシュタグのついた投稿もたくさんありますが、こうしたSNSでの交流は最近始まったものなのですか?

Instagramの前はブログなど、以前から花嫁同士の交流は行われていたんです。例えば、有名挙式場で式を挙げた方々が“〇〇嫁会” (〇〇の中には式場名が入る)というコミュニティを作って情報交換をするとか。

その場が数年前からInstagramになり、よりリアルタイムで事前準備、当日のことが発信できるようになりました。それを見たプレ花嫁が、自分の式の参考にし、演出やドレスなどを考えるという構図ができたんです。

――式準備や式自体のレポはわかるのですが、「お譲り」にまで発展するのはどうしてなのでしょう?

おそらく、情報発信側の「自分が準備したものを誰かに譲ることで、その思い出や努力が消えずにリレーされてほしい」という思いと、フォロワー側の「一生に一度の失敗できない式だから、おしゃれな人の確実なものを譲ってもらいたい」という思いがお譲りアカウントという文化に発展したのではないか思います。

お譲りアカウントでは、主にグローブやドレス用下着、そのほかフォトプロップスやテーブルナンバーなどのやりとりが多いですね。

節約したい、でも失敗はしたくない。だから…

――それらのアイテムにはどのような共通点があるのでしょうか?

ズバリ、そんなに目立たなくて、そこまで強く印象に残らない部分。下着はもちろんですが、グローブもそこまで注目を集めるものではありませんよね。フォトプロップスなども写真には残りますが、メインではないし、なんなら用意しなくても良いもの。そういった「強いこだわりがないところ」をお譲りという形で用意する方は多いと思います。

――たしかに、花嫁のグローブを気にしてみたことはないかも。でも、それならフリマアプリでも良い気がするのですが……。

もちろんフリマアプリも多く活用されていますよ。ただ、お譲りアカウントがフリマアプリと異なるのは「譲ってくれる人の式がどんなものだったか」までが見えるところ。節約はしたいけれど、人生でたった一度の式の細部まで絶対に失敗したくないという堅実な思いがそこにはあるのだと思います。

――「お譲りアカウント」を運営されている方の多くは、準備から丁寧にレポートを書かれている人が多い印象です。他人の結婚式が解像度高く見えるInstagramだからこそ生まれた文化ですね。そして、花嫁さんが堅実かつ計画的に準備されていることに改めて気づきました。

晩婚化と言われて久しいですが、裏を返せば経済的に自立してから結婚に踏み切る人が増えたということ。自分たちだけの経済力で式を挙げるというカップルも増えていることが、堅実な準備の背景にあると思います。

一生に一度のものだから

――結婚式準備のコツが少しわかった気がします! 準備が楽しみになってきました。

それはよかったです。多くの花嫁さんも、結婚式を単なる「通過儀礼」ではなく、準備から式後までを「一連の体験」と捉えているからこそ、情報をシェアしているのだと思います。SNSの発信をやらなくても、本来結婚式は成立します。しかし彼女たちは時間をかけてその体験自体を、式が終わった後も大切にされているんです。

現代の結婚式は、結婚した二人が式準備によって互いの価値観をすり合わせていく時間だと思います。どちらかに任せきりでは成立しないものですから、何にお金をかけるか、どこは削ってよいかを、ホストの二人が明確な意思をもって選択する時代になっています。二人ならではの結婚式がそれぞれにあり、もはやそこにはテンプレートはないのかもしれませんね。

あらゆる物事が多様化されている時代。結婚式も例外ではないようだ。それぞれにとっての「二人らしい結婚式」が当たり前になっている中で、それを支えるのがまさにお譲りアカウントなどの「花嫁たちのネットワーク」だったのだ。

結婚式の常識がアップデートされている今、より多くのカップルが「こうあるべき」から「こうしたい」と思う形を見つけられるように願っている。

取材協力
株式会社ウエディングパーク

結婚準備クチコミ情報サイト「Wedding Park」をはじめとする、複数のウエディング専門メディアを運営している。Wedding Parkは「自分に合う結婚式の見つけ方。」というコンセプトのもと、結婚式場のクチコミや会場データ、先輩カップルの結婚式準備レポートなどあらゆる情報を公開している。また、同社が運営する「結婚あした研究所」では結婚にまつわる各種調査なども実施、公開している。

取材・文/マサキヨウコ

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