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「きっと役に立つから我慢して読む」は無意味。楽しみながら読むためには「ざっと読む」と「ちゃんと読む」を使い分ける

集英社オンライン / 2023年5月19日 12時1分

文章を本格的に「ちゃんと読む」前には、いくつかの"準備運動”が必要だ。そのひとつが文章を「ざっと読む」ことである。奥野宣之さんが上梓した『ちゃんと「読む」ための本 人生がうまくいく231の知的習慣』より、一部を抜粋して紹介する。

新聞を小説のように読む必要はない

まず大切なポイントは、メディアに触れるときは常に二つの「読み方」を使い分けることです。

ひとつ目は「ブラウジング」で、長い文章やページ全体にざっくり目を通すこと。テキストを前から順に読むのではなく、全体を俯瞰(ふかん)して「何についての話なのか」「どういうことが書いてあるのか」といった要旨をおおまかにつかむのが目的です。


たとえば経済誌のオピニオン記事なら「日本の財政についての話で、この人は××のリスクを訴えている」といったこと。過去にたくさん読んだ経験がある分野であれば、どんなキーワードが含まれているかだけで趣旨を把握できるので、ブラウジングは楽になります。

そして、二つ目が「リーディング」です。こちらは国語の授業のように、前から 順に意味を把握しながらきっちりと進んでいく読み方。小説はもちろんノンフィクションでもこちらのやり方がほとんどでしょう。知識や情報を得るために新書やルポルタージュを手に取るようなケースでは、全部リーディングではなく、「ここはべつにいいか」という部分だけブラウジングを使って、駆け足で読み進めたりするケースもあるかもしれません。

本章では、前者の「ブラウジング」の技術を中心に扱います。というのも、本書で語っているような知識や情報のコンテンツはすべて、まずブラウジングするべきものだからです。

最初にざっと目を通して「そのままお別れするもの」と「リーディングして一部を頭に残すべきもの」に分ける。言うまでもなく大量の情報をさばけるのはブラウジングであって、はじめからすべてをすべてリーディングするのは不可能です。

「朝刊の文字数はおよそ20万字。新書の2冊分の情報が詰まっている(東洋経済オンライン『池上彰が解説「今さら聞けない新聞の読み方」』)」と言うように、すべての記事にしっかり目を通していたら生活できません。

「たくさん触れてたくさん捨てる」

では、どうするか。
いったんブラウジングしてから、必要に応じてリーディングすればいいのです。

ブラウジングの基本方針は「たくさん触れてたくさん捨てる」です。つまり、新聞・雑誌・本・電子コンテンツなど、できるだけ大量の情報にアクセスし、ざっと目を通した上でそのほとんどを捨てる。そして「これは値打ちがある」といった上澄みだけにしっかり付き合っていくようにします。

要するに、ここで 紹介する読み方はリーディング前の「ふるい」です。

ここで「わざわざ大量の情報に触れなくてもいいのでは?」と思う人も多いかもしれません。

もちろん「気鋭の学者の新刊」「仕事に役に立つビジネス誌」といった具合に、世間の評価の高いものだけをリーディングする手もあります。最近は「キュレーション」といって、ネットニュースやブログ・SNSの中からよくできたものを紹介してくれるサービスが定番化し、書籍の要約サイトも人気がある。しかし、私は「おまかせ」ではなく、面倒でも自分の頭で判断することを勧めます。

単純に、その方が身につくからです。世間で高評価を得たものや目利きが厳選したものだけを読むのは合理的ですが、結局のところ、自分ではない人のセレクションは「他人事」に過ぎないのです(当たり前のことですけれど)。

自分がキュレーターになる「セルフビルド方式」で
守備範囲を広げていく

また、選び抜かれた「大事な情報」の中には、もちろん自分に合わないものも含まれています。そして、こういうケースはどうしても「役に立つから我慢して読む」といったかたちになりがちです。

ワクワクするはずの「気に入ったものを読む」という行為が、イヤイヤやる「勉強」になってしまう。これでは続きません。

いっぽう、自ら大量の情報に触れて選ぶアプローチは、自分自身がキュレーターです。自分の興味や関心、志向性、好みにバッチリ合うものを選んでじっくり付き合っていくので、楽しみながら頭にいれることができます。

自分よりジャーナリストや書評家の方がカバーしている情報は広いかもしれませんが、習慣としてずっと続けていくことを考えれば「セルフビルド方式」の方がいいのです。

仕事や学業をしながら、さまざまなメディアの情報に目を通すのは大変だと思うかもしれません。しかし、このふるいにかける行為自体、多様な言葉に身をさらすことであり、読み方のトレーニングになるのです。

続けているうちにそれほど負担を感じなくなる。日頃から徒歩や自転車で移動するようにしていれば、勝手に体力がついてくるのと同じです。

最初はできる範囲で大丈夫です。たとえば新聞1紙と雑誌1誌から始めて、力がついてきたら経済紙に月刊誌、専門誌、と広げていく。対象が広がれば広がるほど「選抜組」の魅力はアップするわけで、自然とリーディングにも身が入るようになるでしょう。

また、この大量ブラウジングの途上には、スクラップしたい傑作記事に出会ったり、定期購読する雑誌を探したりといったささやかな楽しみもあります。
義務感でやっても続きません。習慣化するには、心を踊らせながら取り組めるような仕組みが大切です。

ちゃんと「読む」ための本 人生がうまくいく231の知的習慣(PHP研究所)

著者:奥野宣之

2023年4月22日

¥1,760

‎ 352ページ

ISBN:

978-4569854489

毎日5分だけ文章を味わえば、人生が変わる!「本を読む時間がない」「集中できない」と嘆くあなたに朗報!累計70万部超の「情報整理の達人」が教える、書く力と話す力を同時に伸ばす「すごいリーディング」

「タイパ(タイムパフォーマンス)が悪い」からと読書を敬遠する人が増えている。
だが、本に限らず何かをじっくり読むと、知識以上に得られるものは多い。なにより「言葉を扱う能力」が劇的に向上する。それは著者自身が経験し、証明してきたことでもある。本書では、新聞記者、ライター編集者、作家として20年にわたり「文章」を扱ってきた著者が実践し続ける、「スマホと距離を置く方法」や「自分に大切な文章だけを頭に残す方法」などを公開(その数、じつに231!)。本に線を引いたり、新聞を切り抜いたりして印象に刻むなど、一見するとコスパが悪そうな「習慣」ばかりだが、あなたの人生にきっとプラスになる。読む力が落ちていると言われる現代人に向けて、“丁寧に読む面白さと気持ちよさ”を教えてくれる。「近ごろ読書不足だから、ちょっと読んでみようか」といった気持ちで、ぜひ本書を手に取ってほしい。

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