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岩井千怜が姉・明愛との双子プレーオフを制し、今季初V! ゴルフの兄弟・姉妹プロはなぜ多い? タケ小山は「スポーツとしての特異性」を指摘

集英社オンライン / 2023年5月15日 13時36分

5月14日、RKB×三井松島レディース最終日にて、通算11アンダーで並んだ双子の姉、岩井明愛と、山下美夢有とのプレーオフを制し、岩井千怜が日本ツアー3勝目となる今季初勝利を挙げた。2022年8月に、岩井千怜は史上3人目となるツアー初優勝からの2週連続優勝を達成。姉の明愛も上位に食い込む試合があり、ともに健闘しつづけている。双子姉妹での活躍が話題になっているが、実はきょうだいプロゴルファーは意外に多い。競技特有の背景があるのだろうか? プロゴルファーで解説者のタケ小山氏の考察を再配信する。(初出:2022年9月1日)

「CAT レディース2022」でツアー初勝利から2週連続勝利を挙げた岩井千怜(右)と双子の姉の明愛 写真/Getty Images


ツアールーキーながら大健闘の岩井ツインズ


8月中旬に開催された「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」でツアー初優勝を飾り、翌週の「CAT レディース2022」でツアー史上3人目の初優勝から2週連続優勝を成し遂げた岩井千怜。

彼女は双子の妹で、姉の明愛もプロゴルファーとして活動している。2人は2021年6月にプロテストを合格した93期生で、彼女たちにとって2022年シーズンは、初めてツアーをフルに戦う(前半戦は出場できない試合も多かったが)ツアールーキーシーズンだ。

彼女たちのプロデビュー戦は2021年7月、JLPGAツアー「大東建託・いい部屋ネットレディス」。この試合、千怜は予選落ち、明愛が59位タイと苦戦したが、9月に下部ツアー(ステップアップツアー)の「カストロールレディース」に舞台を移すと一変した。2人そろって出場し、千怜が初優勝、明愛は4位に食い込んだのだ。次戦の「山陽新聞レディースカップ」では、今度は明愛が初優勝、千怜も予選を通過して54位タイに入った。

なんと双子姉妹で2戦連続優勝という離れ業を見せたのだ。

途中から参戦した2020〜2021シーズンでは、2人ともシード権を取ることはできなかったが、これはコロナ禍によって、ほぼ2年間にわたった異例の長いシーズン最後の半年足らずしか(明愛が5試合、千怜が4試合)出ていないので、当然だろう。

2022年シーズン前半の出場権を争うQT(クォリファイングトーナメント)は明愛が70位、千怜が90位。前半戦はフル出場とはいかない順位だが、限られた試合の中でトップ10フィニッシュを明愛が2回、千怜は1回だが2位タイの好成績を残し、リランキングでは明愛が30位、千怜が33位で、後半戦はほぼフル出場できるポジションを確保したのだ。

8月28日現在、2週連続優勝をした千怜は、メルセデス・ランキング17位。明愛も53位と健闘している。

「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」を優勝した千怜(左)を明愛が祝福 写真/共同通信社

兄弟姉妹プロを生むゴルフの特異性とは

ところでプロゴルフ界を見渡してみると、きょうだいでプロというケースはかなりある。

岩井姉妹は双子だが、彼女たち以前にも本山恵子・裕子(1991年プロテスト合格)、池内絵梨藻・真梨藻(2010年合格)、久保啓子・宣子(それぞれ2008年、2010年合格)と3組の双子姉妹がいる。

姉妹優勝を挙げているのは、福嶋晃子・浩子、堀奈津佳・琴音がいる。姉妹優勝はないが、横峯さくらと姉の瑠依もいる。兄弟姉妹では宮里聖志・優作・藍も。8月末の男子ツアー「Sansan KBCオーガスタゴルフトーナメント」で初優勝した河本力は、黄金世代の河本結の弟で、国内4組目のきょうだい優勝となった。

