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10年間酒に溺れていた芸人・チャンス大城がお酒をやめた日。「千原せいじさんから400人のお客さんの前で、『おまえ、酒やめろ!』と本気で怒られた」

集英社オンライン / 2023年5月19日 19時1分

TV番組『アメトーーク!』の読書芸人(2023年4月20日放送回)でAマッソの加納がリコメンドし、重版出来となった1冊がある。チャンス大城がその半生を綴った『僕の心臓は右にある』(朝日新聞出版)だ。全てを投げ出しそうになった彼を救った千原兄弟との心温まるエピソードをお届けする。

〔 〕内は集英社オンラインの補注です

〔お酒に溺れながら地下芸人として十数年暮らしてきたチャンス大城だったが、千原兄弟との再会でTVへの出演が決まるなど、キャリアが上向きかける。そんな矢先に、またもや大失態を犯してしまう。〕

大失態

故立川談志師匠は「落語とは人間の業の肯定である」と言っておられました。



僕は、路上にへばりつく、業のかたまりのような人間です。自分でもよくわかっています。人様に笑っていいただく芸を持っているわけでもありません。本当は、演者であってはいけない者だと思います。

『すべらない話』も『チハラトーク』も、あのような大舞台に立たせていただいたことに、心の底から感謝の気持ちしかありません。

スタッフさん、千原兄弟さん、松本さん、本当にありがとうございます。魔が差して刑務所に入っていたとしても不思議ではないような僕に気をとめてくださって、心から感謝しています。

にもかかわらず、ちょうどそのころ、僕はまたしても大酒を飲んで失敗をし、千原兄弟さんにメチャクチャ叱られることになりました。

「せじけん」〔千原せいじが経営している飲食店〕でバイトしていた時も、酔っぱらって川に財布を投げ込んでしまったり、真冬に外で寝てしまったりして、千原兄弟さんにはえらい迷惑をかけていました。

『すべらない話』の打ち上げでは、正体を失くし、脈絡もなく松本さんに大喜利を申し込んだり、松本さんが乗り込んだタクシーにまとわりついたり、とにかく失礼なことをたくさんしてしまったようです。

芸人としてあってはならいないような大失態です。心の底から自分が嫌になりました。

そんな僕を、千原兄弟さんは本気で叱ってくれました。「チハラトーク」の舞台の上で、四百人のお客さんが見ている目の前で、「おまえ、酒やめろ!」って、せいじさんに本気で言われたのです。

なんのオチもなく、ガチに叱られました。しかも、トークライブが終了する時間まで、叱られ続けました。400人のお客さんは、シーンと静まり返ったままでした。ああ、人生終わったんやな、と思いました。

お酒をやめた日

せっかく千原兄弟さんがチャンスを作ってくれたのに、僕は完全にしくじってしまったのです。舞台上で真っ白い顔になっているのがわかります。涙も出てきません。

その後しばらくは、何も手に着かず、ただただ、日雇いの土木作業で汗を流し、なんとか日々を生きていました。

もう自分はダメだ。そう思っていました。でも、SNSのメッセージに、テレビで僕の話を観て「自殺するのをやめた」というメッセージが届きました。涙が出ました。

すると、ただただ、頭の中にせいじさんの「おまえ、その執念忘れんなよ」という言葉がぐるぐるぐるぐる回ります。

そしてその時分、ジュニアさんの弟分の俳優で、長い友達の三浦誠己君にファミレスに呼び出され、「とにかくジュニアさんに電話して事務所に入れてもらえ」と言われました。

次の日、意を決して、決意報告とお詫びと感謝を伝えるためにジュニアさんに電話させてもらいました。

すると、「わかったわかった。ええよええよ。それより来月の『にけつッ!!』出てくれや」と言われました。

涙が止まりませんでした。

僕は本当にダメな人間です。心から反省しました。もう一度だけ、がんばってみようと思いました。

でも、売れてお金持ちになりたいとか、テレビに出てモテるようになりたい、という気持ちはすっかり消えていました。

普通に生活している人、生きている人、ひとりひとり、みんな尊敬する。だから自分は、少しでも人の役に立てるような人間になりたい。芸人としてそれができるならサイコーだ。そう思ってがんばってみようと思いました。

大舞台でも、小さな地下ライブでも、次の登板の機会をいただけるとしたら、大リーグボールを投げられるようにしたい。心からそう思いました。

その日から、お酒は一切飲んでいません。

生きているだけですごい

そしてそのあと、僕は不思議な現象に遭遇していました。

ある日の晩、いつものコンビニに行こうと思って家を出て、交差点を左に曲がったとき、明らかに誰かに「見られている」のを感じたのです。

僕を見ていたのは、間違いなく神様でした。もちろん姿は見えませんが、僕ははっきりと神様の実在を感じることができたのです。

神様は僕のことを褒めるのでもなく、責めるのでもなく、ただジッっと見ていました。とっさに、僕はこう言っていました。「神様、今日から吸い殻拾いとコンビニのトイレ掃除をしますから、どうか仕事を増やしてください」

神様はこう返事をくれました。「無償の気持ちでやりなさい」

この日以降、僕は本当に吸い殻拾いを始めたのです。そして、コンビニに入った時は、お店の人に黙ってトイレ掃除をすることにしたのです。

そうしたら、自分の心が少しずつ変わっていくのがわかりました。

悪いことしたらあかん。

人を傷つけたらあかん。

みんな、生きてるだけで誰かの役に立ってるんや。

みんな、生きてるだけですごいんや。


イラスト・文/チャンス大城
チャンス大城氏写真/朝日新聞出版
その他写真/shutterstock

僕の心臓は右にある(朝日新聞出版刊)

チャンス大城

2022/7/20

1,540円(税込)

304ページ

ISBN:

978-4023322592

芸歴30数年の芸人、チャンス大城。本名、大城文章(おおしろ・ふみあき)47歳。長すぎる雌伏のときを超え、今、お茶の間の記憶に残る男としてTV出演急増中。

テクニックに長けたお笑いを魅せる芸人が多いなか、「このひとなんだ!? また見たい!」と思わせる男。彼の常軌を超えた発想と行動はどこから来るのか?「濃ゆい町」尼崎で育ち、東京で生き抜いてきた自らの半生をはじめて語る。

とんでもない人生なのに、読むとなぜか元気になる。笑って泣ける、赤裸々すぎる半生記。

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