――「自分は五月病では? ともやもやする」という人が毎年この時期、周りに現れます。五月病とはどういう状態をいうのでしょうか。
田近医師:かつては、新大学生や新社会人が、新しい学校や職場でがんばるものの、環境の変化についていけずにストレスがたまり、5月の大型連休に糸が切れたように心と体の不調に見舞われる状態を指していました。ですが、現在では年齢や職業を問わず、一般に使われています。症状は主に、程度の強弱はありますが、大型連休が終わるころから、学校や会社に行くことを考えると眠れない、食欲がない、不安になる、気分が落ち込む、といった心身の不調です。
ただし、五月病とは正式な病名ではなく、あくまで俗称です。学校や職場、家族、対人トラブルなど明確なストレスがあってこうした症状がある場合は医学的には「適応障害」にあたります(適応障害の診断基準は後述)。また、現実問題が解決しないために症状が改善せず、次第に考えるのも動くのも面倒だ、疲労感が強い、何も楽しめない、などの症状が一日中続き、長引く不眠や食欲低下がみられる場合は「うつ病」と診断されることもあります。
――休みが長いと、その後いろいろと面倒になることは多くの人が経験していると思います。大型連休だけでなく、ブルーマンデーという言葉もあります。それと五月病はどう違うのでしょうか。
田近医師:休み明けに、だるいな、寝ていたいなと思うことは誰にでもありますが、出社の時間になればなんとか出かけられるでしょう。また、たとえ不調があっても趣味の時間は楽しめる、おいしいものを食べたいと思う、睡眠はきちんととれている、といった場合は心配する必要はありません。
五月病(=適応障害)の場合は、先ほどお話しした心身の不調が現れて生活や仕事に支障が出ている状態を指します。