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あちこちつまんで学べる学生はなぜ五月病にならないのか? 社会人も見習いたい「自分の居場所を複数化する」技術

集英社オンライン / 2023年5月16日 7時1分

「五月病」と言われるように、学生、社会人を問わず、5月はどうもやる気の出ないシーズンだ。サボり癖の解消や、「閉じた環境」に自分を置かないためにやるべきこととは? 迷える大学生に向け、大学教員でもある人気ライターが新入生の12ヵ月を徹底ガイドした『文庫版 大学1年生の歩き方』より一部を抜粋、再編集してお届けする。

サボり癖はおそろしい病気である

入学から1か月が経ち、サークル合宿に参加したり、クラスの友だちと遊びに出かけたりと、勉強そっちのけで動き回った人も多いことでしょう。

その一方で、5月は「五月病」のシーズンでもあります。大学の雰囲気に馴染めず、高校時代の仲間とつるんだり、ひとり暮らしのアパートに引きこもったりした人もいるはず。自分が新しい環境にどういう反応を示す人間なのかを知って、今後に活かせばよいだけのことですので、今大学が楽しすぎて躁状態の人も、つまんなすぎて鬱状態の人も、「これが自分なんだ」と決めつけすぎないようにしてほしいですね。人間、揺らぎがあってなんぼですから。



そして、どんなGWを過ごした人にも平等にやってくるのが、中だるみ。「なんか、授業出たくないな〜」というやつですね。心の底からつまらない授業だから出ないというのは、まあ仕方がないと思うのですが、キケンなのは、特にこれといった理由もなく授業をサボるパターン。この、なんでもないようなサボり癖が、実は一番危ない! 放っておくと重篤化する病気みたいなものだと思ってください。

写真はイメージです

自分のサボり癖をナメたばっかりに留年・退学するはめになった学生を、わたしは何人も知っています。彼らは勉強ができなかったわけじゃないし、死にたいくらい大学生活が辛かったわけでもない。それなりに友だちもいるし、サークル活動も楽しんだりしているんです。

でも、なんとな〜く授業に出ないでいたら、いつの間にか授業内容はちんぷんかんぷんになってるし、久しぶりに授業に出たところで周りはすでに仲良しグループを作っているので、嫌でも壁を感じてしまう。もちろん、頑張れば巻き返せる遅れなのですが、面倒くささが勝って「もう大学辞めちゃおうかな」と思ってしまう人が、本当に多いのです。

必死で勉強して入った大学だろうがなんだろうが、面倒くささに負けるときは負けるんですよね。わたしの知り合いで、面倒くささに負けて一度は退学したものの、「やっぱ辞めるんじゃなかった!」と、同じ大学に入り直した人がいましたが、あれは本当にやらなくていい二度手間だったと思います。

とか言ってるわたしも、実は結構危なかったんです。授業よりサークルが楽しくて部室に入り浸っていました。小さなバンドサークルだったのですが、半分プロみたいな活動をしている人もいて、都会的でとにかくオシャレだった。しかもトーク上手な先輩が多くて、教室にいるより、部室にいる方が何倍もおもしろい話が聞けてしまうのです。「こりゃ教室で授業なんか出てる場合じゃねえ!」……そう思ってしまったら、もうおしまい。

日が暮れるまで部室で粘り、夜になったら飲み屋に移動して一日が終わることになります。わたしには、竜宮城から帰ってきておじいさんになっちゃった浦島太郎の気持ちがよくわかります。もう日常ヤダ。ずっと非日常でいい。部室は、わたしにとって楽しすぎる非日常、抜け出せない魔窟でした。

それでもどうにか学生の本分を忘れずにいられたのは、その魔窟に同じ学部、同じ授業を履修する女友だちがいたからです。「さすがに今日の授業は出とくか」「そうだね」と言い合える人がいた。「ずっと部室にいたい!」と叫びながら、ゾンビみたいに這って授業に出ていました。あの友だちがいなかったら、どうなっていたことか……かずなちゃん、あの時はマジでありがとう!

