「日本で女性の管理職や政治家が少ないのは、出世志向の女性が少ないから」というフィフィ。多くの日本女性が日本社会に根付く女性の立ち位置を容認し、自ら選択している現状
集英社オンライン / 2023年5月13日 13時1分
Twitter62万人、YouTube40万人のフォロワー数を持つタレントで論客のフィフィさん。エジプト人の両親を持ち、2歳から日本で生活を続ける彼女は、外国人目線で日本社会のおかしな現状をぶった斬り、「ファラオの申し子」とも呼ばれている。後編ではSNSの使い方やジェンダーレストイレの是非などについて語ってもらった。(前後編の後編)
リプライや引用リツイートで誰かを批判は絶対しない
――TwitterやSNSで発信していて、気をつけていることはありますか?
フィフィ(以下同) 昔は論客に対してリプライを送ったり引用リツイートをしたりして、直接いたんですが、それは良くないことだと今は思っています。相手を名指しすることなく、私はこう思うというだけで十分。相手を引き合いに出すと、訴えられたり誤解されたりする恐れがあります。
それは対面でも同じで、「あなたはおかしい」とわざわざ言う必要はなく、「私はこう思う」と言うだけでいい。政治家や政党に対しては直接批判してもいいと思いますが、言葉遣いにはかなり気をつけています。バカとかアホとかいう言葉を使うと、誹謗中傷になってしまうので。
名誉毀損の訴訟、この数年でかなり増えましたよね。こちらが軽い気持ちで「おかしいと思いますよ」とツイートした一言が、相手とってはものすごく重いものに感じられるのかもしれない。やっぱり、自分が100%正しいなんて思わないことが大事ですよね。
――情報をインプットする上で注意しているのは、どんなことですか?
世の中の問題のほとんどにはまったく逆の見地があるので、両方の意見をよく精査することが大事かなと思います。みんな自分の見たい意見ばっかり欲しがるんですよね。共存していくためには、違う意見のことも知っておかないといけない。
私自身がリベラルな考えをする必要はないけれど、議論する相手がどういう考えで言っているかは知っておかないといけない。でないと建設的な議論にはならないので。
完璧なAIタレントに需要はないと思う
――ツイートをする時には、バズるようにとか考えるんですか?
ツイッターって攻撃的な書き方をする人もいれば、自分に酔っているような書き方をする人もいたり、色々なタイプの人がいますよね。でも、私の場合はとにかく思った通りにストレートに書くことを心がけています。
実は昔から文章を書くのが好きで、小学校の時には近所のおばさんに教えてもらって俳句を詠んだこともあります。
「朝露に キラリと光 青い空」
っていう俳句を作ったりとか。あと、日記もよくつけていました。大学受験は小論文があったので、ニュースを読んで論文を書く訓練をしていました。大学卒業後にカラオケの、JOYSOUNDで働いている時は、東京出張のついでに出版社を回って売り込みもしていました。編集者さんの提案してくれた内容が私には合わなかったので結局出さなかったけど、その頃から書くことには興味があったんだと思います。
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芸名の「フィフィ」は子供の頃のあだ名だった(写真一番左がフィフィさん)
――SNSで承認欲求を満たしたいという人も多いようですが、どう思いますか?
人間の趣味嗜好というものは、行き過ぎると戻っていくのだと思います。今は「AIタレント事務所」というものがあって、AIで作成されたキャラクターが、画面上で人間とほぼ同じような動きをするんです。顔もプロポーションも完璧なんですが、ネット上のコメントを見ると、魅力を感じないという意見も多いんです。完璧すぎるものには魅力を感じないと言うんです。
インスタではみんな画像を加工して完璧に美しいキラキラした写真ばかり載せていますが、受け取る側は、実は完璧なんて求めていないのかもしれません。欠点やストーリー性がないと温かみが生まれないし、見ていて面白くない。作られたものはつまらない。
昔、東スポと「スコラ」というグラビア雑誌(2010年廃刊)のお色気ページで記事を書いていたんですが、エロティシズムを考える上で、人間味ってすごく大事なんだなと感じました。
平成に入った頃から、毛穴が修正できるようになっていったんですが、写真家のアラーキー(荒木経惟)さんの写真はたとえ修正していなくても、汗の匂いが漂うような強烈なものがありました。完璧でないところ、グロテスクな部分に人間は惹かれるのかもしれません。
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大学生時代のフィフィさん
無機質な人間には、エロティシズムがなければ人間的魅力も感じられないのかもしれない。となると、AIタレントに需要はあるのかなと思います。今は目新しいので注目されていますが、奥行きやストーリーがないと、人を惹きつけるのは難しいのかも。インスタはみんな同じ顔になってきていて、つまらないですよ。
ジェンダーレストイレは本当に多様性なのか?
――最近のニュース、例えばジェンダーレストイレの議論について思うことは?
もともと日本はジェンダーの認識の面で世界に比べたら遅れていたけれど、それがある意味功を奏した面もあったんです。海外では行き過ぎたジェンダー平等によって無理が出てきたところもあって、少しずつ修正する段階に入っています。にも関わらず、日本は行政が海外の事例からまったく学んでいないところが問題です。
たとえばアメリカでは、スポーツの場面で女性とトランスジェンダーを混同してはいけないというルールも出来つつあります。そういう議論を無視して日本は表面的なことばかりしていて、安易だなと思います。
多様性というのであれば、ジェンダーレストイレは怖いと訴えている女性の声も聞かないと、多様性になりません。
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ジェンダーレストイレは「東急歌舞伎町タワー」などでも物議を醸している ※写真はイメージです
――最近、新刊『まだ本当のことを言わないの? 日本の9大タブー』(幻冬舎)という本を出されましたが、どんな内容ですか?
中国や韓国との外交問題や、技能実習制度、移民解禁、フェミニズム、カルト宗教、学校教育など、日本社会に横たわるさまざまタブーについて書き尽くしました。たとえば、小中学校では子供に対しては「児童手当」が支払われているので、本来であれば、給食費が払えないっていうのはおかしいんです。
だったら、国が一括して給食費を払って無償化すればいいのに、それができないのは利権なんですよね。学校ごとに、どの業者を使うかという。
ほかには、世界経済フォーラムが発表している「ジェンダー・ギャップ指数」の問題点についても書きました。この数字によれば日本は146か国中116位と、先進国では最低レベルですが、日本ではなぜ女性の管理職や政治家が少ないかというと、出世志向の女性が少ないからにほかなりません。日本の多くの女性は、日本社会に根付いている女性の立ち位置を容認し、自ら選択しているのではないでしょうか。
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大学生の息子を持つ母親の一面も持つ
私は日本が大好きだし、日本はもっと素晴らしい国になれると信じているからこそ、おかしいと思ったことははっきり言っています。これからも日本のみなさんに問題提起して、一緒に考えていきたいです。
取材・文/西谷格
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