きょうだいでの活躍がよく見られる状況について、プロゴルファーで解説者のタケ小山氏はこう分析した。

「まずゴルフというスポーツの特異性があると思います。他のスポーツとちょっと違うのは、兄弟姉妹が同じ場所でまとめて一緒に練習できる。練習場でもコースでもそうですね。レベルの違いはあっても、性別や年齢に関係なく練習できます。これはとても大きな要因だと思います。

例えば、男の子が野球を始めるとします。まずは少年野球チームに入って、リトルリーグやシニアリーグと進みます。その先は中学、高校の野球部ですよね。要するに年齢で野球をやる場所が変わっちゃう。ところがゴルフはみんながずっと同じフィールドで済んじゃうんですよ」

プロゴルファーで解説者のタケ小山氏

たしかに8月末の「ニトリレディス」で優勝した稲見萌寧は、子供の頃から通う練習場に今でも行っているという。渋野日向子も実家の岡山へ帰ると、ジュニアの頃からラウンドしていたコースに練習しに行くそうだ。

「日本の場合は、ゴルフ場はほとんど郊外にあって子どもひとりじゃ行けないので親が連れて行くわけです。親がゴルフをやらせようと思わない限り、子どもが自分からゴルファーになりたいとは言わないでしょうね。野球みたいに、友達がやってるから自分もやりたいとはなかなかならないでしょう。

実際、今の若手の女子プロたちは、親が練習場に行くときに連れられて、打ってみたら楽しかったのが最初、というケースが多いです。2003年に宮里藍がプロデビューして翌2004年にはブレークするわけですが、そのあたりから少し流れが変わった気がします。お父さんたちが『娘が藍ちゃんみたいになってくれたら……』と思って練習場に連れて行ったり。

そういう中で、『お姉ちゃんが行くなら私も行きたい』と妹が言い出すのは自然ですよね。しかも親の立場でいえば、1人連れて行くのも2人連れて行くのも大差ないわけですし。コーチも共有できますよね。まあ、お金はかかるでしょうが」

「早く始めたほうが上手にはなるが……」

現在の日本女子ツアーが盛り上がりを見せているのは、岩井ツインズなど新しい若きヒロインが続々登場しているからに他ならない。そうしたニューヒロインたちは、みんな幼い頃からゴルフに打ち込んできた。タケ小山氏は“英才教育”の効果を認める一方で、危うさについても警鐘を鳴らす。


「ゴルフはやっぱり早く始めたほうが上手にはなります。それは間違いありません。兄弟姉妹で幼いときから始めれば、一緒にうまくなっていく可能性も高いでしょう。ただね、小さいときからゴルフをやって、プロゴルファーになれる人たちは、それなりにうまくいったわけです。氷山の一角です。ダメになったケースもたくさんあります。

『天才少女現る!』『天才少年登場!』と何度も見聞きしました。でもいつの間にかいなくなっている。メディアもそこはあまり追いかけないところだから、一般にはあまり知られていないですよね。

大学のゴルフ部までやれば、いわゆる社会性みたいなものをある程度は学ぶと思うんです。部活動ですから上下関係もあるし、大学は団体戦を戦う機会が多いので対人関係もあります。ところが小さな頃からゴルフ漬けで、例えば進学などもしないでいると、人と接する機会が極端に少なくなっちゃう可能性がある。やっぱり社会性に欠けた大人になりかねない。そこは心配ですよね」

8月末の「ニトリレディース」で初優勝から3週連続優勝を期待された岩井千怜は、残念ながら予選落ちしてしまったが、明愛はしぶとく13位タイに入った。注目を集める岩井ツインズは、幼いときからゴルフだけではなく、陸上競技やサッカーにも取り組んでいたという。試合で見せるメンタルの強さも相当なものだ。

タケ小山氏も6月末のリランキングの段階で「岩井姉妹は面白いですね。後半戦は頑張ると思いますよ」と熱視線を送っていた。ゴルフというスポーツの持つ特異性ゆえに現れた「ツインスター」のこれからが楽しみだ。

取材・文/志沢 篤

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