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ブームの火付け役は「鳥貴族」? 串カツ、餃子、鮨だけの“特化型居酒屋”が大人気! コロナ禍を経て激変した飲み会事情。“お店選び”イコール“メニュー選び”になったワケ

集英社オンライン / 2023年5月12日 12時1分

コロナ禍の大打撃から徐々に立ち直り始めた感もある居酒屋業界。だが、ふと店を見回してみると“ひとつの名物料理を打ち出した居酒屋”が増えてきた印象はないだろうか。今主流の“特化型居酒屋”について、フードアナリストの重盛高雄さんに話を聞いた。

「ワタミ」「白木屋」らを抑えて台頭してきた“特化型居酒屋”

日本フードサービス協会が発表する「JF外食産業市場動向調査」の2023年3月度の調査によると、居酒屋の売上は前年同月比でプラス82.6%を記録。酒類の提供制限が解除されるなど、コロナ禍が落ち着きを見せ始めたことで上昇傾向にあるようだ。

そんな居酒屋業界において、近年増えてきたスタイルがあるという。

「『肉汁餃子のダンダダン』や『串カツ田中』『鮨・酒・肴 杉玉』に『銀だこ酒場』といったブランドに代表されるような、“看板として掲げる名物料理”を持ったスタイルの“特化型居酒屋”が流行っているんです。



『白木屋』や『ワタミ』などに代表される、だいたいオールジャンルの料理が揃うファミレスのようなスタイルで人気を博した“総合居酒屋”に代わる存在として、2019年ごろから急速にその店舗数を増やしてきた印象があります。
もちろん特化型居酒屋といっても、メインとなる商品以外のメニューも多少は揃えていますが、そのメニュー数やコンセプトの面で総合居酒屋とははっきり異なる存在です」(フードアナリストの重盛高雄さん)

ズバリ、こうした特化型居酒屋が増えてきたワケとは?

「2010年代後半から、昭和的な飲みニケーション文化が下火になっていったことが理由に挙げられるでしょう。昭和から平成の中頃までは、仕事を終えたサラリーマンたちは上司に連れられ、大人数で飲み屋をはしごするのが定番という風潮がありました。

ですが、平成の末期頃から徐々に仕事とプライベートを分けて考えるというスタンスが浸透していき、飲み会のあり方が変化していきました。そしてこうした流れを加速させ、それまでの飲み会文化のあり方に終止符を打ってしまったのがコロナ禍です。倦厭され始めていた上司との飲み会に、“行かなくていい大義名分”が加わってしまったわけですね」

コロナ禍で一変した飲みニケーション文化が
特化型居酒屋を生んだ

コロナ禍を経て、飲み会文化はどう変化したのだろうか。

「少人数かつ仲間内で行く、行ってもはしご酒はせずに一次会で切り上げるといったスタイルが主流になってきた感があります。そうなると、これまで大人数での飲み会需要をベースに経営スタイルを組んでいた総合居酒屋は、売り上げが落ち込む事態に陥ってしまいました。

低下した需要のなかでもお客を呼び込まなければならない。そこで居酒屋業界が取り始めた戦略が特化型居酒屋への転換でした。これは、少人数での来客が増えていったことに伴って、お客が求める居酒屋像が“頼めばなんでもある店”から、“何か美味いものが食べられる店”に変化してきたことへの対応だったのでしょう。

そしてここがもっとも重要なポイントで、そうなってくるとお店選びの段階がすでに“メニュー選び”と同義になってくるわけです。だからこそ他社との差別化競争も活発になり、“うちはこれがメインなんですよ!”と店名からアピールする特化型居酒屋が増えたのではないでしょうか」

お店選びが“メニュー選び”とは言い得て妙だが、確かにそれなら総合居酒屋が衰退してしまったのも頷ける。また重盛氏は、特化型居酒屋というのは、総合居酒屋より運営がラクなのも増加の一因だと続ける。

「総合居酒屋はメニュー数確保のために高いコストがかかりますが、特化型居酒屋はメニュー数を絞ることで食材や調理器具数などを節約できるのでコストが抑えられ、開店にかかる初期投資費用が断然安く済むのです。さらにその分、食材や調理へのこだわりに充てることができて一石二鳥なのです」

「鳥貴族」の大ブームが
今の特化型居酒屋時代の下地を作った?

納得の理由で拡大を続ける特化型居酒屋だが、近年のブームの下地を作ったのは、あの有名居酒屋チェーンだったそうだ。

「『鳥貴族』です。同ブランドは焼き鳥に特化した居酒屋チェーンで、1986年からこのスタイルで勝負を続け、躍進してきました。最初は総合居酒屋ブームに押される形で後手に回っていましたが、総合居酒屋業界が低価格競争を始めた2010年代ごろからその存在感を増していきます。

総合居酒屋というものはオールマイティさが売りな分、他社と競う際は基本的に低価格競争に陥らざるを得ず、それに伴って商品の品質が下がりがちな傾向がありました。

ですが、焼き鳥に特化していた『鳥貴族』は、低価格でありながら、メニューを焼き鳥に絞ることでコストを品質維持に回せていたので需要を一気に伸ばし、2017年には売上高で総合居酒屋の代名詞的存在だった『ワタミ』を追い抜いたのです。

この『鳥貴族』の成功が非常にいいロールモデルとなり、業界全体が特化型居酒屋にシフトするひとつのきっかけになったのではないでしょうか」

ここまでの話からして、特化型居酒屋は若者層もうまく取り込めているということなのだろうか。

「傾向として“仲間内で飲む”ことが増えたことや、特化型居酒屋が人件費削減のためにタッチパネル式を多く採用するようになったこともあり、若者の需要が増えてきた部分はなきにしもあらずでしょう。

ですが、個人的にはどの世代にも受け入れられるようになってきたと思います。お店のスタイルが“一人飲み”でも大歓迎ということも理由にありますね。新しいスタイルを素早く取り入れるのは若者の特権ですが、出始めの2019年から時間が経ち、徐々に中高年の層にも広まってきた感があります」

レッドオーシャン化に冷凍食品の躍進など
ハードルはいくつかある

現在の特化型居酒屋ブームは今後どうなっていくのかも気になるところだ。

「今後も特化型居酒屋は伸びていくでしょう。コロナ禍の落ち着きと円安によるインバウンド需要で外国人観光客も増えているので、今後はそうした層も取り入れられそうです。彼らは飲み会需要の衰退などとは無縁の存在ですしね。

ただ、いつまでも順風かと言うとそうでもなく、それなりに超えるべきハードルも見えてきた気がします。というのも、特化型居酒屋と近い形態でもあり、コロナ禍の“中食”需要で爆発的に店舗を増やした“からあげ専門店”が、急速に下火になってきたことに通じる問題点が、特化型居酒屋にも出てくる懸念があるからです。

それは、市場が飽和状態になってしまうことで、集客数が分散して業界全体が共倒れになってしまうという可能性です。もちろんどんな料理に特化しているのかで異なる部分もありますが、人気の料理を選んだ特化型居酒屋同士で、客足の分散が起きてしまうケースは十分考えられます。

そして、そもそも減少傾向にある居酒屋需要が、今後もっと低下する可能性も捨てきれません。近年は唐揚げや餃子といった、特化型居酒屋が取り扱っている料理の冷凍食品が非常に進化しています。より低価格かつ安定した品質の冷凍食品がブームになってくると、そもそも外で飲まなくてもいいと考える層が増えるかもしれません。

ですから特化型居酒屋業界は、家では食べられない特別感のあるメニューやクオリティを維持することが生命線になってくるでしょう」

取材・文/TND幽介/A4studio

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