高確率で別れる「閉じたカップル」

わたしはサークル活動にハマってしまったタイプですが、恋愛にハマるタイプもいて、これはこれで危険です。恋人のアパートに入り浸り、授業に出てこない人もヤバいのですが、授業に出てきても「ふたりの世界」って感じで、周りが見えていないカップルが特にヤバいと感じます。

大変申し訳ないのですが、新入生カップルは、その後、高確率で別れます……。もちろん、ずっと仲が良くて結婚までいくカップルもいるにはいるのですが、それはかなりのレアケース。たいていは、一気に盛り上がり、一気に冷める!

写真はイメージです

そして別れた途端「うわー! 1年から恋愛なんてしてる場合じゃなかった! 2年からでも良かった!」みたいなことを言い出します。ふたりの世界に閉じこもっている間に、周りのみんながどんどん人間関係の輪を広げ、学生として成長しているのを見ると、やっぱり焦ってしまうんですよね。

サークルにせよ、恋愛にせよ、自分だけの心地よさを優先するあまり「閉じた環境」にいると、その後の学生生活がちょっとずつ不自由になっていくように思います。そして、いったん閉じた環境を再び開かせるのは、かなりしんどいことです。

自分の居場所を複数化すべし

だとすれば、わたしたちのやるべきことは、ただひとつ。自分の居場所を複数化しておくこと。これに尽きます。ちょいちょい顔を出せるサークル、挨拶できる人がいる教室……そういう場所の中に「居ても辛くないな」と思える場所があったら、ぜひ大事にしてください。

同時に、図書館や学食など、ひとりでのんびり過ごせる場所の開拓もしてください。「ぼっち」という言葉がありますが、わたしはぼっちもいいものだと思っています。孤独を飼い慣らす技術を身につけておくことは、大学生活だけでなく、今後の人生をサバイブする上で、かなり重要だからです。

それから、居場所の複数化に関しては、もうひとつオススメがあります。それは、学部・学科関係なくおもしろい授業をチェックしておくこと。ほんのヒマつぶしのつもりでいいのでやってみてください。しばらくすると自分の「教養の幅」がびっくりするほど広がっていることに気づくはずですから。

写真はイメージです

サークルの部室に入り浸っていたダメ学生のわたしも、授業の情報収集だけは熱心にしていたんですよね。サークルの先輩に「なんかオススメの授業ありませんか?」と訊いたりして。そして、実際に聴講に行ったりもしました(本来出るべき授業をサボって聴講していたので別に偉くはないのですが)。

他学部の授業、全然知らない学問領域の授業でも気にせず聴講しに行きました。大人数講義はそーっと潜っていましたが、少人数のゼミなどでは先生に許可も取らなきゃいけないし、みんなの前で自己紹介もしないといけない。面倒くさいのですが「よそから見学者がやってきたぞ」というので、新しい人間関係が生まれたりもする。

そんなことをやっているうちに、サークルの部室サイコー! と思っていた自分の視野の狭さが少しずつ改善されていきました。部室で遊ぶのもいいけど、遊ぶように授業を受けるのも楽しいな。そんな気持ちになってきたんですね。

今の学生を見ていても、学び上手な人はあちこちの授業をつまみ食いするように見て歩いていますし、聞き取り調査では「他学部の授業、しかも発表とかグループワークをする授業を履修するようにして、知り合いを増やした」という人がいたりもしました。聴講ではなく履修というパターンももちろんアリです。単位も貰えて知り合いも増える、とても賢いやり方だと思います。

たかが中だるみと侮ることなかれ。「閉じるなキケン!」の精神で、居場所の複数化に取り組み、見聞を広めておくこと。それが、この先の学生生活を快適にしてくれるのです。

文/トミヤマユキコ 写真/shutterstock pixta イラスト/小幡彩貴

文庫版 大学1年生の歩き方

著者:トミヤマ ユキコ
著者:清田 隆之

2023年3月17日発売

770円(税込)

文庫判/232ページ

ISBN:

978-4-08-744505-3

大丈夫、絶対になんとかなる!
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